ただきみ想う【白樫学園記番外編1】(了)

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19.知らなさすぎ

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 ようやく目を開くと、飛び込んで来たのは、不安げに眉をひそめるミノの顔だった。
「ジュンが嫌なら、もう僕触れない……だから、僕から離れて行かないで」
 え?
 ミノが言ってる意味が分らない。
 ただ……。
 ああ、ミノ、泣く。
 そう思った瞬間、勝手に腕が出ていて。
 ミノをかき抱くように抱き締めていた。
 それでも、ミノはしゃくりあげるように泣き出してしまった。
 離れたり、出来る訳がないのに。何言ってんだ?
「意味わかんねえ。ミノ、俺がミノから離れたりできるかよ」
 俺がミノの背中をぽんぽん叩くと、ミノは少し落ち着いたようだ。と思った。
 次の瞬間。
 いきなりぐっと腕に力を込めると、俺と距離をとる。
「ミノ?」
「違う。ジュンが言うのは、初等部の頃から変わらない、同じ意味での大好き、だよね? それって、絶対違うっ」
 ミノはまたわけの分からないことを言う。
 たしかに、俺は初等部の頃からずっとずっとミノのことが好きだ。
 それに、間違いなんてないし、違うって、好きの他のバージョンがあるってことかよ?
 やばい。
 本気で意味が分からない。
 俺は頭を抱えたい気持ちになった。
「ジュンは、知らなさすぎる」
 ミノはまだ震えてる声でそう言った。
 そうだ。俺は恋愛のことなんて、なんにも知らない。
 そのことは自覚があるのに、ミノに言われると、まるで身を切られるように痛かった。
 そうだ。
 だから、ミノの痛みも理解してやれないし、ミノが一体どうしてほしいのかも、それどころかミノが今言ってることすら理解できない。
 その事実にただ愕然とするしかなかった。
「ずっと、ジュンだけはだめだって、言い聞かせて来たのに、だから、ずっと一緒にいれたのに。なのに」
 ミノは俺を責めるように言う。
「ごめん」
 やっぱり、俺が告白なんかしなければ、ミノにこんな顔させることもなかったのに。
「もう……いいよ、ミノ。悪かったな。悩ませて。俺が言ったことは、気にしなくていいから」
「そんなの無理っ、勝手すぎるよ、ジュン。僕がどんな想いで……や、ううん。分かってる。ジュンに僕はふさわしくないから、だから」
 話がどんどんおかしな方向に向かってる。


 一瞬だけ、全部を投げ出したい気持ちになったけど、顔をくしゃくしゃにして泣いてるミノを放って出て行ったりできないし。
 それにミノが言ってることが分からないままだなんて、嫌だった。
 なんとかしてミノのことを少しでも理解したい。
 だから、俺は正直になるしかなかった。
「ミノが言ってること理解したいのに。分かんねえ。すげえ情けない」
 俺は正直にそう言って、うなだれるしかなかった。ミノはなにも言わない。呆れてるんだろう。
 だから俺は勝手に独りで下を向いて喋り始める。
「初めて会った時から、ずっと好きだった……けど、ミノといると、ときどき友だちみたいに振る舞うのがすげーつらくて。いつからか、俺はミノのこと触りたいとか、そういうふうに見るようになってて。けど、自分がミノの対象になんてならないって分かってたから、嫌われるくらいなら、なんも言わないほうがいいってそう思ってて。だから、俺はただ遠くからいつもミノの恋を見てることしかできなくて、」
「……ジュン」
 俺が顔をあげると、突然ミノが俺のTシャツの胸ぐらを掴んで、勢い良く唇を合わせて来た。
 俺は完全に面喰らってされるがままだった。
 それは一瞬だったけど、ミノの柔らかくて、少しかさっと乾いた唇の感触が、確かにあった。
「ミ、ノ? なにして」
「こういうこと、されて嫌じゃないの?」
 ミノは眉根を寄せて聞く。嫌? とか、ありえないだろ。
「嫌、ってか、むしろ嬉しい」
 そう言いながら、自分の耳が熱くなっていくのを感じていたけど、暗いし見えないだろうと判断して、なんとか落ち着こうとした。
 だって、今、ミノが自分から俺にキスしてきた。
 さっきとは違う意味で、鼓動が速くなる。
「ジュン、僕のこと……好きなの?」
「え? 今さらなにを。この前言っただろ。好きだよ。今も昔も、ずっと好き」
 俺の涙の告白をなんだと思ってんだ。なんか、悲しいを通り越してちょっと腹が立ってきたぞ。
「うそ……」
「いや嘘って、俺があんなに必死で言ったのに本気にされてなかった方が嘘だろって感じだし」
 目を真ん丸にして口をぽかんと開けたままのミノを見てたら、腹が立ってたってことすらどうでも良くなってきた。
 なんだよ、本気で俺相手にされてなかったんだなー。あーあ、なんかもうどうでもよくなってきた。

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