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1-1 始まりの呪い
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『アバターネームを決めてください』
「ロウ、っと」
『種族を選んでください』
「ヒューマン」
『性別を選んでください』
「男」
『カスタマイズされますか?』
「登録データを流用」
『……はい。確認できました。次にメインスキルとサブスキルを6個選んでください』
目の前に浮いている画面には二重になった六角形があり、内側の六角形にメインスキルを、外側の六角形は六等分された空欄があり、そこにサブスキルを入れるようになっている。
メインスキルには主に長剣、短剣、斧、弓、杖などの戦闘で武器を使用するためのスキル。
サブスキルには投擲、盾などの戦闘の幅を広げるものや索敵、罠解除などフィールド支援を行ったり、武具や防具を生産するための鍛冶、薬を生産するための錬金などがある。
「魔法を使うにはどうすればいいの?」
『魔法を使用するためには魔法発動体の装備が必要となります。初期では杖が魔法発動体となりますが、ゲームが進めば杖以外の魔法発動体が出現します。また、魔法をある程度使用していけば魔法専用のスキルが手に入ります』
なるほど。魔法は後からでも使えるのか。だったら
「ランダムで」
『……ランダムを選択されますと現在表示されているスキル以外のものが選択される可能性があります。また、それらのスキルはゲームをある程度進めなければ変更することができません。それでもよろしいですか?』
「はい」
『それではゲネシスの世界をご堪能ください』
システム音声が聞こえると同時に世界は白色一色に切り替わる。
「やべ、ちょっと楽しくなってきた」
これから始まるVRMMORPGという世界に期待を募らせ、俺はゲネシスの大地に降り立った。
結果からいうと詰みました。
最近話題のVRMMORPGであるゲネシスを開始して1時間でこのゲームが詰んだことを理解した。理由はランダムで取得したスキルが原因だ。
メインスキル
・亡者の拳(呪) Lv.1
サブスキル
・鍛冶 Lv.1
・火属性魔法 Lv.1
・調教 Lv.1
・射程距離極小(呪)
・炎耐性(小)
・悪運(呪)
ゲネシスの公式HPでキャラ作成の際にランダムを選べば初期に選べるスキル以外のスキルが獲得できる場合があり、神の加護めいた最上級のレアスキルもあれば呪われたスキルも存在する。
俺も何か一つくらいレアスキルが引ければと思い、スキル選択でランダムを宣言した結果、呪われたスキルが3つ。
確かに最初は画面を見て驚いた。鍛冶は生産スキル、火属性魔法は魔法職に必須のスキルの一つで名前のとおり火属性の魔法を使用するためのスキルだ。
火以外には水・土・風・光・闇の計6種類があり、成長させると火と光で聖火属性、水と風で嵐属性などの上位スキルへと発展できる。ただし、魔法を使用するためには魔法発動体が必須であり、ゲーム初期の現状では魔法発動体である短杖・長杖の装備が必須である。
調教は超低確率でモンスターをテイムすることでペット化することができる。
炎耐性(低)は炎属性の被ダメージを抑える。
ここまでのスキルには何も問題はない。
調教のスキルがゲームによっては死にスキルとなることはあるが、その場合は控えスキルと交換すればいいだけだ。
問題は(呪)が付いている亡者の拳・射程距離極小・悪運の3つ。
・悪運(呪)
Lucにマイナス30の補正値
レア 4/10
悪運は呼んで字の如し。運のステータスにマイナス30の補正をかけるスキルだ。ステータス値のLucは1と表示されているため、0以下になることはないようだ。運のステータスはクリティカル率やアイテムドロップ率に関係し、LvUPでのステータス上昇はしないとのこと。
・射程距離極小
遠距離攻撃での射程距離の減少大。(ただし至近距離ではダメージ30%UP)
レア 5/10
射程距離極小は弓や銃、魔法だけでなく近距離装備で遠距離攻撃が可能なスキルのダメージ判定範囲を縮めるスキルだ。そのかわり至近距離で放った場合に限りダメージを30%上昇する効果がある。
