上 下
12 / 33
異世界?

2

しおりを挟む

私達は顔を洗い、朝食を頂く。

そして今。

「…。」

昨日とは違う、今度は黄色いお茶を飲みながら、時雨を待っている。
なお、ゆず茶というらしい。

しばらくすると、ガラガラと扉が空いた。
あの小さな建物に続いている廊下の方だ。

「お待たせ、こっちへ。」


時雨の格好はかわり、形は同じように合わせの襟の白い服に、水色のヒダヒダの…スカート?みたいなものを履いている。
足元は親指だけ独立した靴下を履いていた。

そしてその首元には……あの日、神官していたのと同じ、大きな白い石のついた首飾りをしている。


私達は各々立ち上がり、時雨について行く。


ーー

2回のクランクのある廊下を行くと、また同じ様な引き戸の扉を開けて中に入る。

「うわぉ、」
「あ、匂い平気?」

なんと言えばいいのか分からない、強いて言うなら香の様な匂いが染み付いている。

私達はそのまま案内されて、中に入るとそこは、どこか宗教の色味を強く感じる一室だった。


私達はまた机の前に座る様言われ、そこに腰を据える。


「さて、改めて名乗らせて。」

そういうと、時雨は慣れた手つきでその裾を捌き、私たちに丁寧に一礼した。

「私53代雨宮、雨宮 時雨と申します。」

そして顔をあげる。
その表情は、今まで見たどの表情よりも凛としていて、恐ろしい。


「お名前を頂戴してもよろしいでしょうか。」

時雨はそう言って、私達それぞれに紙とペンを差し出す。
私達は、祖国の名前をここに書いた。

時雨はそれを受け取ると、立ち上がり後ろを向く。
そして、3枚を顔の前に立てて持ち、息を深く吸う。


ふう


すると、紙が光り出した。


「な、何⁉︎」

魔法⁉︎

…しばらくすると時雨は振り返り、その紙を1枚1枚私達に渡す。

「ようこそ、蓮音、太郎、花子。」

その紙にはこの世界の文字で、時雨にもらった名前が書いてあった。


「…太郎。」

太郎がそう呟く。
時雨は太郎の方を向くと、読めるでしょ?と言って人差し指程の大きさの筒を渡していく。

「元の名前はここに封印したから、戻った時3度に分けて飲み込んで。」

筒は真ん中から左右に開けることが出来、私達はそれぞれ名前の札をそこに入れた。


「絶対に無くさないでね、帰れなくなるから。」

時雨の声は、いつもよりワントーン低い。
私達3人はそれぞれ頷いた。

時雨は満足そうに目を瞑ると、宙に人差し指で縁を描く。
すると、私達それぞれの筒に帯が巻かれた。

「必要な時になったら開くよ。それまで肌身離さず持って歩いて。」

そう言うと時雨は、母屋へ戻ろうと言って元いた建物の方へ戻っていった。
しおりを挟む

処理中です...