190 / 241
五章
187.ケジメの結婚
「てことで、難しい話はとりあえず終わったね。それじゃあ婚約についての話に移ろうか」
「終わってないだろ死ね」
チェレスにまた会わなきゃなのかー緊張するなーそわそわ、と揺れていると、ふいにロキが超絶急カーブをつけて話を切り替えた。
あまりに突然の切り替えだったので、流石のアンドレアも雑なツッコミしか追い付いていない様子だ。普段ならもうちょい理論的に罵倒するのに、今のはただの暴言である。
婚約だとか結婚だとかの話、ロキの中ではまだ終わってなかったのね……。
へにゃりと眉尻を下げた困り顔を浮かべると、ロキはそんな俺を見下ろしてきょとんと首を傾げた。
「うん?どうしたのルカちゃん。心配しなくてもちゃんと結婚するから安心して」
「そんな心配はしていない。死ね」
一体何をどう解釈すれば、俺が『ふえぇ、ロキと結婚できないのかなふえぇ』と心配しているだなんて曲解するのか。
ロキのご都合思考に怯える俺の代わりに、アンドレアがまたもや雑だけれどきっちりツッコんでくれた。これまた単なる暴言と化しているけれど。
とはいえ、ロキは何年もアンドレアからの罵詈雑言を受けてきた訓練済みの人間だ。
特にアンドレアの暴言に反応することなく、サラッと話を進めるロキに恐々としてしまった。つ、つよい……ロキってば強すぎるぞ……。
「うーんどうしようかな。周囲への牽制も兼ねて、式は早い方がいいよね。ルカちゃん、今何歳だったっけ?十二歳くらい?そっかそっか、まぁイケるよね。ギリセーフ」
「アウトに決まってるだろ死ね」
俺のほっぺを上機嫌にぷにゅぷにゅしながらルンルンと語るロキ。
アンドレアの常識的なツッコミを聞き流して「子供はもう少し二人の時間を楽しんでからでもいいよね」と嬉しそうに呟くロキを見上げ、ちょっぴりビクビクしてしまった。
ロキってば気が早すぎだぞ。まだ結婚するかどうかも決まっていないのに、将来のこと考えすぎなんだぞ。子供なんて早くても、あと十年は先になるだろうに。
って、俺ってばなにフツーに考えてるんだっ!これじゃあまるで、ロキと子供を作るのは別に嫌じゃないって思ってるみたいじゃないかっ!
……ま、まぁ。べ、別に嫌じゃないけどな?むん。嫌がる理由とかも、特にないし?うむ。
「でもさぁアンドレア、普通に考えてみてごらんよ。なんか現実から目を背けているみたいだけど、俺とルカちゃん、一線越えちゃってるからね?」
アンドレアがギクッと肩を揺らす。俺も同時にビクゥッと震えてしまった。
ロ、ロキってばなんてこと言うんだ!身内にチョメチョメな話題を知られるのは羞恥具合が段違いなんだぞっ!他人に知られるよりもテレテレな感覚がぶっちぎりなんだぞっ!
なんてふすふすっと憤る俺を、ロキは軽く抑え込んでぎゅうっと抱き締めた。
まるで今は話に入らず大人しくしていろ、と言わんばかりの対応だ。
大人の話だからと仲間外れにされたみたいでちょっぴりショックだけれど、俺は空気を読める子なので大人しくふすふす……と身を縮ませた。しょんぼり。
「一夜の遊び程度、この世界じゃよくあることだけど……それはあくまで一線を弁えた場合のみに限定される話だ。まぁ言っちゃえば、中に出すか出さないかって話ね」
「ッ……」
「俺の場合は……まぁ普通にライン越えなんだよね。それに、子供には手を出すなって暗黙の了解があることも知ってるでしょ?俺、その掟破っちゃったから、ケジメをつける義務もあるのさ」
え、そんな了解あるの?
声には出さないけれど、俺ってばびっくり仰天である。そんな暗黙の了解とやらがあるなんて知らないぞ。教えられてないぞ。
というか、なんかロキってばシュン……って感じの空気纏っちゃってるけど、行為中はそんな謙虚な感じ微塵もなかったよな?むしろ遠慮の欠片もなく俺のことずっこんばっこん犯してたよな?
