異世界マフィアの悪役次男に転生したので生き残りに励んでいたら、何故か最強の主人公達に溺愛されてしまった件

上総啓

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五章

169.ロキのちゅっちゅ攻撃

 
 馬車の中はバチバチだった。なぜなら、一つの馬車に俺とロキ、父とアンドレアが四人で乗ることになってしまったから。
 本当は二つの馬車に別れて乗るはずだったのが、ロキに何かしらの危機感を覚えたらしい二人にその予定を変更されてしまったのである。
 まぁ俺はみんなで仲良く馬車に乗れて嬉しかったけれど、気のせいじゃなければぷらんぷらーんと足を揺らして遊んでいた俺以外、三人ともみんなピリついた空気を纏っていた気がする……。

 まぁそれはいいのだ。うむ、何事もなく無事についたのだからなんでもよしっ。


「ルカちゃん、おいで。はぐれちゃいけないから手繋ごう」

「むん。つなぐぞ。ロキがはぐれないように、おれがお守りしてやるぞ」


 差し伸べられた手をちょこんと取る。
 えっへんと胸を張って答えると、ロキは一度きょとんと瞬き、やがておかしそうにふはっと吹き出した。嬉しそうな笑みにまたどどやぁと気分が上がる。
 そんな俺達の様子を背後からぐぬぬ……と悔しそうに見つめている父とアンドレアからはそろりと視線を逸らし、知らないフリをした。だ、だって二人ともなんかこわいしぃ……。

 てくてくとロキと並んで歩き、今回の夜会の舞台であるガースパレ家の正門を越える。
 そう、今夜の夜会はガースパレ家が主催なのだ。実は前日まで主催の家門について知らなかったのだが、人脈作りがしたいなら最低限それくらい知っておきなさいとリノに叱られてしまった。
 しょぼんとなりながら徹夜で夜会に参加する人について調べたのが昨夜のこと。今となっては、リノにお叱りを受けてよかったと思っている。

 確かに、人脈を広げたいのになんの事前知識もなく談笑に混じるのは普通に考えてムリだものね。
 うむうむ、と考え事をしながら歩く道中、ふいにとある疑問が湧いてロキに尋ねた。


「そういえば、今日はリカルドさま来ないのか?」

「うん?あぁ、父上なら今日は来ないよ。もともと俺もこの夜会に参加するつもりはなかったし、それは父上も同じだったから。俺と違って急に予定変更するとか出来ない人だからね」


 会いたかった?と聞き返されてうーむと逡巡する。会いたいのは、そりゃあ会いたいけれど、お仕事の邪魔をしてまで会いたいとは思わない。
 大丈夫だぞと言うと、ロキは「そっか」と言って微笑んだ。


「でも父上、ルカちゃんにすっごく会いたがっていたよ。俺の未来のお嫁さんだから、今からたくさん仲良くなりたいんだって」


 不意打ちの“お嫁さん”発言にむぅっと唇を尖らせ、真っ赤になった表情を俯いて誤魔化す。
 急にそういうことを言われると照れちゃうぞ……ともごもご呟く俺を、ロキはふにゃりとゆるゆるの笑顔を浮かべて撫で回した。やめんか、サメさんポンパが崩れちゃうぞ。


「それにしても、ルカちゃんったら今日はいつにも増して素敵だね。まるで夜空に浮かぶお星さまみたい。夜会に参加するどの人間よりも、ルカちゃんが一番輝いていること間違いなしだよ」

「っ……!そ、そか?えへ、えへへ。ありがと、とっても嬉しいぞ」


 キラキラの衣装、ロキに褒められた!
 服についての発言が一切ないから、もしかして似合ってないかななんてちょっぴりドキドキしていたけれど……どうやらきちんと見てくれていたみたいだ。
 望んでいたロキからの褒め言葉がとっても嬉しくて嬉しくて、思わずぽぽっと顔が真っ赤に染まり、頬がゆるゆるに緩んでしまう。

