異世界マフィアの悪役次男に転生したので生き残りに励んでいたら、何故か最強の主人公達に溺愛されてしまった件

上総啓

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四章

134.完全復活!ムキムキガウとはれんちロキ

 
 その後も医者にガウを診てもらったが、頭は特に異常ナシとのことだった。ほんとかね。
 一連の事件前よりも絶対に性格が変わったぞ、と言い切れるくらいのガウの変化……これが頭の異常じゃなければ一体なんだというのか。やたら距離感が近くなったのも異常ナシってか?
 基本的に主従関係ゼッタイ!礼儀ゼッタイ!って感じのガウなのに、隷従契約をしっかり果たした日から何やら積極的になったような気がする。

 軽くお出掛けしようとしただけで「外は危険です」とか言って許可を取る前に俺を抱き上げるし、事あるごとにスリスリと頬擦りしてきたりする。
 ケモ耳を俺の口元にむんっと差し出して『はむはむしろ』アピールをしてくる日も多々……正直言って困惑だ。ガウ、そういうキャラだったっけ?

 ま、まぁそれは別に構わない。俺はどんなガウでも大好きだからな。
 そう、ちょっぴり距離が近くなったなぁって感じの今のガウも、俺はすごく好き。だからなんの問題もない。今はそれよりも、もっと大事なことが他にあるのだ。

 それがコレ。傍に控えているガウ……そう、“五体満足”のガウだ。


「うぅっ……ロキ、ろき、ありがとなぁ!ほんとのほんとに、ありがとだぞ……!」


 今日も今日とて邸に遊びにきていたロキに、この件についての恩を籠めてふかーくお礼を伝える。
 鮮やかな花畑に囲まれたガゼボの中、優雅にお茶を楽しんでいたロキがクスクスと微笑んだ。


「ふふ、言った通りきちんとくっついたでしょ?ヴァレンティノは優秀な闇医……医者を抱えているからね。見たところ腕の保存状態も良かったし、くっつけるくらい余裕だったよ」

「そ、そか。そか……ありがと……」


 何やら闇なんとか、みたいな発言が聞こえた気がしたけどたぶん気のせいだな、うむ。
 麗らかな昼下がり。両腕を後ろに組んで姿勢よく控えるガウを背に、俺はロキに対して何度もペコペコと頭を下げていた。ずばり、ガウの右腕をくっつけてもらったお礼の為に。

 俺としては正直、ガウの右腕がちょんぱされてしまった件についてはほぼ諦めを抱いていた。
 だがしかし、ふと邸に訪れたロキが右腕を失ったガウを見てぱちくり瞬き、なんてことなさそうに呟いたのだ。


『──あれま、もったいない。実物が残っていれば普通にくっつくのに。腕は捨てちゃったの?』


 そのセリフにピコーンと反応した俺が、ロキに『腕ってちょんぱされてもくっつくのか!?』と縋り付いたのが事の発端だ。

 俺ってば無意識に前世を基準にして考えてしまっていたらしい。
 そういえばここは異世界。魔術もあれば医療技術もとんでもなく進歩している世界だし、考えてみれば切断された腕をきれいさっぱり元通りにする技術くらいはあっても何らおかしくなかった。
 くっつける治療の後に掛けた魔術……その影響で当分は右腕を滑らかに動かすことが出来ないみたいだけれど、くっついただけ奇跡と言えるのだから問題ナシだ。


「……それで。ねぇルカちゃん、俺はこれでルカちゃんに大きな恩を売ったわけだ」

「む?そ、それはそうだな……うむ、むぅ……」


 よきよきと再び安堵の息をほっと吐いていると、ふいにロキが含みをもった笑みを浮かべて何やら呟いた。
 それに嫌な予感を抱きながらもこくりと頷く。まぁ確かに、今回のガウの件についてはものすごく助けられた。もちろん友情に免じてだとか、そういうことを言う気はさらさらない。
 けれど……けれど、だ。このニコニコとした満面の笑顔、ロキがこの顔をして真面目なことを言った試しがまるでない。これは碌でもないことを語る直前の笑顔である。

 なんて思いながら震えること数秒。やがてロキが口にしたのは、案の定わけわかめなものだった。


「マフィアたるもの、貸し借りのケジメはしっかりつけないとね」

「う、うむ。そのとーりだな」

「それじゃあサインしてもらおうか。はい、婚姻届」

「うむ。さいんさいん……うむぅッ!?」


 ロキがどこからか取り出した一枚の紙、それを反射的に受け取った後でナヌーッ!と飛び上がった。

 紙にでかでかと書かれた『婚姻届』の文字と、片側の面が既にびっしり埋まった『夫』の欄。
 これは一体なんのジョークかね?とぷるぷる震えながら真ん丸おめめを向けると、ロキは不思議そうにきょとんと首を傾げた。きょとんなのはこっちじゃよ。


「うん?どうしたの?俺はもう夫の欄、全部埋めたから安心して。あとはルカちゃんが妻のところを埋めれば成立だよ。あとで一緒に陛下のところへ提出に行こうね」


 どうしたの?はこっちのセリフである。
 なに俺がおかしいみたいな顔してるんだ。きょとんってするなおバカ。

 もう何が何だかわけわかめだが、とにもかくにもこのおかしな状況を打破すべく動かねば。
 とりあえずさっき反射的に受け取った婚姻届をパシィンと突き返し、ロキの異常な行動にふんす!と反論することにした。


「こらロキ。なにたくらんでるか知らんが、こういうのはだめだぞ。結婚っていうのは、すきなひととするものなんだぞ。わかったか?」

「うん?うん、そうだね。俺ルカちゃんのこと大好きだから、なんの問題もないね」

「ぐぅっ……!ち、ちがくてだなっ!すきっていうのは、おともだちとかそういうのじゃなくて。た、たとえばだぞ?ちゅ、ちゅーしたいひととか、そういうの……」

「俺はルカちゃんとキスしたいしセックスもしたいよ。はい、なんの問題もないね」

「ぐぐぅぅっ……!!」


 何を言うにも一枚上手なロキに撃沈してしまう。
 むねん、である。俺がピュアなシャイボーイだってことを知っての策略か?き、きすだの、せせせっ、せっくすだの何だのとわざわざ口にしおって……。

 真っ赤な顔でむぅむぅと抗議する俺を蕩けた笑みで撫でるロキ。反省の意思ゼロかい。
 俺が「そういうのは軽々しく口にしちゃだめだぞもごもご……」と始めたお説教を華麗にスルーして、ロキがにこやかに語った。


「でもまぁ、流石にまだルカちゃん九歳だからね。婚姻自体はもう可能だけれど、せめて成人するまでは二人の時間を楽しみたいよね。当分は子作りなしでセックスだけしたいね」

「やっ、やめんかっ!は、はれんちだじょっ!えっち!えっちだっ!ロキのえっち!」


 ソファに置かれていたクッションを片っ端からロキに向かってぶん投げつつ立ち上がる。
 後ろで控えていたガウに「うわぁぁん!」と真っ赤な顔で抱き着くと、すぐに抱き上げられてよしよしと頭やら背中やらを撫でられた。


「がう、がうぅー……ロキがとってもはれんちだじょぉぉ……」

「いつものことです。お気になさらず」


 まさに、一難去ってまた一難。
 ガウの件が無事に全部いい感じに終わったと思ったら、今度はロキによる異常行動……まったく、いつになったら平穏な日常を送ることができるのか。

 ロキがほれほれと押し付けてくる婚姻届から目を逸らしつつ、安心安全なガウの屈強な腕の中に身を委ねた。
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