異世界マフィアの悪役次男に転生したので生き残りに励んでいたら、何故か最強の主人公達に溺愛されてしまった件

上総啓

文字の大きさ
10 / 241
一章

10.いざ敵陣へ!〜ニコニコ腹黒眼鏡の巻〜

 
 こそこそひそひそと三人で秘密の会議を行った数日後。
 ついに訪れた六歳の誕生日パーティー当日。最大限着飾って準備万端!となった俺は、ガウとジャックを背後に連れて最後の確認をしていた。

 ちなみにガウとジャックも、俺の側近として本館へ行くということでビシッとした黒スーツ姿だ。
 普段は無造作に下ろしている金髪を後ろに撫でつけたガウも、肩までの赤髪をくるりとお団子に結わえたジャックも、二人ともとってもカッコいい。

 胸ポケットに手を当てて、用意した“それ”が確かに入っていることを確認する。
 第一の作戦、『兄に恩と媚を売ろう作戦』に使う大切なものだから、忘れていないかしっかり確認してから行かないと。

 堅苦しいジャケットの襟を正してぽすっと胸を叩く。気合を入れるおまじないだ。
 最後にぺちぺちっと両頬を叩いて今度こそ準備万端!てくてくと玄関ロビーへ向かい、そこに並んでいた別館付きの構成員達を見てきょとんと目を丸くした。


「お前たち、いったいなにを……?」


 階段で足を止め、ぱちくりと瞬く。そんな俺を見上げた彼らは、何かを決意したように背筋を張って、突如一斉にバッ……!と頭を下げた。


「──いってらっしゃいませ!!坊ちゃん!!」


 その姿は紛れもなく、原作で読んだマフィアの構成員そのもの。
 玄関ロビーで花道を作るように並び、頭を下げる彼ら。その光景を見下ろすと、本当に自分は巨大なファミリーの人間なのだと嫌でも実感する。

 それと同時に、思い知る。
 彼らの命を握っているのは紛れもなく自分なのだと。俺のヘマ一つで同時に皆の命も吹き飛ぶ。別館付きの構成員ということは、俺に忠誠を誓った部下ということだから。

 ……俺は、これだけの数の命を抱えている。
 前世は平穏平凡で、なおかつ病弱な日本人でしかなかったから、正直この事実と状況はとっても怖い。すぐにでも意識を手放してしまいそうなくらい。
 けれど、それは出来ない。俺の一挙手一投足に何十もの命がかかっているのだ。怖いからと、小心者の本性を表に出すことは出来ない。

 覚悟を決めないと。自分が生き残るためだけじゃない。今まで俺を支えてくれた“ファミリー”達を守るためにも。


「……うん。いってきます」


 お帰りをお待ちしております、と野太い声が続く。
 その言葉に籠った温もりに思わず涙が零れそうになったけれど、必死で耐えた。泣くのは全部終わらせた後だ。
 それまでは、どんな時でも気丈でクールな『ルカ・ベルナルディ』でいなければ。



 * * *



「──お待ちしておりました。ルカ坊ちゃま」


 嘘つけ、と零しそうになった悪態を寸前で堪える。
 ベルナルディ家の敷地内で生まれて六年。初めて訪れた本館は、別館とは非にならないくらい大きなお邸だった。
 もはや城と呼べそうな本館を目の当たりにしてしまうと、ずっと豪邸だと思っていた別館が本館に付属した物置小屋みたいに感じてしまう。
 それでも俺にとって、あの別館が大切な我が家であることに変わりないけれど。


「さぁどうぞ広間へ。当主様達がお待ちです」


 淡々とした口調の男。
 別館のガチムチ達と比べると随分細身だ。きっちりと黒服を着込んだ眼鏡の男は、だが恐らくれっきとした構成員の一人なのだろう。
 曲がりなりにも俺もマフィアの子。武器を隠しているのだろう裾の膨らみくらいには当然気付く。