そして極めつけは亡者の拳。スキル欄をみると次のように表記された。
・亡者の拳(呪) Lv.1
その拳は亡者の拳。何も掴めず、どこにも届かない。
(武器装備不可。LvUP時にステータスボーナス有り)
レア 8/10
おそらく1分ほど固まっていた。
俺の目は武器装備不可の6文字を理解するのに1分ほどかかった。
次は実際に試すためにインベントリから初期配布アイテムから木刀を取り出す。
出てきた木刀の柄を握ろうとしたら、手を素通りして地面に落ちてしまった。
地面に手を伸ばして木刀を掴む。
「……触れるよな?」
そのまま、木刀を持ち上げて構えようとするとするっと手を通過して地面に落ちてしまう。
何回か拾って落とす、という動作を繰り返しわかったことは、木刀を武器として使おうと認識した瞬間に手から落ちてしまうということ。
ただのアイテムとして持つことやインベントリに出し入れすることは何も問題はなかった。
「どうすればいいんだ?」
俺はこれからのゲネシスについて暗澹とした気持ちでいっぱいになった。なぜなら……
「このゲームって……素手系のスキルあったっけ?」
とりあえず武器が装備できない状態でどれだけ戦えるのかを確かめに、始まりの町であるイニーツの外へ出てみる。
町の門から伸びる街道を5分ほど歩き、途中に見えた森がある方向に向かって歩いてみる。
すぐにノンアクティブのモンスターを発見。俺の胸ほどの高さの青い液体がグネグネと流動している。
その青い液体の上には「ブルースライム Lv.1」の文字が浮かんでいる。
「よし。これなら勝てそうだ」
俺はブルースライムに近づき試しに1発殴ってみる。
ブニョン、とした感触は巨大マシュマロにナタデココを足したような感覚だ。
「おおっ?!」
そのまま手がブルースライムの反対側へ突き抜けたため、体勢を大きく崩してしまい、右肩から胴体まですっぽりとブルースライムに包まれてしまった。
「あちゃー、かっこわりぃ……あづっ?!」
ブルースライムに包まれた箇所が急に熱を持つ。同時に俺の視界にあるライフバーが若干減ったことからブルースライムの攻撃をくらったことを理解した。
俺は慌ててブルースライムから抜け出し、距離をとる。
「こんにゃろー。全然きいてねえじゃねえか」
ブルースライムのライフバーは全く減っておらず、俺のぶっこけパンチはブルースライムに何のダメージも与えていなかった。
今度はボクシングのジャブを意識して手の力を抜き、スナップをきかせたパンチを3発。
ぺち、ぱち、ぺち。
「……」
相変わらずブルースライムのライフバーは1ドットも減らず、逆に3発目のジャブもどきで反撃をくらい俺のライフバーがまたしても若干減る。
「うがーーーー!!!」
殴る、殴る、蹴る、チョップ、パンチ、ジャブ、キックからのラリアート、バックドロップは両手がブルースライムを通過したためただの自爆ブリッジとなってしまった。
それでもブルースライムのライフバーは減らず、俺のライフバーは時折くらう反撃のせいで半分ほどになってしまった。
「はあ、はあ、はあ……これは無理だ」
おそらくブルースライムは打撃耐性をもっているのだろう。俺が素手だといってもステータスのStrの数値はシューマンの初期数値である12という表示があるからいくら素手の攻撃であっても1ダメージも入らない、なんてことはないはずだ。
このままでは最初のモンスター相手に死に戻りをやりかねないため、ブルースライムを倒すのは諦めて他のモンスターを探しに適当に歩く。
始まりの町周辺であるため、フィールドマップは簡単にできており、30分ほどで始まりの町を1周できた。
そしてこの町の周辺はブルースライムしかポップしていないことに気がついた。
少し離れた所にいけば違うモンスターが沸くのだろうが、そこにいくためにはアクティブ化したブルースライムLv3~5を超えていかなければばらない。
Lv.1すら倒すことができない俺にはその壁は若干以上に高く感じた。
「イニーツに戻ろう……」
チュートリアルのようなモンスターが倒せない現状に蓋をして、サブスキルの鍛冶を行うために始まりの町イニーツへとぼとぼと歩いて戻った。
