余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

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学園編

61.変わること


アランはそもそも生徒会に入ることすら渋っていたし、会長なんてもってのほかだったのにどうして。

あからさまにびっくり仰天する僕を見て呆れ顔を浮かべたアランだけれど、ふと照れくさそうに頬を染めて小さく呟いた。


「……まぁ、僕もそろそろ成長しようと思ってね。フェリアルやアディみたいに」


僕やアディくんみたいに?
きょとんと首を傾げると、アランは「少しだけどアディから聞いたよ」と、僕が今朝アディくんから受けた相談のことを口にした。

アディくん、あのことをアランにも話したのか。
それじゃあアランは、アディくんが素敵な夢を抱いていることを知って……なるほど、そういう意味の成長か。


「で、でもアラン、苦手なことは、むりしなくても」


心配でそわそわと身体を揺らす。
生徒会に入る時、アランは本当に迷っていた。僕がいるからと一緒に入ってくれたけれど、それは苦渋の決断だったはずだ。

アランは僕の不安を悟ると、ふと複雑そうに微笑んだ。


「あぁ……まぁ、最初はそりゃ渋ってたよ。兄上と比べられるのが目に見えていたからね」


力無く呟くアランに息を呑む。

やっぱり、アランが一番悩んでいたのはレオのことか。
確かにそれについては否定できない。きっと会長になれば、アランは嫌でもレオとの比較を受ける時が来るだろう。

レオが悪いわけじゃない。もちろん、アランだって優秀だし上に立つ人間として相応しい。
でも、レオはあまりに優秀過ぎた。とっくに学園を卒業した今もなお、歴代最高と呼ばれる伝説の生徒会長として名を馳せるくらいだ。

そんな中、アランは三年で会長職に就くことを決意した。
そこにはどれほどの覚悟が潜んでいるのか、僕なんかにはまるで計り知れない。


「兄上と比較されたくないから逃げ続ける、なんて。それこそ笑い者だって気付いたんだ」


僕の正面に立つと、アランは僕の手をとって軽やかに笑う。
そこに後悔は滲んでいなかった。


「兄上と比較したメリットもデメリットも必要ない。僕は僕だ。僕の好きなように、やりたいようにやるよ」


アランの肩越しに、ローダがほんの微かに笑ったのが見えた。
オーレリア兄様もうんうんと頷いて微笑んでいる。そんな二人の様子が滲んで見えてきた頃、僕は自分が涙ぐんでいることに気が付いた。

ぶわっと目頭が熱くなって、僕はアランに握られた手をするっと抜いて、代わりにアランをぎゅうっと抱き締めた。


「わっ……!」

「うんうんっ!アランえらいっ!とっても!すてきだよっ!」


この感動をどう伝えればいいか分からなくて、とにかくアランの背中や頭を撫で回しながら「偉い!」と繰り返した。

ちょっぴり上から目線な言い方かもしれないけれど、褒めるといったらこの言葉しか浮かばないから。
アランの成長を目の当たりにして、僕はもう溢れる涙を止められない。

しばらくぱちくりと固まっていたアランは、やがて小さく吹き出して笑った。


「ふはっ!そんな、別に泣くことじゃないでしょ」

「なぐよぉっ!アランえらすぎるよぉっ!」

「あーもうわかった、わかった。フェリアルってほんと涙脆いよね」


ぐすん、ぐすんと号泣する僕を離すと、アランはハンカチで目元を優しく拭ってくれた。
お手を煩わせて申し訳ない……と落ち着きつつ、ハンカチを受け取ってびしょ濡れのほっぺを自分の手で拭う。

アランは僕の頭をよしよしと撫でながら、何やらすっと目を細めて微笑んだ。


「全部、フェリアルのおかげだよ」

「……へ?ぼくのおかげ?」


って、なんのこと?
僕何かしたっけ?と首を傾げると、アランは仕方なさそうに笑った。


「なんかさ、どう言えばいいか分からないけど、フェリアルを見てると不思議と思うんだよね。あー僕も頑張らなきゃなー、みたいな?」

「えぇ?」


なぁにそれ、と眉尻を下げる。
よく分からないけれど、僕はただ生きているだけで何か周りに影響を与えられるらしい。いつの間にそんな特殊能力が……。

困惑顔の僕をよそに、何やらオーレリア兄様やローダまでこくこくと頷き始めた。


「それ分かるよ。フェリアルの生き方っていつも真っ直ぐだからかな?見ているだけで元気づけられるよね」

「……確かに、常にちょこまかしていて癒される」


ローダのそれは褒めているのだろうか……。
少し不服な気持ちになりつつも、けれど良いことを言われているというのは分かるから悪い気はしない。

とりあえずえっへんと胸を張ってみる。
なんだか分からないけれど、僕を見れば頑張れるのなら、僕はいつだってアランや皆の周りをちょこまかしようじゃないか。ふふん。


「まぁ、とにかくそういうわけだから。来年は僕が生徒会長だから、フェリアルもまた生徒会やってくれるよね?」

「うん?うん!もちろん!」


アランを支えるためなら喜んで生徒会を続けるに決まっている。

あ……でも、そうなるとローダは来年どうなるんだろう。
ふと疑問に思って尋ねると、その問いにはオーレリア兄様が応えてくれた。


「あぁ、ローダンセは来年の生徒会には入らないよ。推薦を受けても断るつもりらしい」

「え!ローダ、そうなの?」

「あぁ。そろそろ飽きてきた頃だったからちょうどよかった」


飽きたからやらないのか……ま、まぁローダらしくて何よりだ。

来年はオーレリア兄様も卒業して、ローダも生徒会を抜ける。
グリードは年齢的に色々と謎だけれど、一応三年だから卒業ということになるのだろう。
となると残るのはアランと僕と、たぶんアディくんも一緒だからこの三人だけか。

新しい人たちも入って、また新制生徒会が発足するんだろうな。
そう思うと、なんだか妙な気持ちになった。


「……そっか。来年は、いっぱい変わるね」


ぽつりとした呟きが耳に届いたのはアランだけだった。
アランは僕を見下ろすと、何やら困ったように微笑んでまた頭を撫でてきた。

なんだろう。僕、何かおかしな表情でも浮かべていたかな。


「そうだね。これからも、生きていれば色んなことが変わるよ」


アランの言葉にぱちくりと瞬く。不思議な感覚がまた増した。



「なんだか、人生みたいだね」

「ははっ!そうだね、人生だからね」



おかしそうに笑うアランを見て、僕もなんだかおかしくなって笑った。

そっか。これは人生だ。
時間は流れるし、物語みたいに途中でぷつんと途絶えるわけじゃない。
これからも色んなことが変わって、終わって、また始まる。それが普通なんだ。

ふと心の奥底に、なにかモヤみたいなものが生まれた気がした。

僕は胸をきゅっと手で押さえて、奇妙な感覚に首を傾げることしか出来なかった。
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