1 / 1
プロローグ
しおりを挟む俺は暗い洞窟を歩きながら、いちごミルクで喉を潤す。紙パックでピンクのカラーリングを施された飲み物だ。
腰に手を添え、一気に飲み干すとゴミ箱に投げ捨てる。いつでも戦えるように、黒剣を構えた。
なぜなら洞窟でもダンジョンだからだ。いちごミルクも武器召喚もコンビニで手に入れたしな。
『なにこいつ!? なんなのこいつ!?』
右手に担いだ剣で肩を叩いていると、女性の声が響き渡る。その後に、バランスを崩すほど地面が揺れる。
コンビニに俺より先に来た奴がいるのか?
獲物を先に取られるわけにはいかない。俺はその一心で、枝分かれした道を走って進み始める。
声は思った通りの方向で、視界にコンビニの自動ドアがチラリと映る。青と白のシマシマが有名なイーソンだった。
「こ、こないで……ぁあ!」
自動ドアを潜った瞬間、コンビニの冷房機器に体を癒さる。耳に残る音が辺りに響いた。
ピロロロロ……ン。
特徴的なリズムがまた素晴らしい……じゃなかった。走った勢いを維持して目の前のゴブリンに蹴りを繰り出す!
「邪魔だ!」
「ケギャァア!?」
青と白のシマシマ制服を纏ったゴブリンは、真っ直ぐ吹き飛んで行く。そのままおにぎりの棚に全身を打ち、粒子に変化していった。
「ここに女は……」
辺りを見回すと、コンビニによくあるプリンターに体育座りをする女性が居た。
他にもっと隠れる場所あっただろ……。
「お前だれ?」
「普通の人です! ローソンだと思って入ったらこうなってて」
女性はプリンターから華麗に飛び降りる。
「ローソン? ここはイーソンなんだが」
イーソンで手に入るアイテムは異世界の物だと聞いたことがある。おにぎりとか緑茶はそんなに価値がない、沢山あるからな。
「えっ? ここローソ」
「後ろに気をつけろ」
棚から突然現れたゴブリンを、反撃する様に剣で突き殺す。女性の背後で粒子に変わり果てた。
「こ、こわいよ……なにこのローソンの制服来た奴……」
「強さはバイト並くらいだ、気にすんな。もっと強いコンビニもある」
ゴブリンが落としたパックのおにぎりを拾い、女性に投げ渡す。銀髪でポニーテールとか戦闘のことは考えてない衣装だな、信頼出来無くもない。
弱そうだし。
「食っとけ」
『殺そうとしてきた相手の食べ物なんて、食えるわけないでしょ!?』
おにぎりは秒速で帰ってきた。拾いたては割と美味しいのに。
パックを開き、1個を口に含むと、どこからともなく誰かさんのお腹が鳴った。
「や、やっぱり1個ちょうだい……」
「ほら」
ただのツンデレだった。恥ずかしそうにおにぎりをパクパク食べてる。
「ねえ、名前教えて」
「リュウキだよ」
「私は――」
「ちょっと隠れてろ」
俺は女性をタックルで飛ばすとお会計の方を見る。明らかにゴブリンとは違う、ムキムキマッチョのニワトリ!!
両手に斧と槍を持ち、軽々とフローリングの床に傷を付けながら近づいていた。
「何!?」
「お前弱いから死ぬし喋るな」
「お前じゃないもん! カラスだもん!」
ニワトリのサイズは、加熱器具に鎮座しているからあげクンサイズ。
『ちっさ!?』
「いや、攻撃が当たりにくい。イーソンで一番強い……店長代理だ」
「代理なのに一番強いんだ……」
カラスは呆れた顔で俺を見ていたが、弱いわけじゃない。ゴブリンとか多分バイトだから弱いだけ、正規雇用になれば強くなる。
『レシートが欲しくば、この戦いに勝って見せろ』
ドスの効いたニワトリの声は、ボス感を演出するのに十分だ。
『当然だろ? 邪魔をするならその命、貰おうか』
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる