白樫学園記

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1■学園生活スタート☆ぼくたち山田兄弟 SIDE:希(了)

17.恋愛経験値

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 17.恋愛経験値

「中学の時、クラスの女子に片思いしてたけど……それだけ」
「それ、経験って言わないよ」
「わ、かってるよ、」
 順平が笑うから、馬鹿にされてるような気がして、思わずとげとげしい言い方になってしまった。すぐにムキになった自分が恥ずかしくなる。
「そっかー、そうかー、そうだよなあ」
 順平は相変わらずにやにや笑いながら一人呟いてる。
「順平? なにニヤニヤしてんの? そりゃ、順平みたいにかっこよかったらもてるんだろうけど、僕じゃ無理だったんだもん。しょうがないじゃん」
「ああ? ちょっと今希ちゃん、俺のことかっこいいとか言ってくれた? なあ?」
「ええ? うん」
 順平は急に目をきらきらさせて僕の髪の毛を高速でかき回す。
「やっぱ、希いい奴! 俺の勝ち決定ー」
「あのさ、さっきから気になってたんだけど、その勝ちって、なんのこと?」
「ああ、んじゃまずひとつ目の答えから。あのさ、俺がさっき言った遊んでるっていうのはさ」
 ごにょごにょごにょ。
 順平は僕の耳に顔を近付けて、とんでもないことを言った。
 僕はおもいっきり恥ずかしい勘違いをしていたらしい。
 遊ぶっていうのは、つき合う相手をとっかえひっかえして体の関係を持つっていうことらしい。
「そんなッ、僕! 僕」
 が、そんなことしてるわけないよっ、っていうかそんな相手いないよっ。
 言葉を続けられなくって、口をぱくぱくしてると。順平が僕の肩を叩いた。
「分かってるって、希がそんなことしてないってことは」
 僕は息を整えながら、うんうん頷いた。
 じゃあ、僕が女の子と経験が豊富だと思って、羨ましいとか思ってたんだろうか?
 またまた申し訳なく思う。
 ん? じゃあなんで珠希と一緒にいたからって、みんなが怒るんだろう?
「あの、もしかして知らないかもしれないから、いちおー言っとくけどな。俺が言ってる遊ぶ対象は女の子じゃないからね……わかる? 希」
 ……。
 わかんない。
「あのさ、まあそのうち分かってくると思うし、深く考えんな! な?」
 そう言ってまた僕の頭を掻き回す。僕はやっぱり意味が分からなくて、されるがままでいた。
「くうーッたまんね、おし!」
 そう言って突然順平は立ち上がった。
 立ち上がると、今まで気付いてなかったけど、順平は珠希とか空也と同じくらい背が高かった。

「いいか!?お前らっ、この山田希は噂とは全く関係ないっ、見てみろこのかわいさを! 希になんかしてみろ!? 俺がぶっとばすッ」
 順平の声が教室に響き渡って、クラスはシーンと静まり返った。僕は、どうしていいのかわからず、ただ座っていた。
「さ、帰るぞ、希。弟のとこ、行くのか? 何組?」
「え? あとF組」
「Fか、あいつと一緒じゃん」
 あいつ? そう思いながらも、僕は変な空気に包まれたままの教室から早く出たくって、鞄を掴むと慌てて順平の後を追った。

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