余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

文字の大きさ
400 / 423
学園編

39.双子と従兄弟


かくして、クラスのシフトを終えた僕はローズ探しへと向かった。
とはいえそもそもローズが来ているかどうかが分からないので、無駄足をなるべく避けるためにもひとまずローダ達と合流することに。

保健室を見ていなければいけないシモンと見回り担当のグリードとは一旦お別れし、その辺を歩かせていたら騒ぎになる兄様達を連れて生徒会室に急いだ。
ローダの仕事はいまのところないから、きっとまだ生徒会室にいるはずだ。


「失礼します、フェリアルです」


一応ノックをしてから入ると、そこには予想外の人物がいた。


「おやフェリアル、何か忘れ物かい……って、これは珍しい顔ぶれだね」


生徒会室には何やら事務仕事をしていたらしいオーレリア兄様がいて、僕はぱちくりと瞬いた。

てっきり校内を回っているかと思っていたのに、オーレリア兄様は今日も真面目だ。
ローズを日々支える副会長ということもあり、彼はいつも見ている側が心配になるくらいたくさん働いている。


「オーレリア兄様。またお仕事ですか?」

「あぁ、いや、仕事ってほどじゃないよ。少し予算表を確認していただけさ」


相変わらず謙遜気味なオーレリア兄様は「それはそうと……」と僕の背後に目を向けた。
背後にいるのは、言わずもがな兄様達だ。


「ディランさん、ガイゼルさん。お久しぶりですね」

「オーレリアか。そういやお前、副会長だったな」

「フェリに無理な仕事を押し付けていないだろうな」

「いえいえ、そんな。ですがフェリアルの手腕にはいつも助けられていますよ」


しっかりとお互いを紹介しようと思っていたのに、何やら慣れた様子で話を始める三人を呆然と見つめる。

そ、そんな……まさか、三人はとっくにお友達だったの?
僕は入学するまでオーレリア兄様の存在すら知らなかったのに、それならどうして教えてくれなかったんだ。

むすっと不貞腐れた僕にいち早く気付いたのはオーレリア兄様だった。
きょとんと不思議そうに首を傾げて、オーレリア兄様は僕に問いかける。


「……フェリアル?可愛らしく頬を膨らませて、どうしたの?」


可愛くない!と勢いに任せて反論しそうになるのをグッと堪え、ふんっと顔を背ける。
僕が拗ねていることをようやく察した兄様達は、たちまち青ざめてあたふたし始めた。僕が拗ねると面倒なことになると知っているからだろう。


「お、おいチビ。お前が何に拗ねてんのか大体わかるが、違うぞ?別に隠してたわけじゃねぇからな?」

「その通りだフェリ。特に紹介するタイミングがなかったというだけだ。こんないかにも大衆人気の高そうな歳の近い男を近付かせたくなかっただけだ」

「おいアホディラン!馬鹿正直に白状すんじゃねぇ!」


兄様達のことだから、だいたいそんな理由だろうとは思ったけれど……まさか本当にそんな理由だったなんて。

それだけで僕に従兄弟の存在を隠していたのか。
僕が人との関わりを大事に思っていること、知っているはずなのに。
従兄弟というと、その関わりの中でもかなり近くて深い存在だ。

それを隠すなんて、兄様達ったらとってもひどいじゃないか。


「あぁ、そういうことか。フェリアル、あまりお兄様達を怒らないであげて。タイミングがなかったというのは事実だから」

「オーレリア兄様……でも……」

「本当だよ。お二人と実際に話す機会が増えたのも、フェリアルが……不在の間だったから」


少し躊躇してから語ったオーレリア兄様にピクッと肩を揺らす。
僕が不在の間……それは言うまでもなく、僕が行方不明とされていた二年間のことだろう。

そういうことなら、確かにオーレリア兄様の言う通り怒ることもないか。
学園に入学する前は、ただでさえ勉強やら、空白の二年を埋めるための行動で忙しかったし……。

不器用だけれど、きっとこれも兄様達なりの配慮でもあったのだろう。


「ごめんなさい、ディラン兄様、ガイゼル兄様。そういうことなら、いいの。そうですよね、不純な動機なんて、あるわけないものね」

「…………当然だ」

「チビ、悪いがこの話はこの辺で終わらせよう。ディランがすっげぇ動揺してっから」


何やらびっくりするほど目が揺れているディラン兄様を不思議に思いつつ、ガイゼル兄様の言う通り話を進めることに。

そうだ、そういえば僕には大事な用件があるんだった。


「あの、僕、ローダにご用があって来たんです」


改めてオーレリア兄様に用件を伝えると、彼は「ローダンセに?」と首を傾げた。


「ローダンセなら、ついさっき出て行ったよ。難しい顔をしていたけれど……ローダンセに限って何か悩みでもあるのかな」


そう言ってオーレリア兄様は訝し気に腕を組んだ。
その言葉にはっと息を呑む。もしかして、ローズの件に進展でもあったのだろうか。

これは、僕も早くローダを追うべきだろう。
そう考えて踵を返した時、ふと生徒会室にドタドタと大きな足音が近付いてきた。


「──ディラン様!邸から早く戻ってくるようにと伝令が届きましたよ!仕事をほっぽってどこへ行った、とのことです!」


何やら手紙を掲げて駆け込んできたのはグリードだった。
その言葉にぎょっとして振り返る。僕の視線から逃れるように顔を背けたディラン兄様の横で、呆れ顔のガイゼル兄様がため息を吐いた。


「ディラン、お前執務ぶん投げてきたのか?片付けたって言ってなかったか?」

「……終わりそうになかったのでこっそり父上の執務室に置いてきた」

「お前はガキか!!」


ツーンと現実逃避するディラン兄様に苦笑する。
公爵位を継ぐ前で忙しい時期なのに、よく文化祭へ来てくれることになったなと思ったら……そういうことだったのか。

でも、いつもしっかり者のディラン兄様がそんなことをしたのは、行けないと僕が寂しがると分かっていたからだろう。
僕の為だということを僕自身が理解出来るから、これにはお説教をする気持ちにはなれなかった。


「ディラン兄様。僕、久しぶりに兄様とお話できて、うれしかったです。だから、気にしないで、お仕事に戻ってください」

「フェリ……だが、兄様はフェリの兄として、フェリの晴れ舞台を全てこの目に焼き付ける義務が……」

「僕の接客、見てくれたでしょ?それで十分です。僕、本当にうれしかった」


だから心配しないで。そう言うと、ディラン兄様はしょんぼり肩を落として、けれど切り替えた様子でこくりと頷いた。


「わかった。今日のところは戻るが、休暇が出来れば必ず会いに来る」


僕とディラン兄様がお別れの挨拶を交わす横で、その様子を見ていたガイゼル兄様はドヤ顔を浮かべた。


「残念だったなディラン、まぁチビの活躍は俺が全部見ていくから落ち込むなって。帰ったら思い出話してやるよ」

「あ、ガイゼル様にも騎士団から召集令が来てるっす」

「ンだと!?」


つい数秒前までどどやぁと満足気に笑っていたガイゼル兄様を、ディラン兄様が無表情でズササーッと引き摺っていく。

「また会おう、フェリ」と微笑むディラン兄様に僕も手を振って、生徒会室の手前で二人を見送った。



「…………フェリアルのお兄様達は、本当に賑やかだね」



兄様達が居なくなると途端に静寂に包まれる生徒会室に、オーレリア兄様の苦笑交じりの呟きが零れた。
感想 1,723

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? 表紙は自作です(笑) もっちもっちとセゥスです!(笑)

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。