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5■萌える緑☆恋する季節? SIDE:希(了)
3.珠希の秘密
しおりを挟む僕は、ベッドに寝転んで自分の心臓がどきどきいうのを聞いていた。
今ごろ、アユはどうしてるのかな。
「眠い?」
気がつくと、珠希がベッドの側に立っていた。珠希はTシャツと、おしゃれなアディダスのジャージのパンツを履いている。なんか、パジャマも様になるよね。
鏡で見なくっても珠希のサイズの大きな服を着た自分がどんなふうに見えるのか想像がつく。
まったく、嫌んなる。
「うん。ちょっと。珠希、ありがと。髪、洗ってくれて」
そう言うと、珠希はまたあの笑顔で笑ってくれる。今はめがねをかけていないから、よけいに特別に感じる。
「今日は、なんか疲れたよね」
「うん」
そう言いながら珠希は僕の隣に横になった。
「珠希、仕事もいろいろ忙しかったんだよね? なのに毎日僕の応援来てくれたもんね。大変だった?」
僕が横を向いてそう言うと、めがねをかけていない珠希と目が合った。
ずきんっ、とまた胸が鳴る。
「希。それなんだけど」
名前を言われたら、また心臓が跳ねた。
「内緒にしててほしいんだけど」
「うん……」
「あのさ、僕、ほんとは仕事なんかじゃなかったんだ」
そう言って珠希はどうしてか恥ずかしそうに笑った。
「へ?」
「あのさ。理事長に……免除してもらってるんだ。仕事っていう名目で」
「おじさんに?」
僕はわからなくって、ただ珠希の言葉を繰り返した。
「あのね、僕、球技ってダメなんだ。足は速い方だと思うし、喧嘩も弱くはないと思うんだけど……球技だけは苦手なんだよね」
珠希は、はにかんだように笑いながら、そう言った。
めがねを外した珠希の顔に、少しだけ幼さが見えたような気がした。
「苦手って……それって、下手ってこと?」
「ああ、そうだよ。もうド下手。そうだな、希のクラスのバスケチームのこと、僕は笑えないんだ。ほんとは」
僕は、自分の足がもつれてコケたり、あらぬ方向へボールを投げるクラスメイトの様子を思い出した。
「くっ……」
思わず吹き出してしまった。
「ほら、それじゃあ寮長久慈様の威厳、まる潰れだし……笑いすぎ、希」
珠希の声が聞こえたけど、僕は笑い続けた。
だって、いつもかっこよくって苦手なことなんてありませんっていう珠希が、って想像したら、おかしくって。
「こら、希」
そう言って珠希の手のひらでほっぺを挟み込まれる。
それでも、僕は笑い続けた。
「秘密だからね」
「うん、あ、でもちょっとバレてほしいかも」
「ええ?? どうして?」
珠希は少し驚いた顔をする。
「だって……そしたら、珠希のファン、ちょっとは減るかもしれないもん。そしたら、僕の心配もちょっと減る」
「心配ってどういう心配?」
「だって……ライバル多すぎるもん。心配」
それを聞いた珠希は、急に真顔になった。
「希」
「うん……」
「そんなかわいいこと言ってると、襲うよ?」
そう言って珠希は僕をぎゅうっと力いっぱい抱き締めた。
おそう?
襲うぅう???
一瞬でパニックに陥る。
「冗談だよ」
僕の顔を覗き込んだ環はいたずらっぽくそう言う。でも、その目に、なにか僕のまだ知らない、情熱が宿っていた。
珠希は僕の前髪を後ろに流すようにかき上げる。
おでこ、ほっぺ、鼻先、そして唇。いろんなところに触れるだけのキスがそっと落とされる。
目を開けてみると、珠希の顔がすぐ近くにあって僕を見下ろしていた。
その瞳は、さっきよりもさらに熱を増しているみたいに感じた。
どくん、どくん、と、心臓の音がダイレクトに頭に響いて来る。
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