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異世界?
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しおりを挟む母屋に戻ってきた私たちは、改めて顔を見合わせた。
「説明が遅くなってごめんね、今からするから。」
そう言って時雨は、私達それぞれの前にガラスのグラスを置き、そこに透き通った茶色の液体を注ぐ。
「麦茶だよ。」
一口飲むと、香ばしい香りが流れ込んできた。
喉がツンとする程冷たい。
「さて。」
昨日のかりんとうを真ん中に置く。
時雨は何から話そうかなぁと、斜め上を見る。
「もう何となく分かってるとは思うけれど、ここは君たちが元々いた世界ではない。」
そう言って、お茶を一口飲んだ。
「君たちの世界で、ここをなんで呼ぶのかは分からないけれど、ここは文化も歴史も全く違う。」
「それは…」
わかっている、とお互いに顔を見合わせた。
「それでなんだけど、ここに来る前に、なにか何があったか教えてくれない?」
時雨は私たちの顔をそれぞれ見ると、私に焦点を絞った。
「分かりました、説明します。」
私は、あの日の出来事を少しずつ話し始めた。
ーー
「なるほど、と言うことは君達は“殺された”って事で間違いないのかな。」
花子と太郎も頷く。
「…あとひとつ、君たちの住んでいた所の宗教について教えて。」
時雨は筆記具を引っ張り出すと、ペンの頭をノックして、一層真剣そうな顔で私達を見る。
「マリュース様を中央神として、他に4人の続神、8人の端神のいる宗教です。」
私は、我が国の信じる“マリュース教”の説明を始めた。
ーー
マリュース教には、合わせて13人の神様がいる。
まずは中央神。
神様の中でもトップにあたるマリュース様。
そしてそれに従う続神。
生を司る政の神ハコン様。
闇を司る悪事の神、カゴメ様。
日を司る良事の神、クウジ様。
月を司る願い事の神、ジュシキ様。
最後に、端神が8人
炎を司る夢の神、カスイ様
水を司る戦の神、イヅラ様
草木を司る感情の神、ゲヤン様
石を司る技の神、コウキ様
氷を司る智の神、シマキ様
光を司る遊の神、トウアン様
空を司る時間の神、ウワイ様
地を司る空間の神、モソウ様
それぞれ、全然性格の違うかなり人間的な神様だ。
ーー
「…やっぱりね。」
時雨はそう言って頷いた。
「やっぱり?」
「うん、名前が一部違うけどウチと同じだ。」
この言葉は、ここで祀っている神様が、私たちが信じてる宗教と同じだと言うことを示す。
「となるとこれはまぁ、神の悪戯か…。」
太郎は、呆れたように頬を掻いた。
隣の花子も怪訝そうな顔をしている。
その気持ちもよくよくわかる。
「ただここは月願神、十色神…君たちのいう所のジュシキ様を祀る神社。」
「と言うことは、私達を送ったのはジュシキ様?」
「いや、それは違うと思う。」
時雨は、花子の問いかけを即座に否定した。
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