異世界マフィアの悪役次男に転生したので生き残りに励んでいたら、何故か最強の主人公達に溺愛されてしまった件

上総啓

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五章

150.ロキとお昼寝

 
 結果を言うと、俺はお泊りを回避することができなかった。
 俺がヴァレンティノ邸にいることを知った父やアンドレアが邸に殴り込みに来たものの、ロキはそれすらのらりくらりと躱して俺とのお泊りについての許しをもぎ取ったのだ。
 あんなに激おこしていた二人をどうやって諫めて、尚且つ納得させたのか。到底想像もつかないので聞いてみたが、ロキはニコニコ笑って躱すばかりで教えてくれなかった。

 結局二人はムスッとした顔をしながらも帰っていってしまったし……ついでにガウとジャックも連れていかれてしまったから、俺は完全にヴァレンティノ邸に取り残されてしまったというわけだ。

 そもそも突然お泊りだなんて、邸の人達が困るのではなかろうか?そう思いロキの目を盗んでとことこと邸内を駆け回ってみたが、俺に対して後ろ向きな感情を抱く人は誰一人としていなかった。
 むしろみんな「若を手懐けてくださりありがとうございます!」「若の手綱を握ってくださり感謝致します!」といやに感極まった様子で涙を流すくらいだ。

 まったく……ロキってば普段どんな姿を晒しているのだろう。
 原作を読んでいるから、ロキが実はとんでもない腹黒サイコパスだってことは知っているけれど……俺の前では基本的に優しくて素敵な姿しか見せないから、実際にはあまり想像がつかない。


「ルカちゃん?可愛く唸っちゃってどうしたの?部屋の外まで可愛い唸り声が聞こえていたよ」

「むっ。ロキ、もどったのか。むぅ……うなってなんかないぞ」


 とっても濃い今日の出来事を思い返してうぅむうぅむと唸っていると、ふと扉が開いてロキが部屋に戻ってきた。
 俺のお泊りやら王太子のことやらを報告しにいくとかで、数十分ほど前にリカルド様の執務室へ向かったロキだけれど、どうやらその用事が終わったらしい。

 とことこと近付いてきたロキが、サメさんをぎゅっと抱いた俺をひょいっと抱き上げてソファに腰掛け、そのまま俺をぽすっと膝にのせた。
 背後からぬくぬく抱き締められながら、手持ち無沙汰に足をぷらんぷらーんと揺らす。うぅむ、ちょうど夕方になる頃合いだから動くのも怠いし、かといって何もしないのも退屈だし……いかんな、一番暇な時間帯じゃないか。

 暇なせいか眠気がむんっと襲ってくる。ちょっぴりおねむじゃのぅ……と目元を擦っていると、ふいにロキが俺の頭をよしよししながら声を掛けてきた。
 む、頭なでなでは眠くなるからやめるんだじょ……。


「何か悩み事でもあった?可愛い眉間に可愛い皺まで作っちゃって、さっきはすごく唸っていたし」

「むーん……べつに、おなやみってほどじゃないぞ……」


 ほっぺをふくふくつんつんと摘ままれながら返答すると、ロキは柔く微笑んで囁いた。


「どんな些細な悩みでも、ルカちゃんのお話なら全部知りたいし、聞きたいな。聞いてもいい?」


 優しい声音なのに、どうしてだろう……圧迫するみたいな怖い声よりもずっと“逆らえない”と思わせる何かを感じる。
 ぷるぷる震えながらもこくりと頷き、ロキのおっきな手に頬擦りしながら答えた。


「あのな、おれ、ロキとかお兄さまとかとちがって、ちんちくりんなのに……みんな、おれのこと歓迎?してるみたいなんだ。なんでだろなーって、おもったんだぞ」

「うん?ルカちゃんはちんちくりんじゃないよ、とっても可愛い天使だよ?一体誰がルカちゃんの自信を潰すようなことを言ったの?」


 ぱちくり、と純粋な瞬きをする瞳の奥には、その実あまりに闇の深すぎる黒い何かが滲んでいた。
 ちんちくりんというのは完全に原作の知識を持っているが故の単なる自虐だが、仮にここで下手に誰かの名前を吐こうものなら死人が一人出ていただろう。しっかり否定せねば……。


「ち、ちがうぞ。ロキやお兄さまはほんとーにかっこいいんだ。おんなじくらいかっこいい人なんて、きっといない。だから、おれはロキとちがってかっこよくないから、ちくりんなんだぞーって、そういうことだぞ」

「……!なーんだ、そういうことかっ。そっかそっかぁ、俺がかっこよすぎるから、俺以外は皆ちんちくりんに見えるってことね?ふふっ、ルカちゃんってば本当に俺のことが大好きなんだねぇ」

「む、うむ。だ、だいすきだじょ」


 ロキの真っ黒オーラが消えてほっと息を吐く。
 むぎゅむぎゅと強く抱き締められてちょっぴり息苦しいけれど我慢だ。このままロキの上機嫌を引っ張ることが出来れば好都合……下手なことは言わないようにしよう。

 ふんふふーんととっても機嫌が良さそうなロキを見上げてほっと安堵しつつ、さっきから着実に襲ってきていた眠気に逆らえずこっくりと頭を揺らし始める。
 それに気が付いたロキが、俺のほっぺをむにゅっと摘まむように頭を支えてくれた。


「おっと。ルカちゃん、眠い?あと一時間もすれば晩餐の用意が出来るけれど……少し微妙な時間だね。お昼寝したい?」

「んぅー……だいじょぶ、ねみゅくにゃいじょ……」


 一時間後にご飯なら、仮に今から昼寝するとして三十分くらいしか時間をとれない。そんなんじゃぐっすり快適な眠りにつくことなんてできないぞ。
 そう思い、ご飯までしっかり起きてるんだじょーっと寝惚け眼でもごもご呟く。ロキはふにゃあっとした笑顔で「そっか、そっかぁ」と俺の頭をなでなでしながら頷いた。


「うーん、でも……もうおめめ半分閉じちゃってるよ?時間ちょっとしかないけど、一緒にお昼寝しない?俺が、ルカちゃんとお昼寝したいなって思ってる」

「んむ……ろきが、そこまでいうなら、しかたないなぁー……むにゃむにゃ」


 そう。俺はしっかり者の偉い子だから眠気も我慢できるけれど、ロキがどうしても一緒にお昼寝したいって言うなら、別にお昼寝してあげてもいいんだぞ?
 なんて考えながら膝の上でくるりと身体を回転する。ロキを背凭れにするような姿勢から、ロキとぎゅっと抱き合うような姿勢に変えて、硬い胸板に顔を埋めた。


「ろきぃ、背中さむいから、ぎゅーしてー」

「うぐッ!は、破壊力ッ!生殺し……ッ!」

「ろき、ぎゅー。ぎゅーう、してよぅ」


 何やらそわそわ忙しない様子のロキに擦り寄ると、ハキハキした声で「するぅ!」と返ってきた。
 むんぎゅぅーってくらいの抱擁に頬を緩ませながら、一時間後の夕食までぐーすかすぴーをすべく、ロキに身体を預けて夢の世界へと旅立った。

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