135 / 241
四章
134.完全復活!ムキムキガウとはれんちロキ
その後も医者にガウを診てもらったが、頭は特に異常ナシとのことだった。ほんとかね。
一連の事件前よりも絶対に性格が変わったぞ、と言い切れるくらいのガウの変化……これが頭の異常じゃなければ一体なんだというのか。やたら距離感が近くなったのも異常ナシってか?
基本的に主従関係ゼッタイ!礼儀ゼッタイ!って感じのガウなのに、隷従契約をしっかり果たした日から何やら積極的になったような気がする。
軽くお出掛けしようとしただけで「外は危険です」とか言って許可を取る前に俺を抱き上げるし、事あるごとにスリスリと頬擦りしてきたりする。
ケモ耳を俺の口元にむんっと差し出して『はむはむしろ』アピールをしてくる日も多々……正直言って困惑だ。ガウ、そういうキャラだったっけ?
ま、まぁそれは別に構わない。俺はどんなガウでも大好きだからな。
そう、ちょっぴり距離が近くなったなぁって感じの今のガウも、俺はすごく好き。だからなんの問題もない。今はそれよりも、もっと大事なことが他にあるのだ。
それがコレ。傍に控えているガウ……そう、“五体満足”のガウだ。
「うぅっ……ロキ、ろき、ありがとなぁ!ほんとのほんとに、ありがとだぞ……!」
今日も今日とて邸に遊びにきていたロキに、この件についての恩を籠めてふかーくお礼を伝える。
鮮やかな花畑に囲まれたガゼボの中、優雅にお茶を楽しんでいたロキがクスクスと微笑んだ。
「ふふ、言った通りきちんとくっついたでしょ?ヴァレンティノは優秀な闇医……医者を抱えているからね。見たところ腕の保存状態も良かったし、くっつけるくらい余裕だったよ」
「そ、そか。そか……ありがと……」
何やら闇なんとか、みたいな発言が聞こえた気がしたけどたぶん気のせいだな、うむ。
麗らかな昼下がり。両腕を後ろに組んで姿勢よく控えるガウを背に、俺はロキに対して何度もペコペコと頭を下げていた。ずばり、ガウの右腕をくっつけてもらったお礼の為に。
俺としては正直、ガウの右腕がちょんぱされてしまった件についてはほぼ諦めを抱いていた。
だがしかし、ふと邸に訪れたロキが右腕を失ったガウを見てぱちくり瞬き、なんてことなさそうに呟いたのだ。
『──あれま、もったいない。実物が残っていれば普通にくっつくのに。腕は捨てちゃったの?』
そのセリフにピコーンと反応した俺が、ロキに『腕ってちょんぱされてもくっつくのか!?』と縋り付いたのが事の発端だ。
俺ってば無意識に前世を基準にして考えてしまっていたらしい。
そういえばここは異世界。魔術もあれば医療技術もとんでもなく進歩している世界だし、考えてみれば切断された腕をきれいさっぱり元通りにする技術くらいはあっても何らおかしくなかった。
くっつける治療の後に掛けた魔術……その影響で当分は右腕を滑らかに動かすことが出来ないみたいだけれど、くっついただけ奇跡と言えるのだから問題ナシだ。
「……それで。ねぇルカちゃん、俺はこれでルカちゃんに大きな恩を売ったわけだ」
「む?そ、それはそうだな……うむ、むぅ……」
よきよきと再び安堵の息をほっと吐いていると、ふいにロキが含みをもった笑みを浮かべて何やら呟いた。
それに嫌な予感を抱きながらもこくりと頷く。まぁ確かに、今回のガウの件についてはものすごく助けられた。もちろん友情に免じてだとか、そういうことを言う気はさらさらない。
けれど……けれど、だ。このニコニコとした満面の笑顔、ロキがこの顔をして真面目なことを言った試しがまるでない。これは碌でもないことを語る直前の笑顔である。
なんて思いながら震えること数秒。やがてロキが口にしたのは、案の定わけわかめなものだった。
「マフィアたるもの、貸し借りのケジメはしっかりつけないとね」
「う、うむ。そのとーりだな」
「それじゃあサインしてもらおうか。はい、婚姻届」
「うむ。さいんさいん……うむぅッ!?」
ロキがどこからか取り出した一枚の紙、それを反射的に受け取った後でナヌーッ!と飛び上がった。
紙にでかでかと書かれた『婚姻届』の文字と、片側の面が既にびっしり埋まった『夫』の欄。
これは一体なんのジョークかね?とぷるぷる震えながら真ん丸おめめを向けると、ロキは不思議そうにきょとんと首を傾げた。きょとんなのはこっちじゃよ。
「うん?どうしたの?俺はもう夫の欄、全部埋めたから安心して。あとはルカちゃんが妻のところを埋めれば成立だよ。あとで一緒に陛下のところへ提出に行こうね」
どうしたの?はこっちのセリフである。
なに俺がおかしいみたいな顔してるんだ。きょとんってするなおバカ。
もう何が何だかわけわかめだが、とにもかくにもこのおかしな状況を打破すべく動かねば。
とりあえずさっき反射的に受け取った婚姻届をパシィンと突き返し、ロキの異常な行動にふんす!と反論することにした。
