異世界マフィアの悪役次男に転生したので生き残りに励んでいたら、何故か最強の主人公達に溺愛されてしまった件

上総啓

文字の大きさ
211 / 241
六章

206.ラスボスパパ



 むぎゅむぎゅ、むぎゅむぎゅ。
 簀巻きみたいにもこもこガウンを着せられ、リカルド様にむぎゅむぎゅと抱き締められているこの状況。さっきまでの絶望的な状況とは違い、安心感はあるけれど……流石にそろそろ、ロキに対するゴミを見るような視線を緩めてほしい。
 ロキは悪くないんだ。ロキの中に入り込んでいるダミアーノが悪いんだ……。


「よしよし、大丈夫だからね。パパがいるからね。もう怖くないよ、よしよし」


 さっきからずぅーっとこの調子だ。
 よしよしと頭を撫でられ、ほっぺをムニュムニュされ。慰めるみたいに抱き締められると、ロキに似た優しい香りが鼻をくすぐって力が抜ける。
 ぎゅうっと腕を回して首元に顔を埋め、うりうりっと頬擦りしてみる。すると、リカルド様はふにゃふにゃと微笑んで更にほっぺムニュムニュの力を強めた。


「かわいいねぇ。こんなに可愛い子にDVしようとするなんて、本当そこのクソガキは救いようがないね。パパがぶっ殺してあげるから安心してね」

「あ、あのぅ」

「そうだ。いっそDVするようなクソガキなんてやめて、パパのお嫁さんになるかい?お金持ちだし強いしイケメンだし、これ以上ない優良物件だよ。パパにしなよ。幸せにしてあげるよ」


 デレデレリカルド様を止めようと声を上げたはいいものの、とんでもないセリフが返ってきたことでぽぽっと顔が真っ赤に染まる。同時に蒼白もした。おかしな顔色だ。
 いまなんて……?とぷるぷる震える俺に満面の笑顔を向けながら、リカルド様は名案だぜ!とばかりにつらつらと言葉を続けた。


「パパは浮気もDVもしない理想のパパだよ。どうだいルカちゃん、お嫁さんになる?」


 にこやかに問われ、すぐさまぶんぶんっと首を横に振った。
 そんなの絶対ムリだぞ。リカルド様はリカルド様でしかないし、なんたって俺は、俺は……


「お、おれ……ロキじゃなきゃ、やだぞ。お嫁さんなら、ロキのになりたいぞっ……!」


 言い切ってからハッと我に返った。お、俺ってばなんてことを……!
 こんなの、どストレートに『ロキのお嫁さんになりたい!』って言ったようなものじゃないか。まるで俺がロキのお嫁さんになりたがっているみたいじゃないかっ!
 あわあわ、あわあわ。顔面蒼白でチラッと顔を上げる。ニヤニヤされていたらどうしよう……なんて思いながら向けた視線の先には、ニヤニヤ笑顔じゃなく、微笑ましげな表情だった。


「ふぇ……?」


 笑わないのか?墓穴を掘ったなって、クスクスしないのか?
 リカルド様の優しい微笑みに困惑する。まるでよきよきとでも思っているかのような顔だ。


「ふふ。そっかそっかぁ。それなら仕方がないね。あーあ、フラれちゃったなぁ」


 残念、と言いながらも、その表情に残念そうな色はない。ニコニコ笑顔でとっても上機嫌な様子だ。
 ぽわぽわした雰囲気のまま俺を抱っこしたリカルド様は、そのままスタスタとロキのもとへ進んだ。その様子を見てハッと冷や汗をかく。
 まずい!このままでは何の罪もないロキが八つ裂きにされてしまう!
 違うのに!ロキは悪くないのに!悪いのはロキじゃなくてダミアーノなのに!

