余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

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学園編

38.兄弟の隠し事


学園で伝説と呼ばれる双子と、密かに熱い視線を向けられている人気の養護教諭、生徒会の有名な書記。
流石にこれだけの面々が一気に集まれば周囲にも気を遣わせてしまい、僕は半ば急かすように彼らを連れて教室を出た。

ちなみに、みんな『黒き荘厳』はきちんと飲み干したから問題なしである。

と、そんなこんなである程度人通りの少ない場所に移動すると、僕は四人の正面に立ってむんっと腰に手を当て仁王立ちした。


「こら。お静かにしなきゃメッでしょ。まったく、もう」


ただでさえ揃いも揃って影響力のあるキャラの濃い面々なのだから。
頬を膨らませる僕を前にして、四人の反応はそれぞれ異なるものだった。


「すまないフェリ。兄様はただフェリの晴れ舞台を眺めたかっただけなのだが。それにしても愛らしかったぞ。フェリの勇姿は一部始終を水晶に記録して──」

「チビ、あの恰好サマになってたぜ?まぁメニューはかなり狂ってたが」

「ぷんすかフェリアル様きゃわわっ!」

「すんません姫……俺がしっかりシモン様を制御出来ていれば……」


なんだが公爵邸に戻ったみたいだ。
この賑やかでカオスな空気は確かに日常だったはずなのに、今は非日常に感じてしまう。
そのことに、こんな状況だけれど少し寂しくなってしまった。

こほんと咳払いをして切り替え、改めて四人に向き直る。


「むん……反省しているなら、いいの」

「反省してたっすか????」


何やらグリードの真顔ツッコミが入るけれど、そこを気にしたら負けということは既に分かり切っているのでスルーだ。


「ディラン兄様、ガイゼル兄様。さっきも言ったけど、僕は忙しいのです。だから、残念ながら一緒に遊ぶのはむりそうなのです」


両腕でばってんを作ると、二人は軽く拳で胸を押さえながら悶絶しかけていた。
ぐはっと発作を起こさなくなった辺り、どうやらついに病弱な身体を乗り越えたらしい。

やがて二人で顔を見合わせると、何やらこくりと強く頷いて僕に含みのある視線を向ける。
なにごとかね……と思わずビクビクすると、兄様達はまるで尋問でもするかのように僕を取り囲んだ。

傍から見れば完全にカツアゲである。


「なぁおい、チビよ……お前、俺らに隠してることあるよな?」

「むっ!?」

「フェリ。兄様を相手に隠し事は頂けない。兄弟とは全てを曝け出す関係なのに」

「むむっ!?」


な、なんかバレてる!
いや、流石に内容まではバレていないと思うけれど、僕にやましいことがあるという事実がなぜかバレている。

なんでわかったんだ……と固まる僕に、二人は揃って呆れ顔を見せた。


「相変わらず分かりやすすぎるぜ、チビ……さっきはこの短い間に随分成長したと思ったが、やっぱチビはチビだな」

「がーん!」

「この学園に来てからの秘密事であれば、大方例の生徒会長が原因だろう。兄様達に隠そうとする事情であれば……ローズ・シュタイン絡みか」

「ががーん!!」


なんてこった。光の速さで全部見抜かれてしまった。

名探偵フェリアルよりも名探偵をしているディラン兄様を愕然と見上げる。
なんて賢い探偵さんなのか。仕方がないからたった一つの真実を見抜く才能はディラン兄様に譲ってあげようじゃないか。


「シ、シモン……」


けれど侮るなかれ。
僕には常に最高の最終手段が控えているのである。

キラキラ輝く期待の目をシモンに向けると、シモンはニッコリ笑った後、兄様達に向き直って両手をもみもみ胡麻をすり始めた。


「いやぁ、実はそうなんですよね。フェリアル様、シュタイン伯爵の左腕を治そうとしているんです」

「しもーん!!」


こ、このぉ……なんてひどい裏切りなんだ、シモンめ……。

思わず床に膝をついて項垂れると、ふとグリードが憐みの目を僕に向けながらしゃがみこんだ。
僕の背中を優しく撫でながら、優しい声音で語りかけてくる。


「仕方ないですよ姫。シモン様が正しいです。お二人には正直に事情を話しておくべきっす」

「ぐ、ぐぬぬぅ……」


悔しい気持ちを噛み締める僕の頭上では、シモンと兄様達が着々と情報共有を始めていた。
当人は僕なのに……僕抜きで話を進めちゃって、まったく、ふんすふんすである。


「──……つまり、ウォード家の子息が解毒手段を持っていると」


シモンの説明を黙って聞いていたディラン兄様は、やがて組んでいた腕を解くと険しい表情で呟いた。
それに続くように、ガイゼル兄様も決して穏やかとはいえない顔で語る。


「それ、信用出来んのかよ。ウォード家っつーとあの変態野郎の家門だろ?そいつも狂ってんじゃねぇのか」

「なっ!ガイゼル兄様、それはちがいます!」


何やら聞き逃せない一言が聞こえて思わず話に割り込む。
突然立ち上がって前のめりになった僕に驚いたのか、ガイゼル兄様は目を丸くして見下ろしてきた。

負けじと鋭い視線を向けつつ、僕はダメなことを言いそうになっていたガイゼル兄様にきっちりと反論する。


「ブレイドは、とってもいいひとです。偏見、だめです!」

「なんだよ、そうなのか?変態野郎の弟のくせにマトモなのか」

「はい!まとも……いや、うん、まとも……まぁはい……」

「マトモじゃねーのかよ!」


ものすっごく煮え切れない返事をしてしまった。ごめんねブレイド。

だって、だってまともではないよ。その、まともではないよね、実際に……。
目についた生き物を片っ端から捕獲し、瞳を輝かせて血を啜るブレイドを想像する。
うーん、うん……悲しいけれど、自信を持ってまともと断言することは出来ないかな……。


「と、とにかく!ブレイドはいいひとです!だから、ローズのこと助けてくれます!」

「いや不安すぎるぜ」

「フェリは相変わらず色々とガバガバで可愛いな」


ちょっぴり不服な言葉が続いてむっとする。
ぷくぅ……と不貞腐れる僕と、それを慰めるシモンやグリードを、ガイゼル兄様が何やらジッと見下ろす。

やがて何かを思いついた様子で笑うと、ガイゼル兄様は突然ありえない提案を口にした。


「よしわかった。シュタイン探し、俺らも手を貸すぜ!」

「へっ……!?」


想定外のセリフにぎょっと目を見開く。
固まる僕をよそに、ガイゼル兄様だけじゃなくディラン兄様やシモン達までもがそれに続いた。


「この重要な案件をフェリに一任するのは不安すぎるからな」

「シュタインを探せ!ですね!」

「その既視感ある言い方やめてくださいっす」


止めても聞かなさそうな雰囲気にあわあわと眉尻を下げる。
こうして僕の意思には関係なく、ローズの件は兄様達をも巻き込む大きな問題へと発展するのだった……がっくし。
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