なんて、ジトーッと疑いの目を向ける俺からは器用に視線を逸らし、ロキは相も変わらず『反省してますしょんぼり……』って感じの雰囲気で語り続ける。
「でも仕方なかった、不可抗力だったんだ。俺がしないと、ルカちゃんは毒で藻掻き苦しんでいただろうし……俺は、ルカちゃんの苦しむ姿なんて見たくなかったから」
いやいや、ロキってば俺が何度も“こわい”だとか“やめて”だとか言っても全然止まってくれなかったじゃんか。嬉しそうに腰揺らしてたじゃんか。
快楽に堕ちて苦しむ俺を見て、あんなに愉しそうに笑っていたくせに……一体どの口がそんな主人公みたいなこと言っちゃってるんだ。いや、まぁロキは主人公なんだけれども。
「だからさ、アンドレア。俺にケジメをつけさせてよ。責任をとらせて。ルカちゃんに償わなければいけない義務があるんだ。償いには、俺の生涯を懸けるから……」
俺がひねくれているのだろうか。
『計画通り。これで結婚以外の選択肢はなくなったなニマニマ』って感じの訳が勝手に頭に流れてくるのだが、流石に考えすぎだよな?俺、ロキのこと信じてるぞ?
本当に、申し訳なく思っているからこその償いがしたいんだよな?そうだよな?決して下心なんて含まれていないよな?なっ?
ぷるぷる震える俺をぎゅうっと抱え込むと、ロキはそのままアンドレアに深く頭を下げた。
「君の大切な弟の初めてを奪ってしまったこと、本当に反省しているよ。でも、理解してほしい。全てはルカちゃんを守る為の判断だったんだ」
反省?反省……?と困惑する俺の口をさりげなく片手で塞ぐと、ロキは頭を下げたままもう一度アンドレアに「ごめんね」と謝った。
ちなみにこの間、俺の目の前には『何も言うなよ?』の圧を含んだ満面の笑顔が浮かんでいる。怖いので泣いちゃってもいいだろうか。
「……気に食わないが、貴様がルカとの一線を越えたという噂は既に周知されてしまっている。噂の出処が特定出来ていないことが少し気になるがな」
若干棘のあるセリフを吐いたアンドレアは、訝し気に探るような視線をロキに向けた。
ロキは顔を上げると、ふわりと穏やかな微笑を浮かべて口を閉ざす。ふぇっ、無言でにこやかに微笑まれるのが一番怖いぞ……。
「まぁいい。不快だが、確かに今はお前に預けるのが最も安全だ。下手をすればヴァレンティノも敵に回すというこの状況で、お前からルカを奪うような馬鹿はそう居ないだろう」
「そうだね。分かってくれたみたいで嬉しいよ」
「勘違いするな。お前を認めた訳ではない。あくまで最善策として受け入れたまでだ」
むぅ、なんだかちょっぴり寂しいぞ。当人の俺を抜きにして俺の話をスラスラーッと進める二人、ちょぴっとは俺のこともかまってほしいぞ。ふすふす。
軽くぷくっとほっぺを膨らませて裾を引っ張ると、ロキはすぐに俺を見下ろし、甘く蕩けるような笑みをふにゃっと浮かべた。
「うん?大丈夫だよルカちゃん。もう誰にも手出しはさせない。絶対に守るからね」
「む……うむぅ」
そういうことじゃなくて!と否定したかったけれど、諦めてもごもごと口を噤んだ。
別に、ロキに身を委ねることが嫌なわけじゃない。ロキのことが嫌いなわけでもない。
そう、むぅむぅと悩んではみるものの、よく考えてみれば、俺にはロキを拒む理由が何もない。
その事実に気が付いたら『むん?俺、大人しく黙っているのが一番いんじゃね?』と悟ってしまったので、特に抵抗することなく再びロキの抱っこにふすふすっと収まった。
あなたにおすすめの小説
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます
ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。
しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。
——このままじゃ、王太子に処刑される。
前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。
中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。
囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。
ところが動くほど状況は悪化していく。
レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、
カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、
隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。
しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。
周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり——
自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。
誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う——
ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。
余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない
上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。
フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。
前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。
声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。
気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――?
周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。
※最終的に固定カプ