異世界マフィアの悪役次男に転生したので生き残りに励んでいたら、何故か最強の主人公達に溺愛されてしまった件

上総啓

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六章

219.結婚のごほうこく




「というわけで、俺たち、結婚しまぁーす!」


 客間に集まってすぐ、上機嫌に拍手しながら宣言したのは、ニコニコ笑顔のロキだ。
 けれど『俺たち』の中に含まれているはずの俺は、ロキみたいにニコニコできるわけもなくサーッと青褪める。な、なんてKYな態度なんだ……みんなの表情が見えないのか……!?


「…………は?」


 地に這うような低い声を発し、鬼の形相で硬直したのはアンドレアと父だ。
 窓際にいるジャックやガウ、リノやミケの側近組も、各々ドス黒いオーラを纏っている。ベルナルディの本気のブチ切れを感じてあわわっ……と思わず俯いた。

 しかしその恐怖もすぐにシュンと薄れる。サッと視線を逸らした先に、地獄のような空気のベルナルディと正反対の雰囲気を醸し出した人たちが見えたからだ。


「ついにプロポーズを受け入れてもらえたんだね!おめでとうロキ!ルカちゃんもおめでとう!」


 とっても嬉しそうにぱちぱち拍手するリカルド様と、その後ろでクラッカーを鳴らしたりヒューと口笛を吹いたりするヴァレンティノの側近たち。
 地獄の空気を纏うベルナルディと、めちゃんこふわふわお祝いムードのヴァレンティノ。あまりに対照的すぎる二つのグループを交互に見つめて、更に「ぴぇっ」と青褪めた。

 お、おれはどうすればいいんだ……?ベルナルディの重苦しい空気に会わせてズドーンとなればいいのか?それともヴァレンティノに会わせて「ありがとー!」とニコニコすればいいのか……!?

 正解の反応が分からずそわそわと混乱していると、そんな俺をロキがひょいっと抱き上げて、みんなに見せつけるみたいに額にチュッと口づけた。
 突然のちゅーに固まる俺、キャッキャと楽しそうに騒ぐヴァレンティノ、更に殺意を滲ませるベルナルディ……どうするんだこの空気!と涙目になる俺の頭上で、ロキがふと笑顔で語り出した。


「俺たち両想いだから、そろそろいいかなと思って。さっきの話も聞いていたと思うけど、ルカちゃんも俺のこと本気で好きになってくれたし……ね?ルカちゃん」

「ほぇっ!」


 そ、そこで俺に振るんかーい!とあわあわ冷や汗を掻く。
 さっきの話というのは、ロキがわざとみんなに聞かせたあのノロケみたいな会話だよな?今その話を出すなんて、ロキってば本当に策士すぎてガクブルなんだぞ……。

 はわわと焦りながらも、こうして震えているばかりじゃダメだ!と勇気を振り絞ってこくこく頷いた。プロポーズを受け入れたっていうのは本当のことだし、堂々とするんだぞ!


「う、うむ。おれ、ロキのこと好きだぞ。結婚したいぞ!結婚のごほうこく、しますだぞ!」


 くわっ!と宣言した瞬間上がる黄色い悲鳴。そして絶望を宿した呻き声。
 ベルナルディとヴァレンティノ、間に壁でもあるのかと思うくらい正反対の空気感だ。父やアンドレアに至っては、死の五秒前みたいな蒼白顔を晒してちーんとなっているし。

 羞恥で真っ赤に染まる俺を、ロキが満足気にむぎゅっと抱き締める。ぽんぽんと俺の頭を撫でながら、畳みかけるみたいに補足を語った。


「ルカちゃんは敵に狙われやすいから、ヴァレンティノが後ろ盾に加わる意味でも丁度いいタイミングだと思いませんか?ルカちゃんを狙った反乱軍の処刑も、今なら見せしめに出来ますし」


 笑顔でマフィアトークをぶっこむロキに、リカルド様が『ウチの子天才!』とばかりに深く頷いた。


「その通りだね。まさにこのタイミングが丁度いい。既に正式な婚約は済ませているし、ベルナルディの方も当然了承済みだろうしね」

「は?」

「おい、ふざけるな」


 サラッとリカルド様が語った言葉に、ズドーンと重苦しい空気を纏っていたベルナルディ側がスッと反応した。さっきまで項垂れていたのに、急に復活するからびっくりしちゃったぞ。

 何やら対立構造になってしまった空気を察知し、あわわっと冷や汗を掻きながらロキにむぎゅっと縋りつく。むぎゅむぎゅ、おいこらロキ、満足気に笑ってないでこの空気を何とかするんだぞ。


「え?だって、二人の正式な婚約を認めていたでしょ?婚約している二人が後々結婚するなんて当然のことじゃないか。一体何をそう混乱しているのかな」


 きょとんと不思議そうに瞬くリカルド様。煽っているのか本当に困惑しているのか、ちょっぴり判断しづいらのがまたタチ悪いんだぞ。
 アンドレアと父がわなわな震える。そりゃそうだぞとなる反応を眺めていると、二人はリカルド様にくわっと反論した。


「私が認めたのは、あくまでルカを守る為の一時的な手段としての婚約だ……!結婚を認めたことなど一度もない!」

「父上の言う通りです。その手段としての婚約だって、嫌悪を堪えて何とか許可したものだというのに。貴方も当然そのことは分かっていたはずだ」


 二人のセリフを聞いて、リカルド様は優雅に腰掛けたまま「えぇー」と眉尻を下げた。


「そんなの知らない。当然ベルナルディも承知の上での婚約だと認識していたけど?今更そんな屁理屈を捏ねられたって、既に正式な婚約は済ませているんだからどうしようもないよ」


 リカルド様が呆れ混じりに語った言葉に、背後に立つヴァレンティノ側の側近たちも「そうだそうだ」と続く。
 たぶん屁理屈を捏ねているのはリカルド様の方なのだろうけれど、それを察してもむぐっと口を噤んで何も言わなかった。お、おれは黙っておこう……大人しくスンと知らんぷりしておこう……。


「もう結婚の契約書もお互いに書いちゃったもんね。ね、ルカちゃん」

「あぇっ!」


 ただでさえバチバチな空気に更に火種を撒くようなセリフを語ったロキ。
 今それ言うのか!?とびっくり仰天しながら見上げると、そこには満面のニコニコ笑顔が……こいつ、このタイミングでそれ言ったのも策略のうちだな……!


「は?契約書?ルカも書いただと?」


 案の定ピリつき始めるベルナルディ側の空気を察し「ぴえぇっ」と涙ぐむ。
 もっとすんなりお祝いムードに突入すると思っていたのに、全然殺し合いが始まりそうな雰囲気なんだぞ。こわいぞ泣いちゃうぞ。


「まぁまぁ。もう結婚に関しては確定事項なんだし、何もそう怒らなくても」


 流石の俺でも「ヒェッ」と青褪めちゃうくらいの露骨な煽り。
 ヘラヘラ笑いながら紡がれたロキの言葉に対して、ついにベルナルディ側が纏う重苦しい空気が、ぷつんと限界を迎えた音が聞こえた気がした。

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