余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

文字の大きさ
137 / 423
【聖者の薔薇園-プロローグ】

181.魅了の研究成果

しおりを挟む
 
 場所は変わって、孤児院の応接室。
 早速計画について語り合おうかと思いソファに座ると、トラードは初めに「そういえば」とハッとしたように声を上げた。


「ローズの件の前に…一つ報告したい事があったんだよ。来たついでにこれ貰ってくれ」

「……これは…魅了についての研究資料、ですか?」


 差し出された書類をシモンが受け取る。ぺらっと開いて見せてくれるけれど、正直書いている内容は難しくてよく分からなかった。なるほど、だからトラードは僕じゃなくシモンに手渡したのか。

 ペラペラと捲って瞬時に理解するシモン。はわわ…と思いながら、僕も神妙な面持ちで頷きながら文字の羅列を目で追った。理解しているとは言っていない。
 資料を読み進める僕達に視線を向け、トラードが得意げに頷いた。


「うん。魔塔主の爺さんと生意気な魔術師…ルドルフとか言ったか?アイツらと情報共有して、魅了の研究進めたんだよね。そしたら超ラッキーな新事実発見しちゃったから、報告しないとーって思ってさ」


 超ラッキーな新事実…?きょとんとする僕の傍らで、資料をしっかり読み進めていたシモンがふと驚いた様子で「これって…」と呟いた。


「魅了の効果は自動的に解呪する傾向にある…?」


 なぬ!と資料を覗き込む。ふむふむなるへそ、読んでもさっぱりわからないでござる…。
 崩れかけていた僕の神妙な面持ちを嘘と見抜いたのか、シモンが僕でもわかるようにゆっくり丁寧に説明してくれた。

 どうやら魔塔とローズ達の協力で、孤児院の子供たちが研究のために観察対象になっていたらしく。何も手を加えることなく一定の期間観察した結果、魅了の効果が徐々に薄れていることが発覚したらしい。
 確かに、すれ違った子供たちの会話に聖者の名前は一切出てこなかった。マーテルを崇拝するような言葉も全くなかったから、彼らが魅了をかけられていたこと自体忘れていたくらいだ。

 でも一体どうして。トラードは資料の内容を補足するように説明を再開した。


「聖者が意図的に解呪してんのかそうじゃないのか。確信は無いが、たぶん後者だ。解呪したと言うより、力自体が弱まって解呪されざるを得なくなったって感じがするな」

「マーテルの力が弱まっている…?ですが、マーテルはその弱まった力を回復する為に今眠りについているんですよね?」


 シモンの疑問は尤もだ。マーテルが神力回復の為に眠っているのだから、魅了は弱まるどころか更に強固になりそうなものだけれど…どうして今、魅了が弱まり始めているのだろう。
 はてと瞬くと、トラードはニッと勝気に微笑んで答えた。


「こっち側についてる神サマが頑張ってくれてるみたいよ?無防備に寝呆けてるマーテルから、元々自分のだった神力をこれ幸いと奪い返してるんだと」

「ほわぁ…」

「あのぐーたら神、本当やる時はやるタイプなんですね…」


 リベラ様。会う度ぐーたらが目立つけれど、元最強の神様はやっぱりやる時はやる偉い子だったらしい。能ある鷹はなんとやら、というやつだろうか。

 なんだか、聖者に関する問題が僕の知らないうちに着々と解決されているような感覚が否めない…。魔塔の人たちに愛し子として期待されているだろうに、現状は本当に何の成果も挙げられていない気がする。
 みんな有能すぎて出番がないなぁふむふむ、なんて思いながらしょんと肩を落とした。

 マーテルが目覚めて聖者が覚醒する頃には、大半の問題がすっきり解決した状態になるのではないだろうか。そうなれば残る問題はマーテルを倒す方法と、僕の魂とマーテルの繋がりについてくらいかな。


