白樫学園記

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14■艶めく初秋☆夕焼けロマネスク SIDE:歩(了)

30.仲直り?(了)

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 ガラッ

「な、なんだよ!お前」
「あ、コイツ、紫堂といつも一緒にいる奴じゃん」
 考えるより先に、身体が勝手に動いて、教室のドアを開けて会話の主を睨みつけていた。
「空也は、苦労も何も知らないわけじゃない。睡眠時間削ってまで、色んな仕事やってるんだよ! 陰でグチグチ言ってるような奴に、空也を悪く言う資格なんてない! 」
「はぁ? 何コイツ」
「かわいいねー僕。お兄さん達と遊ぼうか」

「触るな! 」
 その生徒が手を伸ばしてきて、オレに触れる寸前、後ろから声が響いた。
「お相手は、僕がしてあげるよ」
 二人の生徒と、オレがドアの方に目を向けると、にっこり笑ってうで組している春日さんが立っていた。

 あ、そうだ、一緒にいたんだった。

「それと、オレ」
 やっぱりもう空也は助けてくれないんだって思っていたら、今度は春日さんの後ろから、空也が現われた。
「やりまくってる、って噂、ほんとだよ。でも、美形限定」
「うわ、紫堂に春日…! 」
 二人は驚いてオレを押しのけ、反対側のドアから逃げて行った。
「大丈夫か」
 押しのけられた反動でしりもちをついたオレを、空也が抱き上げた。
「…空也、聞いてたの? 」
「…聞いてた。ていうか、つけてた。優哉が歩を学園長室から連れ出すのを見届ける為に」
「かっこわる」
 ぷっと春日さんが噴出して、空也の肩に手をおいた。
「うるさい、メシだ、メシ! 歩、腹減っただろ」
「…うん」

 空也に抱き上げられて、これって仲直りなのかな? と疑問に思いながら、食堂へと向かった。

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