始まりの町イニーツへ戻るとNPCの道具屋で「初心者用鍛冶セット」を500ゼニで購入。
初期の資金が1,000セニのため、半分を鍛冶のために費やすのはモンスターを倒せない俺にとっては勇気のいる買い物だった。
鍛冶を行うため生産ギルドへ向かい初心者用の鍛冶場に入る。使用料金は10ゼニと安く、初心者救済システムに実感が沸くのを感じる。今の俺には1ゼニですら適当に使っていいお金はないのだ。
インベントリの「初心者用鍛冶セット」をタッチすると、いろいろ入ってそうな袋のアイコンが3つのアイコンに分かれる。
現れたのは「金槌」、「金床」、「くず鉄」×100。
合わせてチュートリアル用のNPCが寄ってきて「くず鉄」を10個使用して「くず鉄のインゴット」を生産せよ、というチュートリアルクエストを発令する。
俺はいわれるがままに「くず鉄」×10を備え付けのかまどに放り込み、流れてきた赤熱している金属を打つために「金槌」を持とうとしたときだ。
ゴトン、と金槌が地面を叩く低い音が響く。
「……は?」
地面に落ちた金槌を、今にも震えだしそうな手で拾い、いざくず鉄を叩こうとすると……、ゴトン、とさっきと同じ音が回りに響く。
俺が落ちた金槌を眺めている内に、赤熱していた金屑も冷えてしまい、黒い金属だまりとなってしまった。
俺の視界内に『FALE』の青文字が大きく浮かび、冷えて固まったくず鉄はポリゴンの粒子となって跡形もなく消えてしまった。
「武器だけでなく……生産もできない、だと?」
俺はインベントリから「金槌」を選択する。
・金槌
生産道具
サブ武器 金属鎚 Atk4
「サブ武器だとーーー?!」
そう。金槌は生産にも使用できるがモンスターを倒すためのサブ武器でもあった。
サブ武器とはナイフや金槌など、メイン武器の耐久度が無くなった際にも戦えるように、メインスキルに関係なく、全てのキャラが装備できる武器である。
俺のメインスキルの亡者の拳はサブ武器ですら持つことを許可しない、鬼畜スキルであることが判明しのだ。
こうして回想は終わり、冒頭に戻るである。
「これは詰んだな……ふふっ」
生産すらできないショックから別世界へトリップしていた俺に、周囲のプレイヤーから疑問と好奇心の視線か飛び交いだした。
鍛冶の現場で金槌を振れず、チュートリアルクエストを失敗するプレイヤーがいれば嫌でも目に付くだろう。
ようやく意識が戻ってきた俺は逃げるように生産ギルドを飛び出して、スキルショップのNPCがいる商業区へと走り出した。
「いらっしゃいませ。こちらはスキルショップです。どのようなスキルがご利用ですか?」
「何でもいいからメインスキルをください!」
「それではこちらからお選びください」
出てきた画面には長剣スキル、大剣スキル、短剣スキル、槍スキル、斧スキル……とキャラエディット時に選べる初期メインスキルが並ぶ。
火属性魔法スキルがあるので魔法使いとして短杖・長杖スキルをとることも考えたが、3つの呪いスキルのうちの1つである射程距離極小スキルがどれくらい魔法に影響するのかがわからなかったため、残念ではあるが短杖・長杖スキルの取得を諦めた。
俺は長剣スキルを300ゼニで購入。これで残金は190ゼニ。
「それではこちらのスキルを装備されますか?」
「ぜひ!」
「少々お待ちください。……申し訳ございません。こちらのスキルは装備することができません」
「なんで?!」
「(呪)が付与されているスキルは交換することができません。お手数ですが教会で解呪してから、もう一度御越しください」
ペコリ、と頭を下げるNPCが頭を上げる前に俺は呪いの解除のため教会に向かって走り出していた。
「迷える子羊よ、どういたしましたか?」
教会の荘厳な雰囲気にマッチした清楚なシスターがここの主らしい。
綺麗すぎる顔立ちと髪の毛を生え際から隠してる協会用のフードがミステリアスでありながらシスターの魅力を更に引き出している。
「呪われたスキルを解呪してください!」
「わかりました。それでは89,000ゼニをお布施ください」
「……は?」
89,000ゼニ?
始まりの町でそんな壊れた金額を請求されるのか全く理解ができない。
まさかこのシスターはNPCではなく、プレイヤーによりドッキリなのだろうか?