「こらロキ。なにたくらんでるか知らんが、こういうのはだめだぞ。結婚っていうのは、すきなひととするものなんだぞ。わかったか?」
「うん?うん、そうだね。俺ルカちゃんのこと大好きだから、なんの問題もないね」
「ぐぅっ……!ち、ちがくてだなっ!すきっていうのは、おともだちとかそういうのじゃなくて。た、たとえばだぞ?ちゅ、ちゅーしたいひととか、そういうの……」
「俺はルカちゃんとキスしたいしセックスもしたいよ。はい、なんの問題もないね」
「ぐぐぅぅっ……!!」
何を言うにも一枚上手なロキに撃沈してしまう。
むねん、である。俺がピュアなシャイボーイだってことを知っての策略か?き、きすだの、せせせっ、せっくすだの何だのとわざわざ口にしおって……。
真っ赤な顔でむぅむぅと抗議する俺を蕩けた笑みで撫でるロキ。反省の意思ゼロかい。
俺が「そういうのは軽々しく口にしちゃだめだぞもごもご……」と始めたお説教を華麗にスルーして、ロキがにこやかに語った。
「でもまぁ、流石にまだルカちゃん九歳だからね。婚姻自体はもう可能だけれど、せめて成人するまでは二人の時間を楽しみたいよね。当分は子作りなしでセックスだけしたいね」
「やっ、やめんかっ!は、はれんちだじょっ!えっち!えっちだっ!ロキのえっち!」
ソファに置かれていたクッションを片っ端からロキに向かってぶん投げつつ立ち上がる。
後ろで控えていたガウに「うわぁぁん!」と真っ赤な顔で抱き着くと、すぐに抱き上げられてよしよしと頭やら背中やらを撫でられた。
「がう、がうぅー……ロキがとってもはれんちだじょぉぉ……」
「いつものことです。お気になさらず」
まさに、一難去ってまた一難。
ガウの件が無事に全部いい感じに終わったと思ったら、今度はロキによる異常行動……まったく、いつになったら平穏な日常を送ることができるのか。
ロキがほれほれと押し付けてくる婚姻届から目を逸らしつつ、安心安全なガウの屈強な腕の中に身を委ねた。
あなたにおすすめの小説
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます
ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。
しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。
——このままじゃ、王太子に処刑される。
前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。
中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。
囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。
ところが動くほど状況は悪化していく。
レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、
カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、
隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。
しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。
周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり——
自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。
誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う——
ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。
余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない
上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。
フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。
前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。
声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。
気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――?
周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。
※最終的に固定カプ