 ロキと繋いだ手にきゅっと力を籠めて、ふにゃふにゃの表情のままロキを見上げた。


「ロキ、ありがと。ロキもとってもすてきだぞ。すっごく、かっこいい」


 ふにゃあと緩んだ笑みを向けてそう言うと、ロキはぽっと微かに赤面して息を呑んだ。

 そう、おめかししているのは俺だけじゃない。ロキも同じくらい素敵な格好をしているのだ。
 偶然にも、まるで俺とお揃いにしたみたいな黒を基調とした衣装。アメジストのブローチも、キラキラ輝いていて黒いジャケットに良く似合う。
 一番は、いつもは無造作に作っている前髪が、今夜は後ろに撫でつけられているところ。綺麗な顔がよく見える分、いつもより色気も魅力もダダ洩れだ。

 なんて、髪型をじーっと見つめている時にふと気づいた。そういえば、前髪を後ろに撫でつけているって部分は、俺も同じだなって。まるでお揃いみたいだなぁって。
 そう思ったら嬉しくなって、俺は思わず繋いだ手をルンルンと揺らしながらえへへと笑みを零した。


「前髪ぴとってしてるの、おそろいだな。おれもロキとおんなじだぞ。ほら、サメさんがな、おれとロキを、おんなじ髪にしてくれてるんだぞ」


 ぽわぽわそう言うと、ずっと赤い顔で無言を貫いていたロキが突如バッ!と俺を抱き上げた。
 突然のむぎゅーに混乱してあわあわと目を回す。なんだなんだと困惑する俺の額に、ロキは不意打ちでちゅっと口づけを落とした。


「なっ……!」


 咄嗟に額を手で押さえて真っ赤な顔を向ける。
 するとロキは更に瞳を甘く蕩けたものに変えて、ちゅっちゅとキスを連発してきた。額だけじゃなく、頬やら鼻にまで。


「な、なんだなんだっ!ロキ、やめぃ!ちゅっちゅするなっ」


 近づいてくるロキの口をぺちっと両手で塞いでようやくちゅっちゅ攻撃から逃れる。

 急に暴走し始めるからなにごとかと思ったが、本当に一体何があったのか……。
 ビクビク震えながらロキの答えを待つ前に、ずっと背後から様子を見守っていたらしい父とアンドレアがすっ飛んできた。
 父が俺をシュピッと奪い取って抱っこし、アンドレアが鬼の形相でロキの胸倉を掴み上げる。今にも二大ファミリー全面抗争が始まりそうな勢いだ。こわいよぅ。


「殺すぞ貴様。俺の前でルカに手を出すとは良い度胸だ。その勇敢さに免じてこの世の全ての苦しみを味わわせながら甚振り殺してやる」

「徹底的に殺れ、アンドレア。後処理は全て父に任せろ」


 わーっと慌てて声を上げ、ロキをぶっ殺してしまいそうな二人を必死に止める。
 父の抱っこから抜け出し、ロキにぎゅっと抱き着き……そうしてふんすとお怒りの表情で振り返り、二人にメッとお説教をした。
 急にロキをぶっ殺そうとするなんて酷いぞ。まったく、ぷんすかである。


「ロキ、いくぞ。ここは怖いから、はやく行くんだぞ。あと、もうちゅっちゅダメだからな」

「うん分かった。ごめんねルカちゃん、俺ってばちょっぴり堪え切れなくて」

「むん。よくわかんないけど、ちゃんと堪えるんだぞ。ちゅっちゅはだめ」


 再びロキとぎゅっと手を繋ぎ歩き出す。
 ガースパレ家の玄関ロビーに、見慣れたチャイナ服の青年が見えてハッと姿勢を正した。
 いつまでもあわあわと騒いでいないで、そろそろピシッと超絶クールモードに切り替えるんだぞ。むむんと背筋を伸ばし、クールな表情を浮かべて、よし完成。クールルカ完成である。

 俺にメッされたことで背後でシュンとなっている二人を置き去りに、ロキと並んでクールに玄関扉を越えた。
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