「解呪には該当するスキルのレア度によって金額が変わります。レア度1~5まではレア度×1,000ゼニ。6以上はレア度×10,000ゼニとなります」
俺の(呪)付きのスキルは3つ。
それぞれ、亡者の拳Lv.1 レア8/10、悪運 レア4/10、射程距離極小 レア5/10で解呪金額は80,000ゼニ、4,000ゼニ、5,000ゼニとなり合計89,000ゼニだ。
「どうなさいますか?」
「そんな金額払えるか、コンチクショーーーーーー!」
綺麗な顔でとんでもない金額を請求するシスターさんがいる教会から、泣きながら飛び出した。
「ロウ、っと」
『種族を選んでください』
「ヒューマン」
『性別を選んでください』
「男」
『カスタマイズされますか?』
「登録データを流用」
『……はい。確認できました。次にメインスキルとサブスキルを6個選んでください』
目の前に浮いている画面には二重になった六角形があり、内側の六角形にメインスキルを、外側の六角形は六等分された空欄があり、そこにサブスキルを入れるようになっている。
メインスキルには主に長剣、短剣、斧、弓、杖などの戦闘で武器を使用するためのスキル。
サブスキルには投擲、盾などの戦闘の幅を広げるものや索敵、罠解除などフィールド支援を行ったり、武具や防具を生産するための鍛冶、薬を生産するための錬金などがある。
「魔法を使うにはどうすればいいの?」
『魔法を使用するためには魔法発動体の装備が必要となります。初期では杖が魔法発動体となりますが、ゲームが進めば杖以外の魔法発動体が出現します。また、魔法をある程度使用していけば魔法専用のスキルが手に入ります』
なるほど。魔法は後からでも使えるのか。だったら
「ランダムで」
『……ランダムを選択されますと現在表示されているスキル以外のものが選択される可能性があります。また、それらのスキルはゲームをある程度進めなければ変更することができません。それでもよろしいですか?』
「はい」
『それではゲネシスの世界をご堪能ください』
システム音声が聞こえると同時に世界は白色一色に切り替わる。
「やべ、ちょっと楽しくなってきた」
これから始まるVRMMORPGという世界に期待を募らせ、俺はゲネシスの大地に降り立った。
結果からいうと詰みました。
最近話題のVRMMORPGであるゲネシスを開始して1時間でこのゲームが詰んだことを理解した。理由はランダムで取得したスキルが原因だ。
メインスキル
・亡者の拳(呪) Lv.1
サブスキル
・鍛冶 Lv.1
・火属性魔法 Lv.1
・調教 Lv.1
・射程距離極小(呪)
・炎耐性(小)
・悪運(呪)
ゲネシスの公式HPでキャラ作成の際にランダムを選べば初期に選べるスキル以外のスキルが獲得できる場合があり、神の加護めいた最上級のレアスキルもあれば呪われたスキルも存在する。
俺も何か一つくらいレアスキルが引ければと思い、スキル選択でランダムを宣言した結果、呪われたスキルが3つ。
確かに最初は画面を見て驚いた。鍛冶は生産スキル、火属性魔法は魔法職に必須のスキルの一つで名前のとおり火属性の魔法を使用するためのスキルだ。
火以外には水・土・風・光・闇の計6種類があり、成長させると火と光で聖火属性、水と風で嵐属性などの上位スキルへと発展できる。ただし、魔法を使用するためには魔法発動体が必須であり、ゲーム初期の現状では魔法発動体である短杖・長杖の装備が必須である。
調教は超低確率でモンスターをテイムすることでペット化することができる。
炎耐性(低)は炎属性の被ダメージを抑える。
ここまでのスキルには何も問題はない。
調教のスキルがゲームによっては死にスキルとなることはあるが、その場合は控えスキルと交換すればいいだけだ。
問題は(呪)が付いている亡者の拳・射程距離極小・悪運の3つ。
・悪運(呪)
Lucにマイナス30の補正値
レア 4/10
悪運は呼んで字の如し。運のステータスにマイナス30の補正をかけるスキルだ。ステータス値のLucは1と表示されているため、0以下になることはないようだ。運のステータスはクリティカル率やアイテムドロップ率に関係し、LvUPでのステータス上昇はしないとのこと。
・射程距離極小
遠距離攻撃での射程距離の減少大。(ただし至近距離ではダメージ30%UP)
レア 5/10
射程距離極小は弓や銃、魔法だけでなく近距離装備で遠距離攻撃が可能なスキルのダメージ判定範囲を縮めるスキルだ。そのかわり至近距離で放った場合に限りダメージを30%上昇する効果がある。
