異世界マフィアの悪役次男に転生したので生き残りに励んでいたら、何故か最強の主人公達に溺愛されてしまった件

上総啓

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五章

153.ちゅっちゅ返し

 
 夕食が終わり広間を出ると、窓の外はもう完全に真っ暗になっていた。
 綺麗な月も顔を覗かせているし、花々を揺らす夜風はひんやり寒そうだ。ちょっぴり寒い廊下をロキと手を繋ぎながら歩き、部屋までとてとてと戻った。


「ロキ。ぷりん、ありがとだぞ。とってもとーっても、うまうまだったぞ」

「うん?ふふっ、どういたしまして。あのプリン、ヴァレンティノお抱えのシェフが作っているから、食べたくなったらいつでもおいで」


 いつでも?あのうまうまプリンをいつでも食べに来ていいって言うのか!
 嬉しくてぴょんぴょん飛び跳ねながらお礼を言うと、ロキはふにゃあっと蕩けるような笑みを浮かべて俺を抱き上げた。突然のうりうり攻撃にあわわっと目を回す。


「んふふ。かわい、かーわい。ルカちゃん、大好き。好き、好き」


 ちゅっちゅと顔中に落とされる口付けをむぐむぐと受け止める。
 なにが引き金となったのか分からないけれど、どうやら俺は無意識にロキの理性を刺激してしまったらしい。突然暴走してキス魔に変身したロキを見てへにゃんと眉尻を下げた。
 このちゅっちゅ攻撃を止める術は一つしかない。というか、ちゅっちゅ攻撃を止める術を最近ようやく一つ編み出した。
 ふんっ!くらえっ、その名も“ちゅっちゅ返し”!


「んむ、むっ……ちゅっ」

「──ッッ!?」


 ほっぺをはむはむする勢いでちゅっちゅしまくっていたロキの唇に、不意打ちで俺からむちゅっと口づけをお見舞いする。
 ついでにその唇をわんこみたいにぺろっと舐めると、完全にロキの動きが止まった。

 制止した隙にロキのほっぺを両手でむにゅっと挟み、もうちゅっちゅの嵐が出来ないように動きを制する。ポカーンと硬直するロキを見上げて、悪戯っぽくふふんと頬を緩めた。


「えへへ。どーだっ!急にちゅっちゅされると、びっくりするだろ?」


 こうやってびっくりしちゃうから、突然ちゅーするのはだめなんだぞ。そういう意味で発した言葉だったが、どうやら上手く伝わらなかったらしい。
 そうだねごめんねという返答を期待していたが、実際に返ってきたのは予想とは裏腹に、真っ赤に染まった嬉しそうな笑顔だった。


「ル、ルカちゃっ、ルカちゃんーっ!」

「うにゅぅっ!な、なんだっ!んむぅ!?」


 突然のうりうり攻撃にあわわっと目を回す。
 もうしてこないだろうと高を括っていたちゅっちゅ攻撃はむしろさっきよりも勢いを増して、唇だけじゃなく口内を舐め回すようなものまで加わってしまった。
 舌がなくなっちゃうんじゃないかってくらいに吸われて、舐められて。歯の一本一本を執念深く舌でなぞられるし、唇は水につけたみたいに濡れちゃうしで散々だ。

 ようやく唇を離された頃には全身ぐったり疲労に塗れてしまって、ぐでーんと凭れる俺をロキは嬉しそうに抱え直した。
 上機嫌に歩き出すロキをへにゃりと見上げると、満開の花でも咲きそうな笑顔が返ってくる。


「嬉しいよルカちゃんっ。そんなに俺のことが好きなんだね、こんなの完全に両思いだねっ!」


 なんだろう、軽い気持ちでしたちゅっちゅ返しだけれど、何かとんでもない誤解を生んでしまった気がする。
 いや、これより前から誤解はとっくにされていたけれど、何というか、そろそろ引き返せない辺りまで来てしまったというか、何というか……。
 うぅむ……まぁでも、別にロキからのちゅっちゅが嫌なわけでもないし、こうやってぎゅっと抱っこされるのも寧ろ大好きだ。実害は感じていないわけだから、別にそう重く考えなくてもいいかな。

 なんて軽く結論付けてふむふむと頷いていると、ふいにロキが俺のほっぺを摘まみながら囁いた。


「ね、ルカちゃん。本番はまだ早いからアレだけど、今夜は触りっこだけしない?湯浴みもさ、一緒にしよ?俺、ルカちゃんの身体洗いたいな」


 突然の提案に「む?」と首を傾げる。一緒にお風呂?それってあれか?男同士の……なんていうんだっけ?そうだアレだ!うむうむ、一緒に湯浴み、いいじゃないか!


「“はだかのつきあい”ってやつだな!うむ、いっしょに湯浴み、したいぞ!」


 男同士でお風呂に入り、本音を語り合う……仲良しになるための方法、裸の付き合い!
 ロキってば、今だってとっても仲良しなのに、もっともーっと俺と仲良しになりたいっていうのか。ふふん、困ったさんだな。そ、そりゃまぁ、俺だって仲良しなりたいぞ?ふん、ふふん。

 直球での『仲良しになりたい』発言を受けて照れる俺を見下ろし、ロキは何やら俯いてぷるぷる震え出した。なにごと?と瞬くと、ロキがバッ!と顔を上げて真っ赤な顔を晒す。
 な、なんだかロキってば、さっきから顔を火照らせてばっかりだな。


「ル、ルカちゃんんッ!まさかルカちゃんってば、子供のことまで考えてくれてる!?このちっちゃな身体で俺を受け入れる覚悟、もうしてくれてるっていうの!?も、もうっ!ほんと好きぃッ!」

「お、おう。よ、よくわかんないけど、おちつくんだぞ」


 なんだなんだ。急にわけわかめなセリフを早口で言われても、わけわかめなだけなんだぞ。
 突然の大暴走ロキにあわわっと困惑しながらも、荒ぶるロキの頭をなでなでしてなんとか宥める。あ、そうだ、暴走したロキにはこの技が効くんだったぞ。
 よっこらせ。ロキのほっぺをむにゅっと捕まえてっと。むちゅっ、おーけーおーけー。


「んちゅ。よし、おちついたな。いっけんらくちゃく」

「──……」


 秘技“ちゅっちゅ返し”で一度はピタァッと硬直したロキだったが、数秒後には何やら瞳を血走らせて浴場まで走り出した。鬼気迫る雰囲気がちょっぴりこわいぞ。
 もしかして俺、完全に対応を間違えっちゃったパターンか?と嫌な予感を抱いたが、何にせよもう手遅れなので、諦めて大人しくロキの抱っこに収まった。
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