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13■艶めく初秋☆夕焼けロマネスク SIDE:希(了)
2.感動の再会?
しおりを挟むチャイムが鳴って、僕は急いでドアを開けた。
「おかえりなさいっ」
そう言って珠希の胸に勢い良く飛びつく。
「ああ、ただいま」
そう言いながらしっかり抱き締めて、珠希がくすくす笑う。
ああ、離れたくないよ。
僕は珠希の胸に鼻を擦り付けて、懐かしい匂いを嗅いでいた。珠希はいっつもいい匂いがする。
「のぞみ」
背中をかがめた珠希が耳もとで甘く囁いて、僕のほっぺにキスをする。
「おかえりなさい」
「うん」
僕は我慢できなくって、珠希の唇の端にキスをした。
僕のおねだりに気付いて、珠希はすぐに唇を重ねてくれる。
2週間ぶりのキス。
だから、前よりもずっと特別に感じる。
ああ、気持ちいい…。
「ん…あ」
「希、なんかまたエッチになった?」
目を開くと、火照った顔で僕を覗き込む珠希と目が合った。
珠希だって、すごくエッチに見える。
「部屋、こない?」
珠希の魅惑的なお誘い。
行きたい。
もちろん今すぐに。
でも……
「おーいおふたりさん。発情してないで、こっち来て手伝って」
のんびりとした空也先輩の声が背中に突き刺さって、僕はびくっとした。
ちょ、ちょっと忘れてた。
ふたりが部屋にいることも、アユの宿題のことも。
「あれ? 空也いたんだ?」
「ああ。いたよ。お前が入って来たのも見えてたし」
「あはは。だって、2週間ぶりだったからね。感動の再会だよ、ね? 希」
珠希は平気そうだけど。
僕は恥ずかしくて、しゅーしゅーと頭から湯気を出していた。
「あ、珠希おかえりー。ね、一緒にこれ塗ってくれる?」
アユは必死でプリントに答を書き込んで伏せていたから、僕らのキスは見ていなかったらしい。
そう分かって少しだけ恥ずかしさは紛れた。
「感動って。たったの2週間だろ?」
空也先輩は不思議そうな顔で珠希に聞く。
たったの、じゃないよ。
2週間も、だよ。
僕がそう言おうと口を開いた時、珠希が先に言った。
「じゃあ。想像してみて。明日から2週間。歩くんと会えないんだ」
「……」
空也先輩は少し黙っていた。
アユは相変わらず呻いたり、ため息をこぼしたりしながら、プリントと格闘している。
そのアユの頭に空也先輩は突然手をのばして、髪の毛をわしゃわしゃとかき回し始めた。
「…ああ、なんかわかった」
「ね?」
そう言って珠希は微笑んだ。
***
僕と珠希にはさすがにアユの筆跡なんて真似できないから、僕らは色塗りやグラフを描くような宿題を手伝った。
気がつくともう真夜中を回っていて、僕はくり返しあくびをしていた。
「よし、できたよ。次は?」
珠希が最後のグラフを赤い色鉛筆で塗って言った。
「あ、それで終わり。あとはもう答え写していくのしかないから。ありがと、珠希。ノンも。もう遅いし、ふたりとも寝て……ください」
いつになくしょげて、かしこまったアユがそう言う。
泣きたい気分なのか、疲れ目なのか。アユの目はうさぎみたいに真っ赤に充血していた。
「どういたしまして。じゃあ、僕は部屋に帰るね」
「おやすみ、希」
珠希は僕の髪をくしゃっとやって、立ち上がった。
ああ、もうかえっちゃうんだ。
今日は、もっと一緒に……。
そう思ったけど、なんて言って引き止めていいのか分からず、その上あくびまで出てくるし。
「ほら、早くベッドに入って。また明日ね」
ドアまで見送りに行った僕を振り返って、珠希は微笑んだ。
僕は素直に頷くと、アユと空也先輩におやすみを言って、自分のベッドに入った。
目を瞑ると一瞬で眠ってしまった。
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