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六章
226.証人
突然のいつものメンバー登場に「あわっ!?」とびっくり仰天する。
花束を抱えたままぽてっと尻もちをつくと、ぐるぐる目を回す俺をロキがひょいっと抱き上げた。
「ルカ、大丈夫?ぎゅってしてあげるね。あ、花束重いかな……俺が持つよ」
顔が隠れてしまうくらいの大きな花束。それを持とうとするロキにぶんぶんっと首を振り、花束をぎゅっと抱き締める。むむぅっと眉を顰めてメッと牽制した。
「だめっ!ロキからもらった、大事なお花なの!おれのだから、誰にもあげないっ!」
「グハァッ!」
ふんすふんすと頬を膨らませる。ロキはそんな俺を強く抱き締めて「ぎゃんかわ……!」とわけわかめな言葉を呟いた。
ロキがむーっとぷりぷりする俺の頭を撫でて、再び花束にそっと手を添える。その様子を警戒の目で見つめると、ロキはふにゃりと微笑んで囁いた。
「盗らないから、ね?これ結構重いし、ルカが潰れちゃったらとっても悲しいよ。あとできちんと返すから、今だけ俺に持たせてくれる?」
「む……むぅ。わかったぞ。メッてして、ごめんなさいだぞ……」
しょんぼりと肩を落として言うと、ロキは「いいんだよ」と言いながら花束をさり気なく抱えた。
額にちゅっと口付けられ、ぽぽっと赤くなった俺を嬉しそうに抱き締めるロキ。なんだかいつもよりも雰囲気がぽわぽわしていて好きだぞ、なんて思いながら、俺もロキにぎゅっと抱きつく。
「預けてくれてありがとう。ルカはいい子だね。俺があげた花束、大事って言ってくれてありがとう。怒ってないからね。しょんぼりしなくて大丈夫だからね」
ちゅっちゅしながらロキが優しく語る。その声音につられるようにふにゃっと力を抜き、全身でロキに凭れかかった。ぬくぬく、ぽかぽかで気持ちいいぞ、ふふん。
「……おい。ルカの兄である俺を除けるとは何事だ?殺すぞ」
「あぁごめん。そういえば居たね。俺の可愛いお嫁さんに夢中で忘れていたよ」
ぬくぬくぽわぽわの空間を突如切り裂いた物騒なセリフ。はわわと我に返り、そういえばここにいるのはロキだけじゃなかった!と思い出した。
超絶かっちょいいロキに夢中で忘れていたぞ。父にアンドレアにリカルド様。お馴染みの大人たちが居たんだった。むん、ロキとのお喋りを聞かれていたと思うと、ちょっぴり恥ずかしいぞ……。
「みんな、どうしてここにいるんだ?お父さまとお兄さまも、遊びにきたのか?」
ぱちくり瞬きながら尋ねると、すぐに「違う」と返されてしょんぼり肩を落とした。
むん……そか、違うのか。てっきり遊びにきたのだとばかり。でもでもそれじゃあ、リカルド様はともかく、二人はどうしてここにいるのだろう?
特にアンドレアなんかは、意識的にヴァレンティノを避けていたはずなのに。ロキともちょっぴりギスギスした仲だし、考えてみれば遊びにきたと考えるのは不自然か。
ふむふむ?と首を傾げる。そんな俺を見て答えてくれたのは父だった。
「ヴァレンティノの倅に呼び出されたのだ。求婚を見届けてくれと」
「こっぴどくフラれる姿を嘲笑しに来たというのに……くそ、俺のルカを奪いやがって。盗っ人が」
次いでアンドレアもツーンとした態度で語る。二人の言葉にナヌッ!と目を見開いた。
ななっ、なんと!ロキってば、プロポーズの証人になってもらうべく、しっかり二人との交渉を済ませていたというわけか。
ロキのことだから、二人に内緒でプロポーズくらい済ませてさっさと式の準備を進めるものだと思っていたが……ふむ、大事な時には意外と周りのことを考えられるタイプなんだな。
さっさと俺と結婚したかっただろうに、ロキってば偉いぞ。いい子いい子だぞ。
よしよしと頭を撫でてやると、ロキは嬉しそうにふにゃっと微笑んだ。
「まぁでも、この瞬間の証人になったってことは、二人ともロキとルカちゃんの結婚を完全に認めたってことで良いんだろう?」
ちょっぴりふすふすっとなった空気を切り裂くように、リカルド様がのほほんと語る。
その言葉を切ってめちゃんこ嫌そうな顔をした二人だったが、最終的にはツーンとそっぽを向きながらも「……そう言わなくもない」「……ふん」と小さく呟いた。
なんてこったい。二人がようやく結婚の許可を明確に出してくれたぞ。
予想外の反応にぱちくりしつつ、徐々にふわわぁっと湧いてきた喜びで全身が真っ赤に染まる。
ロキにぎゅうっと抱き着いて、わーいわーいとぴょんぴょん跳ねた。
「やったなロキ!お父さまとお兄さまに、認めてもらえたぞ!おれ、ロキのお嫁さんになれるぞ!」
「……!えへへ、そうだね。嬉しいねぇ。俺もルカの旦那様になれて嬉しいよ」
ふにゃふにゃ笑顔を零しながら、お互いにうりうりーっと頬擦りする。
その様子を傍で見ていた父とアンドレアは、何やらぐぬぬと悔いの滲んだ表情をしながら、愚痴を言い合うみたいにぼそぼそと呟いた。
「くそ、認めなければよかった……くッ!だがルカの喜んでいる姿はとても可愛い……ッ」
「……そろそろ観念するのだ、アンドレア。見ろ、ルカの幸せそうな表情を。これで良かったではないか」
「アロルド、鏡見てごらんよ。良いこと言っている風だけれど、涙が溢れているよ。すごく悔しそうな顔をしているよ」
三人が何やら言い合っている傍で、ロキとむへへえへへとぎゅうぎゅう抱き合う。
頬に当たった薔薇の花弁も、心なしかとっても楽しそうに揺れているように見えた。
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