「マーテルって奴?天下の帝国が崇拝する女神にしてはすげぇ間抜けだよなー。こっち側の神サマから奪った力と魅了だけで成り上がったガチの無能なんじゃね?」

「まぁそうでしょうねぇ…正直、頭は弱いと思います」

「ぶっちゃけ帝国唯一の汚点ってやつだろ。女神のクソ具合知られたら他国に笑われるだろうな」


 唐突に始まるマーテル悪口大会。
 まぁまぁふたりとも落ち着くのじゃと宥めて、マーテルの内容よりも楽しい会話をしたいなと話を戻した。


「けんきゅーけっか、わかった。大作戦のお話する!」

「あ、そうですね。作戦会議しましょうか。こんな詰まらない話じゃなくて」

「悪いね壮大に話脱線させちゃって」


 二人が研究資料をそそくさとしまう。それに合わせてふふんとソファに座り直し、司会者の如くぱんぱんと手を叩いて議論開始の合図を出した。


「じゃあ…まず誕生日パーティーってどんなことするのか教えてくれる?」

「うむ。お部屋かざりいっぱい。ケーキもぐもぐ。プレゼントわくわく。おめでとぱちぱち」

「パーティー会場を花や風船で飾り付けて、タルトやチョコケーキといった沢山のケーキを共に食し、誕生日プレゼントを主役にプレゼントし、クラッカーを鳴らしておめでとうと声を掛けます。と言っています」

「お前すげぇな」

「フェリアル様語翻訳一級を取得してるので」


 誕生日パーティーの醍醐味と言えば、やっぱり皆でもぐもぐ食べるケーキとプレゼントだろう。それとおめでとぱちぱちも。
 特にプレゼントは気持ちが相手に伝わりやすいからよき。手作りの小物とか、毎日身に着けられるといつでも嬉しい気持ちを味わえるから好きだ。

 ケーキは好みによるけれど、おすすめはチーズケーキだよと伝えた。とってもおいしくておすすめなのだよ。
 トラードは一通り聞くと真剣そうに頷いて、どこからか取り出したメモ帳に会話の全てをかきかきする。適当そうに見えるけれど、こう見えてトラードは意外と真面目だ。特にローズや家族のことになると尚更。


「ケーキは適当に作って、飾り付け?はリアム達に任せるとして…問題はプレゼントだなぁ」


 きょとん。首を傾げて問い掛ける。


「ローズのすきなもの、なにかある?」

「それが分かんねぇんだよ…つーか、アイツに好きとか嫌いとかって概念そもそもあるのかねぇ…って、そんくらいのレベルでさ」


 困った。好きなものが何一つ分からないなんて。せめて趣味とかよく食べる料理とかだけでもと聞いてみたけれど、やっぱり詳しい答えは返ってこなかった。

 ローズは良くも悪くも一定で変化がなくて、現代で言うロボットのような淡白な日々を送っているらしい。
 ご飯は特に注文も無く、出されたものを出されただけ食べる。残すこともおかわりすることもない。
 趣味と言えば暗殺業だけで、休日どこかに行く様子もする様子もないのだと。


「むー…」

「困りましたね…」


 うーんうーん…と数秒続く三人分の唸り声。やがてトラードが顔を上げると「まぁ悩んでても分かるわけじゃないし…」と話を切り出した。


「とりあえず、ローズの好物とかは俺が調べとく。飾り付け?とかはリアム達に任せるとして…問題はプレゼントだな。無断でここ離れたら疑われるし、誤魔化しもアイツには効かねーから」


 ふむ…プレゼント。
 確かにトラードがプレゼントを買うには少し危険かもしれない。
 ローズに察知されないよう計画を進めなければならないから、なるべくトラードの動きを不自然にしてはいけない。
 となると、ここはやっぱり僕の出番だ。


「僕、プレゼントてにいれる」

「おっ、マジか!」

「うむ。まじまじ」


 そもそも僕は、トラードのお手伝いをすべく今日ここに来たのだ。
 出来ることがあるなら何でもする。それがローズを喜ばせるためのことなら尚更。ローズの無表情をばっちり崩して笑顔にさせてみせる。
 ふんすと息巻き、ぱあっと顔を輝かせるトラードにこくこく頷いた。

しおりを挟む
感想 1,721

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。