白樫学園記

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15■ゆらめく月夜☆白樺祭 SIDE:希(了)

18.治まらない熱★

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「た、まき、ごめんね、ごめんなさい、僕、やだ。触られたの、やだよ」
「希」
 珠希は僕のそばへ来ると、ティッシュで僕の手を綺麗にしてくれる。
「ごめん、いじわるしすぎた」
 そう言うと、僕をぎゅっと抱きしめる。
「僕が、悪いから」
「違う、あんな薬使われたら、しょうがないんだよ」
 珠希は僕の耳元でそう言うと、背中を撫でてくれる。
「でも、」
「知ってる、ちゃんと嫌だって言ったんでしょ?」
「ん」
 僕は自分の手の甲でぐっと頬を落ちる涙を拭いながら、頷いた。
「希は悪くないんだ。誰もあの子があんなことするなんて思ってなかった、ただ、ごめんほんと。ただ悔しくて、だからいじわるした」
 そう言って珠希は僕を力いっぱい、息が出来ないくらい強く抱きしめてくれる。
「ごめんね」
 くぐもった声でそうつぶやくと、少し力を緩めた珠希に、顔を覗き込まれた。
「もう、謝らなくていいから。希は悪くないよ」
 珠希はティッシュで僕の顔を拭ってくれる。
「ちょっと落ち着いた?」
「うん」
 珠希は僕をベッドに横たえて、タオルケットを掛けてくれる。僕のすぐそばに肘をついて髪を撫でてくれる。泣いたせいか、薬のせいか、まだ頭がぼんやりとしているけど。
 苦しいほどの熱は、治まった。治まったんだけど。
 僕は優しい顔で僕を見下ろす珠希を見ていた。ネクタイを解いて、ボタンを2つ外している珠希の首もとから、鎖骨あたりを、じっと見ていた。珠希が話すと、喉の小さな骨が動く。
 あれ、なんか。
「希、疲れた?」
「ううん」
 僕はそう言いながら、タオルケットから腕を出して、指でそっと珠希の首に触れた。
 その指を、喉から鎖骨まで滑らせて行く。
「…ん、希?」
「珠希、キスしても、いい?」
 僕は珠希を見上げて、そう呟いた。いつもなら恥ずかしくて言えないけど、今は平気だ。
「うん、いいよ」
 珠希はそう呟きながら顔を近づけてくる。深く、深く。気持ちよくって止められなかった。僕は珠希の後ろ髪に手を差し込むようにして、気が済むまで珠希を解放しなかった。
「あ、はあ……希、どうしたの、」
 ようやく僕に開放された珠希は、目を丸くしていた。
「だめ?」
「ううん、だめじゃないよ」
 そう言って珠希は笑う。
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