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1■学園生活スタート☆ぼくたち山田兄弟 SIDE:希(了)
19.ぼくの気持ち(了)
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僕のカードキーを使って部屋に入った瞬間。リビングで抱き合うふたりが目に入って来た。
「…え?」
僕はびっくりして頭が真っ白になって、気がつくと空也先輩を押し退けて部屋を出ていた。
めちゃくちゃに走って、走って。息が切れて足がもつれるまで走り続けた。
結局、僕は薔薇園まで戻って来ていた。薔薇のアーチの途中に座って、葉っぱの隙間から漏れてくる夕日を見ていた。
……なんか、泣きそう。
でも、それがどうしてなのかもわからない。それが嫌だった。
自分で自分のことが分からないのが気持ち悪い。
それに、このずんと重い気持ちも。
アユが珠希と抱き合ってる。
さっきはそれしか頭になかった。でも、少し冷静になってみると、どうしてそれがこんなに嫌なのか分からない。
アユと珠希が仲良くしたっていいはずなのに。僕が怒ったりすることじゃないのに。
……怒る?
僕は怒ってるの?
なんだかそれは間違ってるような気がして、今度は恥ずかしくなってきた。あんなふうに飛び出したりして、きっとみんな変だと思ってる。
「のんちゃん? よかった、すぐ見つかって」
気がつくと、珠希がそばに立っていた。薄暗いアーチの中で、珠希がすぐそばに座る。
「歩くんが、謝りたいって」
「謝るって、なにを?」
まるで、これじゃだだっ子みたいだって分かってる。
「さあ。何をだと思う? のんちゃん。歩くんと仲直り、したくない?」
珠希の大きな手のひらが、僕の頬を覆う。
「……したい」
「だよね? じゃ、部屋戻ろうか?」
「うん……」
僕がおずおずと立ち上がると、珠希は僕の右手をぎゅっと強く握って歩き出した。
なんだかわからないけど、すごくほっとして、初めて自分がこうして欲しかったんだと分った。
***
部屋に入っても、僕は、さっき自分がしたことが恥ずかしくって、顔をあげられなかった。
「ノンッごめん。ほんとに、ごめんね」
アユが走って来て、僕の腕を掴んだ。
アユは悪くないのに。
変だったのは、悪かったのは僕なのに。
「…ううん。僕の方こそ、ごめんね」
「なんでノンが謝るんだよ」
顔をあげると、アユの目が真っ赤で、そしたらもう我慢できなくって。
両方の目から一度に涙がぽろぽろ落ちた。
そしたら、同時にアユの目からも涙がこぼれ落ちるのが見えた。
***
それから、夜までみんなで、一緒にテレビを見たりして過ごした。
順平と実のこともみんなに報告した。
実はアユと同じクラスだから、もしかしたら友達になれるかもしれない。
珠希は、あのくしゃくしゃの笑顔で、ほら言った通りだ、って言ってくれた。
やっぱり顔全部で笑うあったかい笑顔で。
焼き印みたいに僕の胸にじゅっと焼き付いたような気がした。
「あ、そういや不思議に思ってたんだけど。なんで俺らって制服リボンなの? クラスの奴らほとんどネクタイだったんだけど?」
「あ、それ僕も気になってた」
「え? 好きで着けてんじゃないのか?」
空也先輩は首を傾げた。
「え? どういう意味?」
「ネクタイでもリボンでもどっちでもいいんだよ。まあ、ほとんどの生徒がネクタイを選ぶかな。中等部までリボンだから、飽きてっていうのもあると思うけど」
珠希が説明しくれる。
「ええ! じゃあ俺絶対ネクタイのほがいい!」
アユは勢いよく言う。
「だから、自分で選んだんだろ?」
「ちぃがうって。伯父さんがこれしかくれなかったんだもん」
アユがそう言うと、珠希と空也先輩は顔を見合わせて笑った。
「理事長いい趣味してんじゃん」
空也先輩がそんなこと言うから、僕らは顔を見合わせた。
「いいか歩、ネクタイは禁止だ」
「なんで!?」
「だってリボンの方がかわいいから。似合ってるし」
「もう!」
アユの反論も聞かず、空也先輩は生徒会長命令、とかなんとか言ってた。
「のんちゃんもだよ。リボン似合ってるから」
ぼそっと珠希が耳もとで言う。驚いて見上げると、あの笑顔で僕を見ていて、また僕の胸がじゅっと音をたてた。
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