白樫学園記

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5■萌える緑☆恋する季節? SIDE:希(了)

13.薔薇の貴公子

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 ここ数日、僕は学校に入学して以来っていっていもいいくらいに、穏やかで幸せな日々を過ごしている。
 アユは、前みたいに普通に戻ったし、僕と珠希のことを本当に喜んでくれてるみたい。
 クシュンッと隣で珠希がクシャミをした。
「大丈夫?」
「ああ、大丈夫」
 そう言って珠希は微笑む。
 だけど、なんとなく僕は珠希の頭を撫でた。
「なんか、僕キャラじゃないから。そういうふうにされるのって慣れてない」
 そう言うと珠希ははにかんだように笑った。
「じゃ、これから僕がいくらでもしたあげる」
「希。それ、かわいすぎ」
 そう言って僕が撫でていた腕を掴んで離すと、僕を抱き寄せた。背中に、珠希の熱を感じる。
「ちょっとこうしててもいい?」
 僕は頷いた。
 まただ。
 珠希が耳もとで囁いて、僕はまだ自分が知らない世界に落ちて行くような感覚を味わった。
「はあ……」
 珠希が深いため息を漏らして僕を抱き締めている腕に、より一層力を込めた。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
 そう言うけど、なんでもないのにそんな溜め息とか……。

 僕は心配になって珠希を振り返ろうとした。けど、珠希は強い力で僕のお腹に腕を回していて、体ごと振り向くことが出来なかった。
「たまき?」
「うん、ちょっとこのままで」
 結局珠希がどんな顔をしてるのか見えなくって、僕は黙って状況を受け入れた。
 少しじっとしていると、珠希がふっと息を吐き出したのが分かった。腕の力が緩まる。
 僕はすぐに珠希を振り返った。
「珠希、どうしたの?」
 でも、珠希はいつも通りの微笑みで僕を見ていた。
「ん?」
 そう言って覗き込まれると、逆に今度は僕がどきどきして挙動不振になってしまう。
「たまき。どうしたの? なんか悩みあるん、だったら、僕聞く」
 顔が赤くなっているのを感じながら、僕は一生懸命言う。
「んああう……」
 僕がそう言ったのと同時に、珠希が僕に飛びついてきた。
「え、あわ、なに? なになに? どうしたの?」
 僕はびっくりして、珠希の胸の中で固まっていた。頭の上で珠希の声がする。
「我慢したのに、希は、もう」
「え? どういう意味?」
 なんとか珠希の腕をくぐり抜けて顔を出すと、すぐ側に珠希の顔があった。
 僕を、見てる……。
 珠希の目が真剣で、僕は合った目を離せなかった。熱っぽい、あの日見た目だ。
「希、好き」
「うん、僕も。好き」
 珠希の手が僕の耳の横の髪に差し込まれる。
 珠希の顔が近付いて来て、僕は目を閉じた。
 ゆっくりと、舌を絡め合う。
 珠希の舌が僕の歯列をなぞる。突き上げるような感覚が僕を襲う。
 もう壊れそうなくらい、心臓が速く打っている。
 ぞくぞくする感覚に飲み込まれそうで、僕は恐くなって珠希のシャツをぎゅっと握りしめた。
 こういうキスをするのは、まだ2度目だ。
 ぽつっと顔に水滴が落ちて来た、気のせいだと思っていたけど、それがだんだん多くなった。
 雨だ……。
 ぼんやりとした頭でそう思ったけれど、珠希も僕も、離れようとはしなかった。

 少しして離れると、またお互い息が上がっていた。
 珠希の髪が濡れていて、黒い髪がさらに漆黒に輝いている。前髪がめがねにかかって邪魔そうだったから、僕は手をのばしてかきあげた。

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