そして極めつけは亡者の拳。スキル欄をみると次のように表記された。
・亡者の拳(呪) Lv.1
その拳は亡者の拳。何も掴めず、どこにも届かない。
(武器装備不可。LvUP時にステータスボーナス有り)
レア 8/10
おそらく1分ほど固まっていた。
俺の目は武器装備不可の6文字を理解するのに1分ほどかかった。
次は実際に試すためにインベントリから初期配布アイテムから木刀を取り出す。
出てきた木刀の柄を握ろうとしたら、手を素通りして地面に落ちてしまった。
地面に手を伸ばして木刀を掴む。
「……触れるよな?」
そのまま、木刀を持ち上げて構えようとするとするっと手を通過して地面に落ちてしまう。
何回か拾って落とす、という動作を繰り返しわかったことは、木刀を武器として使おうと認識した瞬間に手から落ちてしまうということ。
ただのアイテムとして持つことやインベントリに出し入れすることは何も問題はなかった。
「どうすればいいんだ?」
俺はこれからのゲネシスについて暗澹とした気持ちでいっぱいになった。なぜなら……
「このゲームって……素手系のスキルあったっけ?」
とりあえず武器が装備できない状態でどれだけ戦えるのかを確かめに、始まりの町であるイニーツの外へ出てみる。
町の門から伸びる街道を5分ほど歩き、途中に見えた森がある方向に向かって歩いてみる。
すぐにノンアクティブのモンスターを発見。俺の胸ほどの高さの青い液体がグネグネと流動している。
その青い液体の上には「ブルースライム Lv.1」の文字が浮かんでいる。
「よし。これなら勝てそうだ」
俺はブルースライムに近づき試しに1発殴ってみる。
ブニョン、とした感触は巨大マシュマロにナタデココを足したような感覚だ。
「おおっ?!」
そのまま手がブルースライムの反対側へ突き抜けたため、体勢を大きく崩してしまい、右肩から胴体まですっぽりとブルースライムに包まれてしまった。
「あちゃー、かっこわりぃ……あづっ?!」
ブルースライムに包まれた箇所が急に熱を持つ。同時に俺の視界にあるライフバーが若干減ったことからブルースライムの攻撃をくらったことを理解した。
俺は慌ててブルースライムから抜け出し、距離をとる。
「こんにゃろー。全然きいてねえじゃねえか」
ブルースライムのライフバーは全く減っておらず、俺のぶっこけパンチはブルースライムに何のダメージも与えていなかった。
今度はボクシングのジャブを意識して手の力を抜き、スナップをきかせたパンチを3発。
ぺち、ぱち、ぺち。
「……」
相変わらずブルースライムのライフバーは1ドットも減らず、逆に3発目のジャブもどきで反撃をくらい俺のライフバーがまたしても若干減る。
「うがーーーー!!!」
殴る、殴る、蹴る、チョップ、パンチ、ジャブ、キックからのラリアート、バックドロップは両手がブルースライムを通過したためただの自爆ブリッジとなってしまった。
それでもブルースライムのライフバーは減らず、俺のライフバーは時折くらう反撃のせいで半分ほどになってしまった。
「はあ、はあ、はあ……これは無理だ」
おそらくブルースライムは打撃耐性をもっているのだろう。俺が素手だといってもステータスのStrの数値はシューマンの初期数値である12という表示があるからいくら素手の攻撃であっても1ダメージも入らない、なんてことはないはずだ。
このままでは最初のモンスター相手に死に戻りをやりかねないため、ブルースライムを倒すのは諦めて他のモンスターを探しに適当に歩く。
始まりの町周辺であるため、フィールドマップは簡単にできており、30分ほどで始まりの町を1周できた。
そしてこの町の周辺はブルースライムしかポップしていないことに気がついた。
少し離れた所にいけば違うモンスターが沸くのだろうが、そこにいくためにはアクティブ化したブルースライムLv3~5を超えていかなければばらない。
Lv.1すら倒すことができない俺にはその壁は若干以上に高く感じた。
「イニーツに戻ろう……」
チュートリアルのようなモンスターが倒せない現状に蓋をして、サブスキルの鍛冶を行うために始まりの町イニーツへとぼとぼと歩いて戻った。
始まりの町イニーツへ戻るとNPCの道具屋で「初心者用鍛冶セット」を500ゼニで購入。
初期の資金が1,000セニのため、半分を鍛冶のために費やすのはモンスターを倒せない俺にとっては勇気のいる買い物だった。
鍛冶を行うため生産ギルドへ向かい初心者用の鍛冶場に入る。使用料金は10ゼニと安く、初心者救済システムに実感が沸くのを感じる。今の俺には1ゼニですら適当に使っていいお金はないのだ。
