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六章
199.キツネさんの尋問
しおりを挟む「あわわ、あわ、あわわっ」
「ルカちゃん落ち着いて。ちょこまかしなくて大丈夫だから。俺の周りぐるぐるしないで、可愛すぎてぎゅって捕獲したくなっちゃうから」
もぐもぐタイムに突如王族さまがやってくるなんて、そんなの予想もしていなかった。
加えてロキの華麗な不敬発言。混乱とロキが不敬罪で極刑に処される可能性と、色んな不安が一気に押し寄せてしまい、結果的に俺はあわわっと忙しなく大混乱してしまった。
両腕を万歳の形に上げながら、佇むロキの周りをぐるぐると走り回る。
このぐるぐるは混乱でおかしくなっちゃったことに加え、不敬罪でロキが捕まらないように柵とかバリアとかの役になればいいなーって感じで走っている。
一人バリア?一人包囲網?そんな感じだ。俺がずっとロキの周りをぐるぐるしていれば、誰もロキに近付けなくて確保できないだろ?そういうことだ。賢すぎてあわわって感じだろ、えっへん。
「あわわっ、わ、あぅわッ!?」
目ん玉ぐるぐる。うーむこれは持久戦。俺が目ん玉ぐるぐるして倒れるか、その前に敵が諦めるかどうかのハイリスクな勝負だ!
なんて思いながら走っていると、ふいにロキが正面に俺が来たタイミングでぎゅっと俺の身体を抱き上げた。つまり、捕獲されてしまったというわけだ。むねん。
「んむ、むぅっ、むむぅっ」
「ごめんねルカちゃん。ぐるぐる遊びしてたのに強制的に止めてごめんね。ほっぺぷくってしないで。食べたくなっちゃうから」
ぽすっと抱っこで拘束され、怒りのぺちぺち攻撃を仕掛ける。
せっかくロキを守るためにぐるぐるしてやってたってのに、遊びとは何事か。ぷんすかである。
仕方ないのでむんっと大人しく動きを止めると、ロキはいい子いい子するみたいに俺の頭を撫でた。
むーん……俺はもう子供じゃないんだぞ。いい子いい子はもうやめるんだぞ。ふんふん、ふすふす。
「で、何の用件でしたっけ?」
「おい、もうお前達、私の話を聞く気ないだろう」
呆れ顔を浮かべる王太子を見て再びあわわっと青褪めた。
ま、まずい……またもやロキ不敬罪の危機だ!俺がなんとかしてロキを守らねばっ!
そう意気込んだ俺は、ふすふすっと気合を入れながら抱っこから抜け出した。するっ……おっけーおっけー、抜け出したら王太子のもとにとたとた駆け寄って、っと。
「ふんっ!聞いてますっ!聞く気ありますっ!いっぱいありますっ!」
「ん?あ、あぁ、そ、そうか。それならば良いのだが……」
ロキの代わりに聞いてますよ聞く気ありまくりですよアピールを全開にする。
すると王太子はちょっぴり困惑したような顔をしながらも、ならいっかーとばかりにスタスタ進んでソファに腰掛けた。よし、ミッションコンプリートである。ふんっ。
ふぅっと額の汗を拭い、ロキの手を引いて王太子の向かいに座る。
今度こそお話どうぞと勧めると、王太子はようやくかいなとばかりに眉尻を下げながら話を切り出した。
「こほんっ……まぁ、とはいえもう気が削がれたのでな。単刀直入に用件だけ伝える。花嫁よ、お前にフォルの尋問を頼みたい」
「ふむふむ、りょーかいっ!……むん?ふぉる?」
俺に王族直々のミッション?かっけーやるやる!とやる気が先走りつつの返事をしたが、すぐにむぅ?と首を傾げた。
ふぉる、ふぉる。うーむ初めましてのお名前だぞ。だれじゃそれ?
俺のきょとん顔を見て察したのか、王太子は微かに苦笑しながら答えた。
「お前も何度か顔を合わせたことがあるはずだ。反乱軍の主犯であるチェレスの腹心、狐獣人のフォルを知っているだろう?」
「チェレスのともだち……きつねさん、きつねさん……?」
ハッ!と思いっきり目を見開く。
ぴこぴこぴこーんっ!俺ってば賢い子なので、しっかり思い出したぞっ!
