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7.喧嘩の理由
しおりを挟む「僕が、髪の毛切ろうかなって言ったら、ヒロがだめって言って」
は?
「それで?」
「それで、喧嘩になった。お互い感情的になったから、僕も思ってもないこと言ったし、たぶん向こうも」
俺はあまりにもくだらない理由に目を見張った。意味わかんね。
これも、俺の恋愛経験が少ないせいなのか?
「ミノ、ごめん。俺わかんない。なんでそれで喧嘩になるわけ?」
ミノは俺を見上げる。まだつらそうな顔だ。
俺はその頬に手を添えると、髪の毛をかきあげた。ミノの髪の毛は猫っ毛で、今はアゴまで延ばしてゆるくパーマをかけている。
「ミノなら、短いのも長いのも、似合うと思うよ」
俺が正直にそう言うと、ミノの表情がまた崩れて、泣き出してしまった。
俺、またなんか間違った?? そう思って焦る。
「ジュンだけだ、そういうふに言うの、みんな、ちがう、」
そう言いながらミノはしゃくりあげる。俺はおろおろしてしまう。それに、ミノが言っているのがいい意味なのか悪い意味なのかも分からない。
「ごめん、俺、」
そう言うと俺はミノを抱き寄せた。ミノはあっさりと俺の胸に納まる。背中を撫でると、ミノは肩で息をしながら、なんとか呼吸を整えた。
「ちがうの、ありがとジュン。ヒロは、僕の見た目が好きだから。もっともっと女の子みたいにかわいい子が好きで。それ僕分かってたんだけど、信じたくなくて。だから髪切るって言って試した…そしたらやっぱりダメって言われて。悲しくなって」
ミノは俺の腕の中で、くぐもった声で言う。
「ん」
俺はゆるくミノの背中を撫でて、先を促すように頷いた。必死で冷静さを保とうとしながら。
そうしないと、今すぐにあいつの元に行って殴り倒してしまいそうだった。
「僕夏になってから、また少し背が伸びて。それに気付いた時も、ヒロ嫌そうだった。ジュンと話しても怒るし、僕にだめなとこがいっぱいあるって。僕が悪いんだって、分かってるんだけど、」
そこでまたミノは大きく息をつく。
悪い? ミノのどこが? 背が伸びたからか?
俺はぎゅっと力をこめて、ミノを抱き締めた。
ミノは小さい頃から大人たちの中で育った。忙しい両親は少しでも一緒にいる為、ミノを大人達のパーティーにも連れて行った。俺の両親も同じだった。
人見知りでずっと部屋の隅にいる俺とは対照的に、ミノは大人にちやほやされていた。それでも、大人達が仕事の話で盛り上がってしまうと、蚊屋の外で。
わがままを言えば次から連れて行ってもらえないことは承知していたから、ミノはいつも我慢していた。
そして大人達に気に入られる術を身につけた。
ミノの振る舞いを、媚びだとか誘惑だとか、そういうふうに受け取る奴もいる。
でも俺は知ってる。ミノにそんな邪心はない。ただいつも、好きな奴と一緒にいたい。
そう一生懸命なだけなんだ。
「ミノ。ミノは悪くないよ」
「でも、ヒロは悪いって言う、だから僕、」
「違うっ、あいつはなんも分かってない、ミノは絶対悪くないから。だから泣くなよ」
ミノが俺を見上げる。新たに溢れた涙を俺は指先で拭った。
もう限界だ。嘘、つけない。
「ミノ、ごめん。俺もう我慢できない。だから、正直に言う」
俺はミノに回していた腕をだらんと下げてそう言った。
「ジュン?」
ミノは不思議そうな顔で俺を見ている。
「ミノ。ずっとずっと昔から好きだった。これは、友情じゃないと思う。ミノは俺の一番の親友だけど。でも、俺はずっとミノのこと見てきた。ずっと好きで。でも、こんなこと言ったらもうミノと一緒にいられなくなるって分かってたから……黙ってた。ミノがいつも笑っててくれれば、それでいいと思ってた……けどッ、あいつと付き合ってもミノ泣いてばっかでッ、だからッ」
俺はいいながら、自分の中で蠢いている獰猛な獣みたいな感情に支配されそうになっていた。
その激しい感情に咽が詰まる。
憎い、あいつが。ミノをこんなに傷つけて。
同時に、本音を口にしてしまった今、ミノとの関係が崩れたっていう恐怖が迫って来た。
それに、どんなに最低だとしてもミノが好きなのは俺じゃなくってあいつなんだ。
胸がぐりぐりと痛む。
「うっ」
ぼたっと雫が落ちた。慌てて下を向く。
やばい、こんなはずじゃなかった。
そう思っても、後から後から雫が落ちる。
「え、ジュン、なんで泣くのっ?」
驚いたミノの声。今まで一度もミノに涙を見せたことはなかった。
俺はひざを引き寄せて腕に顔を埋めた。
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