 なんとかしてリカルド様を止めないと……と慌てて声を上げようとしたところで、リカルド様が見下ろしたダミアーノにかけた言葉は予想外のものだった。


「さて。君はいい加減、私の息子から出ていってくれるかな」


 リカルド様の瞳がふいに怪しく煌めく。
 その言葉に驚きの声を上げるより先に、どこからか現れた赤黒い鎖がロキの身体を拘束した。
 突然のことだったので、ダミアーノは抵抗する間もなくその鎖に囚われてしまう。当然、手に握っていた果物ナイフもあっけなく床に落ちた。


「はわっ!」


 こ、これは……魔法だ!リカルド様ってば、お金持ちで賢くて強くてイケメンな上に、魔法まで使えるってのか!ロキに似て有能さんなんだなぁ。
 はわわっとびっくり仰天、尊敬の眼差しをキラキラと向ける俺を撫でながら、リカルド様は薄い笑みをダミアーノに向けて再び語った。


「おや?聞こえなかったかい?息子から出ていけと言っているのだけれど」


 苦しそうに呻くダミアーノに、リカルド様がそっと手を翳す。
 今度は鋭く尖ったルビーのようなものが現れて、容赦なくロキの身体の心臓付近を突き刺した。
 直後に上がる「ぐあぁァッッ!」という悲鳴は、ロキのものにしては野太く低い。すぐにダミアーノの悲鳴だと悟った。

 けれど、不安は消えない。リカルド様が魔法で刺したのはあくまでロキの心臓だ。
 これはマズいんじゃないか?ロキ痛いんじゃないか?そわそわ……と怖くなって、俺は慌ててリカルド様に縋りつきながら尋ねた。


「リカルドさまっ!ロキ、痛そう……しんぞう、ぐさってなった!」


 あわわっと蒼白顔で訴える俺を、リカルド様が子供を宥めるみたいによしよしと抱き締める。
 それにふにゃあっとなっちゃいそうになるのを必死に堪えつつ、むんっと強く視線を向けた。
 リカルド様がふわっと微笑む。一言「大丈夫」と紡がれるだけで、根拠のない言葉なのに、深い安堵が身を包んだ。


「あの魔法は魂のみを攻撃するもの。ロキの身体に負担は掛からないよ」

「そ、そーなのかっ……」


 ほっと息を吐く。なーんだ、ロキは大丈夫なんだな。よきよき、ほっ。

 それにしても……だとしてもだ。こんなチートみたいな魔法をあっさり使っちゃうなんて、まるでリカルド様の方が主人公みたいだな。
 いや、違うか?主人公ってより、どっちかというと黒幕、ラスボスって感じだな……。

 考えてみれば、構図だけ見ればこれ、作中最強でなければいけない主人公のロキが、あっけなく膝を折っちゃってる状況だし……。
 それを余裕気な表情で見下ろす主人公のパパ、リカルド様。うーむよくあるラスボス像って感じで真実味が増してきたぞ……。


「もうすぐベルナルディが来るはずだ。それまでに、何とかロキの身体から侵入者の魂を引き剥がさないとね」

「べるなる……ほぇっ!お父さまとお兄さま、こっち来てるのかっ!?」


 ふいの言葉にびっくり仰天。
 真ん丸に目を見開く俺を撫でつつ、リカルド様はひょいっと窓際を指さした。

 指し示された方向を見て察する。そういえば、ジャックとガウがいつの間にやらいなくなっている。
 この怒涛の展開と混乱に乗じて、邸を抜け出したのか。それなら、きっと二人はベルナルディ邸に応援を呼びにいっただろうし、リカルド様の言う通りもうすぐ助けが来るはずだ。


「よ、よかった。ほっ」


 再び安堵の息を吐く。
 すると、リカルド様がふいに「ねぇルカちゃん」とほっぺをふくふく突っついてきた。
 むん?と首を傾げつつそろりと見上げる。なんぞ?と瞬く俺に、リカルド様はそういえばな質問を投げ掛けてきた。


「そろそろ、説明してくれるかい?どうしてロキの身体に余所者の魂が侵入しているのか」


 はわっと硬直する。そ、そうだ!リカルド様にもきちんと説明しないと。
 リカルド様ってば、ずっと全てを見透かしているかのような無駄のない動きをするから、てっきりこの状況のことも理解済みなのかと思っていたぞ。

 慌ててこくこく頷く。お助けが来るまでの間、リカルド様に大体の流れをかくかくしかじかーと説明した。

感想 118

あなたにおすすめの小説

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます

ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。 しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。 ——このままじゃ、王太子に処刑される。 前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。 中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。 囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。 ところが動くほど状況は悪化していく。 レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、 カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、 隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。 しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。 周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり—— 自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。 誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う—— ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。

余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。 フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。 前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。 声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。 気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――? 周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。 ※最終的に固定カプ