フォル、チェレスの腹心、狐獣人。ぶわわぁっと懐かしい隅っこの記憶がどんどん表に出てきて、ようやくその正体をあらわにした。
例の古風な敵さんだ。弓だけで戦う、チェレスに絶対服従の狐獣人。あの人、フォルっていうのか。
「むん、思い出しましたっ。チェレスと仲良しのキツネさんっ!」
「う、うむ……仲良し、なのか?」
「黙れ、余計な低俗話を吹き込むな。ルカちゃんは距離が近ければ全て仲良し認定する純粋な子なんです。利害関係の一致だとか一方通行の服従だとかも全て仲良し判定なんです」
「そ、そうか。すまない。これは失礼した」
ふんふん、思い出したぞっ。キツネさんだな?チェレス大好きで仲良しな、あのキツネさんっ!
思い出してモヤモヤが晴れたことでスッキリ。ルンルンと足を揺らしていると、ふいに神妙な面持ちで語り合う二人に気付いて首を傾げた。むん?なんのお話をしてるんだ、二人とも。
俺がきょとんとすると同時に、二人はあわあわと姿勢を正してなんでもないですよアピールをしだした。なんだなんだ、俺には内緒なのか?
「して、フォルの尋問を頼みたい理由なのだがな。今はチェレスの尋問が出来ないだろう?ダミアーノとやらが奴の身体を支配している故に」
「ふむ、そうですな」
「お前はダミアーノの尋問を担当している故に分かっているとは思うが、ダミアーノがあの身体を支配している間は、チェレスの証言を聞くことが出来ないのだ」
ふむふむ、確かに、それは王太子の言う通り。
尋問を任される過程で、俺はダミアーノにチェレスについての質問もした。けれどダミアーノは、あくまで答えるつもりがあるのは自分のことだけで、他は無関係かつ面倒なので話さないと言ったのだ。
つまり、チェレスのことはチェレスに聞くしかない。でもダミアーノがチェレスの身体を現状で解放する気配はない。ぶっちゃけ詰みなのである。
「しかし反乱の動機や、主にチェレスが率いた反乱軍の残党……それらはダミアーノを尋問したとて得られない情報だ。という訳で、チェレスの腹心であるフォルを尋問することにした」
「ふむぅ、なるへそ、なるへそ」
「ルカちゃん大丈夫?きちんとお話についてこれてる?」
「舐めるなだぞっ!全然わかるぞっ!」
ロキってば失礼だぞ。ちゃんとわかってるぞふんすふんす。
つまり、王太子は俺に、ダミアーノとチェレスの尋問、二人分をこなしてくれと言っているわけだ。しっかり分かってるからバカにするなだぞ。
「わかりました!お任せくださいですっ!おれがキツネさんに、しっかりきっちり、チェレスのお話聞いてみますっ!」
「うむ。頼んだぞ」
ぽん、と頭を撫でられる。お偉いさんにクールなミッションを任されたのが嬉しくてえっへんと胸を張ると、王太子はニコニコ頬を緩めながら部屋を出ていった。
むぅ……あの人、本当にただ頼みごとをしにきただけなのか。一緒にちょっぴりくらいお菓子を食べてくれてもよかったのに。まぁ、王太子だから忙しいだろうし、仕方ないか。
「あのクソ王太子……ルカに尋問の才があると気付いて利用し始めたな。殺そう」
何やら物騒な発言をぶつぶつ呟いているロキの手を引き、さっさと行くぞと歩き出す。
何はともあれ、まずはちゃっちゃとダミアーノとのお話を済ませるんだぞ。今回はフォル……チェレスについての尋問がメインだからなっ。
「ささっ、行くぞロキ。ごーごー!」
「ルカちゃん、嫌になったら言うんだよ。尋問なんて血生臭い役割、本来ならルカちゃんが担う必要のないものなんだから」
「平気だぞ!おれ、みんなのお役に立ててうれしーぞっ!」
「いい子ッ……!」
がくっ……と頽れるロキを慌てて引き上げる。ふにゃふにゃしてないで、さっさとお仕事に向かうんだぞ。
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