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異世界?
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しおりを挟む「十色様は人を別の世界に飛ばすような事は、出来ないはずだからね。」
そう言って、時雨はうーんと唸る。
「蓮音が見た夢のことを考えると、逸蘭神の可能性が高いと思う。」
「い、いつらん?」
時雨は、紙に“逸蘭”と書くと、イヅラ様の事だよと付け加えた。
水戦神のイヅラ。
イヅラ様と言えば、とある言い伝えが有名だ。
ーー
あるところに、2つの仲の良い国があった。
2つの国の王様たちは、自分達の子供を結婚させようと決めていた。
しかし、王子が姫の国に訪問した際に、姫が殺されてしまう。
王様は悲しんで、寝込みがちになってしまう。
そんなある日、王様の耳元に少年が現れて、こう言う。
「やっちゃいなよ。」
よって、王様は王子の国を攻撃する。
王子は王様の事を信じて、最低限の防御のみに抑えた。
しかし、今度は王子の耳元にあの少年が現れて、こう言う。
「やっちゃいなよ。」
こうして、王子は姫の国を滅ぼしてしまった。
ーー
「あぁ、やっぱ近い話がそっちにもあるんだね。」
こちらにも、同じような話があるようだ。
「と言うことは、私達をここに連れて来た人って、悪い人…?」
花子が怯えたように言う。
太郎も焦って花子をみると、すぐ時雨に視線を戻した。
「いや、イヅラ様は理由もなくこんな事をする人じゃないよ。」
時雨はケロッとした顔でそう言う。
「…さっきから、お前はヤケに神々について知った口をきくな。」
太郎はそう言って、時雨を睨め付ける。
「まぁ、僕は巫覡だから。」
そう言う問題だろうか…?
ーー
「とりあえず、君達が何故ここに連れてこられたのかを探さないと行けないね。」
「あと、帰る方法もな。」
太郎がそういうと、その通りと時雨は頷いた。
「しばらくはここで、うちの手伝いをしてね。」
「手伝い?」
「そうそう、働かざる物食うべからずだよ。」
そう言って時雨は立ち上がった。
「こう見えて、結構仕事が多くてね。ちゃんと報酬は出すよ。」
「どんなこと?」
「掃除洗濯、家業の手伝い。」
「は、蓮音様にそんな事をさせるなど…!」
「ここでは地位も何もないから、手伝わないなら出て行って。」
時雨はキッチンに立つと、ササっと昼食を作って出してくれた。
「これからはなんでも聞いて、早く覚えて。」
そう言って、私たちに昼食を食べさせている間に、いつの間にか時雨は昨日の作務衣に着替えていた。
「出かけてくるけど、すぐに戻るから。」
そう言って、早足に階段を下っていった。
…なんだろう、この違和感は。
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