異世界マフィアの悪役次男に転生したので生き残りに励んでいたら、何故か最強の主人公達に溺愛されてしまった件

上総啓

文字の大きさ
119 / 241
四章

118.ひみつの下剋上(ジャック視点)

 

「なるほどねぇ……隷従の焼印のせいだったのかぁ」


 奴隷商人の邸に忍び込み、書斎で見つけた手帳を漁る。


「焼印は一度刻めば、半永久的に強制力が効く、と……」


 いかに獣人を、奴隷を、人間の思うが儘に服従させるか。その情報だけが狂ったように記された手帳を全て読み切り、ぐしゃぐしゃに破いて丸めて……奴隷商人の“口の中”に突っ込んだ。

 でっぷりと太り果てた体躯を椅子にして腰掛けていたは良いが、あまりに座り心地が悪すぎるせいで飽きてしまっていたところだ。そろそろこのクズは殺していいだろう。
 無様に四つん這いになり、白目を剥いて紙切れを呑み込む奴隷商人……いつも獣人を家畜の如く惨い扱いで躾けているだろうに、これじゃあどっちが家畜か分からないなぁ。


「ねぇ君、本当に例の虎獣人のことは何も知らないのぉ?」

「しっ……しら、なっ……しらな、からっ!頼む、たすけてくれっ……ギャァッ!」

「あはっ。何それ、ちょっと汚いから黙ってくれるぅ?」


 なぁんだ、本当にコイツはガウのこと何も知らないのかぁ。
 獣人奴隷の所有数は奴隷商人の中でも屈指だと聞いたからわざわざ調べに来てやったのに、まさかガウの件に何も関わっていなかったなんて。使えない。

 使えないゴミに用は無いから、勿論コイツは廃棄処分だ。何だか笑いを誘う命乞いを今更吐き始めているけれど、構わずゴミの贅肉にナイフを突き刺す。
 飛び出した悲鳴が予想以上に汚かったから、その辺に放り投げていた文献や手帳をいくつか拾って口の中に詰め込んだ。よし、喉が塞がってちょっとは静かになったかな。


「あれ?もしかしてもう死んじゃったのぉ?つまんない……今から下剋上ごっこ見物しようと思ったのになぁ……って、あれ?生きてる?」


 生きているのか死んでいるのか分からない奴隷商人。だらしない腹が僅かに上下しているから、一応息はしているみたい。
 確認するの面倒くさいからもっと分かりやすく生きてろよ、と少しイライラしちゃったから軽く腹を足蹴にした。うーん、別にあんまりスッキリしないなぁ。
 まぁでも、これから楽しい処刑が始まるからここらで許しておこう。僕ってば優しいー。

 奴隷商人の足首を鷲掴みにして引き摺り、すぐ近くにある獣人奴隷たちの監禁場所へと向かう。硬い鉄扉を蹴り倒して踏み込むと、中にいた獣人奴隷達がたちまち警戒をあらわに毛を逆立てた。

 熊獣人に狼獣人に犬獣人……うーん見事に肉食系の獣人ばっかり!
 本来なら非力な人間なんて敵にすらならない上位生物たちは、嵌められた隷属の首輪によって強引に抵抗権を奪われていた。


「やぁ獣人くん達!今日は君達にとっても楽しいゲームをしてもらいに来たよぉ!はいコレ、ゲームで使うサンドバッグね」


 引き摺っていた奴隷商人を獣人たちの真ん中に放り投げると、一度は遠目に作られた輪が徐々に豚商人……もう豚でいっか、豚に近付いていった。
 目の前に伏せているのが、毎日殺したいほど憎んでいたであろう奴隷商人なのだから瞳を輝かせるのも無理ないだろう。なにせその商人は今ボロボロの瀕死なのだから尚更。

 とりあえず隷属の首輪を全員分外してやって、涎を垂らす獣人たちに“待て”をしながら語り掛けた。


「おめでとぉ!選ばれた君達にはぁ……今から下剋上ごっこをしてもらいまぁす!」


 ぱちぱちーっ!と拍手をする僕を恐る恐る見据えて、獣人たちがヒソヒソと囁き出す。


「げこく、じょう……?」

「この有様は、あの血塗れの人間がやったのか……?」

「なんにせよ、これはチャンスだぞ……!憎いこの男に仕返しをするチャンスだ……!」


 うんうん。やる気は十分のようで何より。獣化寸前まで興奮し始めた獣人たちを前に満足気に頷く。
 楽しい復讐タイムに入る前に、腹を空かせた獣たちへ最後の演説を済ませることにした。


「いいかな君達。これは慈悲深―い僕のご主人様のお気持ちだ。僕のご主人様は獣人が大好きでねぇ……こういう、獣人を迫害するクズはとぉっても大っ嫌いなんだ」


 僕のセリフに獣人たちがザワザワと騒めき始める。どうやら僕の言葉がいまいち信じられないようだけれど、中には期待や崇拝の眼差しを向けてくる者もいる。
 いくら胡散臭くたって、彼らにとって僕……何より僕をここへ差し向けたことになっているご主人様は、生涯続くと思われた地獄にやってきた一筋の救いの糸なのだ。
 だから、本能的に崇めてしまう。かつてのガウや僕のように。救いのない絶望の中に射しこんだ光には、どんな捻くれ者も悪人も逆らえないのだから。

 熊に狼、良い人材が揃っているじゃないか。
 ご主人様を囲う護衛部隊やら駒やらに十分相応しい奴らだ。


「今から君達は自由!そこの元ご主人様を甚振った後はどこへだって逃げて構わない!今後どんなことをしたって君達の自由だ!でも……」


 豚に牙をかけようとしている待ての効かない獣人を締め上げながら、ヒソッと小声で囁いた。


「くれぐれも忘れないでねぇ?君達を神の如き慈悲深さで救った、至上の天使様が存在するってことを……」


 最後に不敵な笑みを残して踵を返す。チラッと見えた獣人たちの目は、まだ見ぬ『ご主人様』への期待や妄信、忠誠や恋慕に染まりきっていた。
 信者集めも上々。随分大きな寄り道をしてしまったけれど、まぁ収穫を見れば一概に寄り道と言い切ることもできない。有意義な時間だったことに違いはないだろう。
 きっと数日後には、何人かの獣人がベルナルディ家の門を叩くはず……たくさんのもふもふを前にしたご主人様の反応が今から楽しみだ。


「──ま、待ってくれッ!助けてくれぇ!たすけッ……グアァッ!」


 あーあ、意識戻っちゃったんだぁ……あの豚。ずっと気絶していれば楽に死ねたかもしれないのに。
 当然命乞いに耳を貸す時間もないので、背後から聞こえてくるエグい暴行の音をシレッと無視して邸を後にした。
感想 118

あなたにおすすめの小説

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます

ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。 しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。 ——このままじゃ、王太子に処刑される。 前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。 中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。 囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。 ところが動くほど状況は悪化していく。 レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、 カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、 隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。 しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。 周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり—— 自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。 誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う—— ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。

余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。 フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。 前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。 声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。 気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――? 周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。 ※最終的に固定カプ