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2■学園生活スタート☆ぼくたち山田兄弟 SIDE:歩(了)
3.お菓子と悪魔
しおりを挟む3.お菓子と悪魔
でも、一個くらい食べてもわかんないよな!?
だいたいこんなとこに置いてたら固くなっちゃうじゃん?
この人寝てるし、きっとお腹いっぱいで残してるんだよ。
食べ物は大切にしなきゃ。
…一個だけ…。
そっと手をのばして一つ、口に放り込んだ。
な、なんだ、これ。
今まで食べたことないぞ、こんなの。見た目はフィナンシェでも実は違うとか!?
オレが普段食べてるのとはレベルが違う!
…うぅ。
も、もう一個くらい食べてもバレないよな?
もう一つ、口の中に入れた。
…うぅぅぅ。
世の中にはこんなうまい食べ物があったのか!!
多分、いや、絶対、確実に!
オレ、このお菓子の悪魔に魅了されたんだ。
きっとそうだ。
違いない。
あまりのおいしさに涙目になりながらパクパクと食べていて、ふと顔をあげるとベンチで寝ていた人が上半身を起こしてじっとオレを見ていた。
見ているというより、睨んでいる…。
ハっとしてお皿の上をみると、残り一つ…。
どうしよう、この状況、言い訳できないよな。
明らかに怒ってるよな。
そりゃそうだ、起きたらいきなり知らない奴がいて自分のお菓子をほとんど平らげてたなんて…。
「…おい…」
そんな状況でもちゃっかりと味わってからゴクリと飲み込んで、返事をした。
「…はい……」
「何してる?」
この人、目が座ってる?寝起き悪いタイプかなぁ…。
「あの、えっとね、迷子になっちゃって、おいしそうなお菓子があって、それでお菓子の悪魔に魔法かけられちゃったんだよ!」
俯いていた顔をそっとあげて、相手の顔を伺いながら言った。
「…お菓子の悪魔?」
「あ、いや、なんつーか、あまりにもうまくって…つい…ごめんなさい」
「ふぅん…なぁ、こっち来いよ」
えええ!?殴られる?
でも仕方ないよな、痛いのやだけど、勝手に食っちゃったオレが悪いんだし…。
そっとその人の所に近寄った。
その指がくぃっとこっちこいと促したので、顔を近付けるとその綺麗な顔を一瞬まじまじと見つめてしまった。
「さぞかしうまかったんだろうな」
次の瞬間、にやっと笑ったとか思うと、ペロっとオレの唇を舐めた。
えええええ!!!!
「何すんだよ!この変態!」
思わずその顔を殴って、オレは一目散に庭の外へと逃げた。
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