インベントリの「初心者用鍛冶セット」をタッチすると、いろいろ入ってそうな袋のアイコンが3つのアイコンに分かれる。
現れたのは「金槌」、「金床」、「くず鉄」×100。
合わせてチュートリアル用のNPCが寄ってきて「くず鉄」を10個使用して「くず鉄のインゴット」を生産せよ、というチュートリアルクエストを発令する。
俺はいわれるがままに「くず鉄」×10を備え付けのかまどに放り込み、流れてきた赤熱している金属を打つために「金槌」を持とうとしたときだ。
ゴトン、と金槌が地面を叩く低い音が響く。
「……は?」
地面に落ちた金槌を、今にも震えだしそうな手で拾い、いざくず鉄を叩こうとすると……、ゴトン、とさっきと同じ音が回りに響く。
俺が落ちた金槌を眺めている内に、赤熱していた金屑も冷えてしまい、黒い金属だまりとなってしまった。
俺の視界内に『FALE』の青文字が大きく浮かび、冷えて固まったくず鉄はポリゴンの粒子となって跡形もなく消えてしまった。
「武器だけでなく……生産もできない、だと?」
俺はインベントリから「金槌」を選択する。
・金槌
生産道具
サブ武器 金属鎚 Atk4
「サブ武器だとーーー?!」
そう。金槌は生産にも使用できるがモンスターを倒すためのサブ武器でもあった。
サブ武器とはナイフや金槌など、メイン武器の耐久度が無くなった際にも戦えるように、メインスキルに関係なく、全てのキャラが装備できる武器である。
俺のメインスキルの亡者の拳はサブ武器ですら持つことを許可しない、鬼畜スキルであることが判明しのだ。
こうして回想は終わり、冒頭に戻るである。
「これは詰んだな……ふふっ」
生産すらできないショックから別世界へトリップしていた俺に、周囲のプレイヤーから疑問と好奇心の視線か飛び交いだした。
鍛冶の現場で金槌を振れず、チュートリアルクエストを失敗するプレイヤーがいれば嫌でも目に付くだろう。
ようやく意識が戻ってきた俺は逃げるように生産ギルドを飛び出して、スキルショップのNPCがいる商業区へと走り出した。
「いらっしゃいませ。こちらはスキルショップです。どのようなスキルがご利用ですか?」
「何でもいいからメインスキルをください!」
「それではこちらからお選びください」
出てきた画面には長剣スキル、大剣スキル、短剣スキル、槍スキル、斧スキル……とキャラエディット時に選べる初期メインスキルが並ぶ。
火属性魔法スキルがあるので魔法使いとして短杖・長杖スキルをとることも考えたが、3つの呪いスキルのうちの1つである射程距離極小スキルがどれくらい魔法に影響するのかがわからなかったため、残念ではあるが短杖・長杖スキルの取得を諦めた。
俺は長剣スキルを300ゼニで購入。これで残金は190ゼニ。
「それではこちらのスキルを装備されますか?」
「ぜひ!」
「少々お待ちください。……申し訳ございません。こちらのスキルは装備することができません」
「なんで?!」
「(呪)が付与されているスキルは交換することができません。お手数ですが教会で解呪してから、もう一度御越しください」
ペコリ、と頭を下げるNPCが頭を上げる前に俺は呪いの解除のため教会に向かって走り出していた。
「迷える子羊よ、どういたしましたか?」
教会の荘厳な雰囲気にマッチした清楚なシスターがここの主らしい。
綺麗すぎる顔立ちと髪の毛を生え際から隠してる協会用のフードがミステリアスでありながらシスターの魅力を更に引き出している。
「呪われたスキルを解呪してください!」
「わかりました。それでは89,000ゼニをお布施ください」
「……は?」
89,000ゼニ?
始まりの町でそんな壊れた金額を請求されるのか全く理解ができない。
まさかこのシスターはNPCではなく、プレイヤーによりドッキリなのだろうか?
「解呪には該当するスキルのレア度によって金額が変わります。レア度1~5まではレア度×1,000ゼニ。6以上はレア度×10,000ゼニとなります」
俺の(呪)付きのスキルは3つ。
それぞれ、亡者の拳Lv.1 レア8/10、悪運 レア4/10、射程距離極小 レア5/10で解呪金額は80,000ゼニ、4,000ゼニ、5,000ゼニとなり合計89,000ゼニだ。
「どうなさいますか?」
「そんな金額払えるか、コンチクショーーーーーー!」
綺麗な顔でとんでもない金額を請求するシスターさんがいる教会から、泣きながら飛び出した。
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