異世界マフィアの悪役次男に転生したので生き残りに励んでいたら、何故か最強の主人公達に溺愛されてしまった件

上総啓

文字の大きさ
50 / 241
二章

50.誤解だらけの話し合い

 
 ちょっと落ち着こう、と自分で頑張って淹れたホットミルクをこくこくする。
 幸いばたんきゅーすることなく冷静に戻ることが出来たわけだが……この状況では未だに油断は出来ない。
 なぜなら大事な話をするからとかで、ジャックとガウは部屋の外に追い出されてしまったからだ。つまり今この場にいるのは俺とロキとアンドレアの三人だけってこと。

 主人公二人とモブ悪役のガチ対面というわけだ。スン……とクールにホットミルクをこくこくしている俺だが、実は若干死の予感を受け入れ始めている。
 とにもかくにも、まずは状況を理解するところからだな。死を覚悟した俺には怖いものなんてないので、いつもならガクブルして黙り込んでいる場面だが、もう吹っ切って普通に尋ねることにした。


「えぇっと、つまり……俺のわんこは、わんこじゃなくて人だったってこと……?」


 向かいのソファに仲良く並んで座ったロキとアンドレア。
 そのうちニッコリ笑顔のロキが「そうだよー」と頷いて、雪のように真っ白な髪からぴょこんっとケモ耳を生やした。


「わっ!もふもふ!耳!」


 挿絵でも見たことのないロキのケモ耳姿。というか、ロキが獣人だったという情報自体聞いたことがない。
 自慢じゃないが、俺はそれなりに『暗華』のオタクと言える部類に属していたはずだ。それなのに、主人公の一番大きな設定を忘れていたなんて……そんなことが有り得るかな。

 いや、それを言ってしまえばそれ以外も全部同じことだ。
 三年後に出会うはずの二人がなぜか既に出会っているし、仲良しさんだし。不干渉のはずの二大ファミリーが普通に邸内で接触しちゃっているし。
 ここは本当に『暗華』の世界なのか?そんな疑問さえ湧いてしまう。


「……俺が獣人だって知っても、二人とも全然引かないんだね」


 ニコッと笑顔を浮かべていたロキだったけれど、もふもふーっ!と瞳をキラキラさせる俺、そしてツーンと顰め顔のアンドレアを一瞥してふいに呟いた。
 その言葉を聞いてきょとんと首を傾げる。獣人だからってどうして引くことになるんだ……?と緊張でこの世界での獣人の立場をド忘れしてしまった俺は、何も考えることなくあっさりと答えてしまった。


「む?もふもふは正義だぞ?ロキってばなに言ってるんだ?」

「引いてやるほど貴様に興味など無い」


 もふもふ至上主義のため本気で困惑する俺と、割と本気で心底不愉快そうに表情を歪めるアンドレア。
 その答えを聞いたロキは、一瞬虚を突かれたように息を呑んで、そしてすぐに微笑んだ。ニコニコッと貼り付けたような笑みじゃなく、どこか柔らかい微笑みだ。


「そっか。やっぱり君達と友達になって良かったよ」


 ほくほくとした雰囲気になんとなく笑顔を返す。
 返す……けど、あれれ?俺、いつの間にロキとお友達になったんだっけ?

 いや、いいのかな。そっか、俺とロキお友達になってたんだ。そもそも、お友達の作り方なんて病室暮らしだった俺は知らないし、絵本とかで間違った常識を学んでいたのかも。
 そっかそっか。明確な言葉がなくても、片方が思えばお友達なのか。おけおけ、理解。俺とロキはお友達!

 ふむふむっと頷く俺の向かいで、アンドレアは何やら怒りマークを浮かべてロキの胸倉を掴み上げた。あらま、喧嘩するほど仲がいいってやつかね。


「……だから、友人になったつもりは無いと言っているだろう」

「えぇ?でも俺達、もう共犯だよ。お互いの父親騙して新しい形を作ろうって、そう誓ったじゃないか。友達みたいなものでしょ?」

「気持ち悪い。気持ち悪い言い方をするな。気持ち悪い」


 本当に心の底から不快に感じているんだろうなぁ……と流石の俺でも察するくらいの圧をアンドレアが纏っている。
 ロキは原作で『執着的でねちっこく、身を引くということを知らない』と散々な描写をされていただけにかなりグイグイいっている様子だ。

 ……それにしても、“昨日”ってなんだろう?アンドレアも“昨夜”とかなんとか言っていたし……なんて、ふと疑問を抱いた末にハッとした。


「まっ、まさか……!」


 途端に真っ赤に染まった頬を両手で包み込みながら、対極の姿勢で語り合う主人公たちを見遣る。
 もしやアンドレアのツンな態度は照れ隠しなのだろうか?だってだって、昨夜だとか誓っただとか、ロキのこの悪戯っぽい執着具合は原作とまるで同じ。
 そう、まさかのまさか!昨夜、もしかして二人は……!


