コンビニダンジョンの歩き方

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プロローグ

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 俺は暗い洞窟を歩きながら、いちごミルクで喉を潤す。紙パックでピンクのカラーリングを施された飲み物だ。

 腰に手を添え、一気に飲み干すとゴミ箱に投げ捨てる。いつでも戦えるように、黒剣を構えた。


 なぜなら洞窟でもダンジョンだからだ。いちごミルクも武器召喚もコンビニで手に入れたしな。

『なにこいつ!? なんなのこいつ!?』



 右手に担いだ剣で肩を叩いていると、女性の声が響き渡る。その後に、バランスを崩すほど地面が揺れる。

 コンビニに俺より先に来た奴がいるのか?


 獲物を先に取られるわけにはいかない。俺はその一心で、枝分かれした道を走って進み始める。

 声は思った通りの方向で、視界にコンビニの自動ドアがチラリと映る。青と白のシマシマが有名なイーソンだった。

「こ、こないで……ぁあ!」


 自動ドアを潜った瞬間、コンビニの冷房機器に体を癒さる。耳に残る音が辺りに響いた。


 ピロロロロ……ン。


 特徴的なリズムがまた素晴らしい……じゃなかった。走った勢いを維持して目の前のゴブリンに蹴りを繰り出す!

「邪魔だ!」

「ケギャァア!?」

 青と白のシマシマ制服を纏ったゴブリンは、真っ直ぐ吹き飛んで行く。そのままおにぎりの棚に全身を打ち、粒子に変化していった。

「ここに女は……」


 辺りを見回すと、コンビニによくあるプリンターに体育座りをする女性が居た。

 他にもっと隠れる場所あっただろ……。


「お前だれ?」

「普通の人です! ローソンだと思って入ったらこうなってて」

 女性はプリンターから華麗に飛び降りる。

「ローソン? ここはイーソンなんだが」

 イーソンで手に入るアイテムは異世界の物だと聞いたことがある。おにぎりとか緑茶はそんなに価値がない、沢山あるからな。

「えっ? ここローソ」

「後ろに気をつけろ」

 棚から突然現れたゴブリンを、反撃する様に剣で突き殺す。女性の背後で粒子に変わり果てた。

「こ、こわいよ……なにこのローソンの制服来た奴……」

「強さはバイト並くらいだ、気にすんな。もっと強いコンビニもある」

 ゴブリンが落としたパックのおにぎりを拾い、女性に投げ渡す。銀髪でポニーテールとか戦闘のことは考えてない衣装だな、信頼出来無くもない。


 弱そうだし。


「食っとけ」

『殺そうとしてきた相手の食べ物なんて、食えるわけないでしょ!?』

 おにぎりは秒速で帰ってきた。拾いたては割と美味しいのに。

 パックを開き、1個を口に含むと、どこからともなく誰かさんのお腹が鳴った。

「や、やっぱり1個ちょうだい……」

「ほら」

 ただのツンデレだった。恥ずかしそうにおにぎりをパクパク食べてる。

「ねえ、名前教えて」

「リュウキだよ」

「私は――」

「ちょっと隠れてろ」


 俺は女性をタックルで飛ばすとお会計の方を見る。明らかにゴブリンとは違う、ムキムキマッチョのニワトリ!!

 両手に斧と槍を持ち、軽々とフローリングの床に傷を付けながら近づいていた。

「何!?」

「お前弱いから死ぬし喋るな」

「お前じゃないもん! カラスだもん!」

 ニワトリのサイズは、加熱器具に鎮座しているからあげクンサイズ。


『ちっさ!?』


「いや、攻撃が当たりにくい。イーソンで一番強い……店長代理だ」

「代理なのに一番強いんだ……」

 カラスは呆れた顔で俺を見ていたが、弱いわけじゃない。ゴブリンとか多分バイトだから弱いだけ、正規雇用になれば強くなる。



『レシートが欲しくば、この戦いに勝って見せろ』



 ドスの効いたニワトリの声は、ボス感を演出するのに十分だ。




『当然だろ? 邪魔をするならその命、貰おうか』



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