白樫学園記

nano

文字の大きさ
上 下
109 / 368
5■萌える緑☆恋する季節? SIDE:希(了)

24.そして、朝(了)

しおりを挟む
 目が覚めると、珠希がベッドにいなかった。
「おはよ、希」
 シャワーから珠希が出て来た。
「お、はよう。具合は?」
「もう大丈夫。今日一日のんびりすれば、完治だよ」
 珠希は、いつも通りだ。
 珠希がソファの隣に座ったから、僕は思わず少し離れた。
 珠希は不思議そうな顔をする。
「ほんとに、希が来てくれて助かったよ。ありがと」
 そう言って珠希が手を延ばして来た。いつもと変わらないのに、僕は思わず首をすくめてしまった。珠希が小さく息を付いたのが聞こえた。
「あのさ。もしかして、僕なにかした?」
 えーと、えーと。なんて答えよう。
「やっぱりしたんだ……起きてから見た夢がすごくリアルだったなって思ってて。希、ほんとごめん。熱に浮かされてたとはいえ、勝手なことした」
 そうやって謝る珠希は本当に申し訳なさそうだった。
「珠希、いいよ。びっくりしたけど。あの、それに。僕もいいことあったし」
「いいこと?」
「うん。いっぱい好きって言ってもらえた」
 そう言って笑うと、珠希はくしゃくしゃの笑顔にして、僕に抱き着いて来た。
「希い、ほんっとごめん。ありがと、大好き」
 いつかは、ああいうことになってもいいけど。今はまだ、こういうぎゅって抱き締めてもらう方が好きだな。


しおりを挟む

処理中です...