 ──俺がぐーすかしている横で、あんなことやこんなことを……!?


「はわっ、はわわっ」


 考え出したらもう止まらない。二人を直視することができず、ふいっと顔を背けてアッハーンな妄想をなんとか脳内から追い払うべく頭を振る。


『──っ馬鹿、ルカが傍で眠っているというのに……!』

『──素直になりなよ。本当は君も、期待してるんでしょ……?』


 ぐーすかすぴーする俺を横目に、アンドレアを情熱的にソファへ押し倒すロキ。アンドレアはその獰猛な視線に囚われ、自慢の無表情を赤く染めていく……。
 やがておじゃま虫なモブA(俺)が枠からフェードアウト、月明かりに照らされる二人がアップにズームされ、最後はグッと近付く艶やかな唇へ……──

 そして二人は禁断のふぁーすときっすを──!


「ぴゃあぁぁッッ!」


 ぼんっ!と噴火する勢いで頭から湯気ぷしゅーをしながら、えっちな妄想を無理やり掻き消して勢いよく立ち上がる。
 ずっと無言で俯いていた俺が突如奇声を上げて立ち上がったことに驚いたのか、痴話喧嘩をしていた二人がぎょっとした様子で振り返った。


「ルカ……!?」

「なになに、どうしたの!」


 二人があわわっと駆け寄ってくるのを視界の端で捉える。
 またまたアッハーンな妄想がチラつき始めたのを慌てて振り払い、コホンッと咳払いをして誤魔化し笑いを浮かべた。顔は真っ赤っかだけれど。


「な、なんでもないです、大丈夫ですっ」


 んなアホな……と眉尻を下げる二人。流石にとんでもない奇声を上げたあとに「なんでもない」は無理があったか。
 それなら仕方ない。なんで俺達の関係を知っているんだ?と怪しまれるかもしれないけれど……そこは“察しの良い賢い子”ということでゴリ押そう、とニヤケ顔を浮かべて語った。


「おれっ、ぼく、いいと思いますっ。二人のこと、応援しますっ!とってもとっても、いいと思うっ、うむ!」


 むふふと頬を緩めて言うと、二人は一度きょとんと瞬き、やがてハッと目を見開いた。
 アンドレアは嫌そうに顔を歪め、ロキはその表情を嬉しそうに見遣る。二人の反応を全て確認し、やはりそうだったのか!と瞳を輝かせた。

 やっぱり二人はもうイイ感じなんだ……!


「だってよアンドレア。君の条件だった“弟くんの了承を得る”ってのも達成したし、約束通り計画を実行しても構わないよね?」

「……ルカが良いと言うなら、仕方ない」


 ヒソヒソと話し合う二人を見上げてむっふーっ!とほっぺをにまにま緩める。

 なんでか原作よりも主人公たちの恋愛進展が早いけれど、まぁいっか。
 二人の愛は原作でもすごく強いものだったし、こうして早くに巡り合うのもまた運命。きっとお互いの熱烈な想いが邂逅を速めたのだろう、と原作ファンの心が顔を出してうんうんと頷いてしまった。


「ふっ……せいぜい、末永く爆発しろ」


 ここから先は主人公たちの世界……モブはクールに去るぜ。
 シャキーンッと別れの挨拶を小さく呟き、とことこてくてくっと去り行く俺。

 ドアノブに手を掛けた瞬間、ふいに背後から伸びた手にひょいっと軽々捕獲され、ぷらんぷらーんと四肢を揺らした状態で首を傾げた。



「……。……むっ?」


感想 118

あなたにおすすめの小説

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます

ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。 しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。 ——このままじゃ、王太子に処刑される。 前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。 中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。 囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。 ところが動くほど状況は悪化していく。 レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、 カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、 隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。 しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。 周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり—— 自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。 誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う—— ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。

余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。 フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。 前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。 声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。 気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――? 周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。 ※最終的に固定カプ