 にこやかに笑みを貼り付けて俺を誘うものの、眼鏡の奥にある瞳は微塵も笑っていない。
 頭のてっぺんから足の爪先まで。隠すことなく俺を観察しているであろう視線が中々に不愉快だ。
 あんまりにも不快だったものだから、思わずぽつりと呟いてしまった。


「……おいお前、礼儀のなっていない瞳は閉じるか抉るかしろ。不愉快だ」


 アンドレアの俺様クールなセリフは小説で何度も読んだ。アンドレアの罵倒レパートリーも全て記憶している。
 俺のオリジナルだと『ばか』やら『あほ』やらしか出てこないので、この口が達者そうな眼鏡にはアンドレア流罵倒集から抜粋したセリフをお見舞いしてやった。
 精々メンタルをやられて泣きわめけ!と内心ふふんと鼻で笑う。表はしっかり無表情を保っているけれど。

 さぁ泣くか!泣くのか!とわくわく待つこと数秒。
 ぽかんと目を丸くした眼鏡は、やがてむぐっと口元を覆って俯いた。何やら肩がぷるぷると震えている。

 ……え、え。そ、そんなに傷ついた?うそ、ごめんよ……とおろおろ謝罪を口にした直後、眼鏡は突然ぶはっ!と笑い声を吹き出した。
 ……む?笑い声?


「っふ、くくッ……」

「……おい。わらうな。何がおかしい。ばか、あほ」

「ッくは!ばかって、あほって……っ、さっきの罵倒はキレッキレだったのに……!」


 笑いを精一杯堪えてお腹を抱えるニコニコ眼鏡。
 せっかくアンドレア流の俺様セリフが決まったのに、とほっぺぷくーをして怒りを表現するが、それを見た眼鏡はハッと背筋を伸ばすどころか更に爆笑しやがった。
 やがてはーはーと苦しそうに息を整え、やっぱりニコニコッと爽やか笑顔で俺を見下ろす。さっきと唯一違ったのは、俺を値踏みするような不快な視線だ。

 今はあまり不快さは感じない。瞳にはさっきと違い、なんだか愉快気な色や温かな色が微かに宿っている。


「先程は大変失礼致しました。まさか坊ちゃまがこんなにも愛らしいお方だとは思わず。真逆の性格であると予想しておりましたので」


 真逆の性格……それってどんな性格?なんてのはもちろん聞けるわけがない。
 ここは分かってるフリして神妙に頷いておこう。何事も第一印象はクールでいかないとね。

 そんな俺のクールな頷きすらも笑いを堪えて見下ろす眼鏡を軽く睨んで、いい加減中に入れろと無言の圧をかける。
 流石の眼鏡も時間が押していることを気にしたのか、爆笑を潜めてにこやかな笑顔で先を進んだ。

 その道中、眼鏡はちらりと振り返って俺の背後に視線を向ける。この視線は……ジャックに向けられているのか。


「巷で噂の切り裂きジャックを引き入れたというのは、本当だったのですね」

「……それがどうかしたか」


 ま、まさか、やっぱり本館の連中はジャックを狙っているのか……!?
 あわあわとした焦りは表に出さず、感情を消して無表情で尋ねる。すると眼鏡はニコリと笑って「いえいえ」と首を振った。


「今のところ、坊ちゃまの実力が全く読めないなと驚きまして。大抵は“見る”だけで大体のレベルは分かるのですが……非常に愉快で目が離せませんね」


 弧を描いた瞳が爛々と輝く。
 相手を丸ごと捕食するかのようなマフィアの視線。そろりとその視線から逃げつつ、死角でこっそりジャックの手を握った。
 ジャックは俺のだよな、と暗に確認する為に。

 間を置かずぎゅっと握り返された感触で、そんな不安はすぐに掻き消えたが。
感想 118

あなたにおすすめの小説

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます

ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。 しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。 ——このままじゃ、王太子に処刑される。 前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。 中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。 囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。 ところが動くほど状況は悪化していく。 レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、 カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、 隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。 しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。 周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり—— 自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。 誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う—— ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。

余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。 フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。 前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。 声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。 気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――? 周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。 ※最終的に固定カプ