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第26話 摩擦ロード

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 リュウキとガロードが同時に戦場を駆ける。

 それをさせまいと二人に飛ぶ魔法。

 咄嗟に金髪の子が無効化し、二人は別れてヘイトを散らす。

 リュウキに距離を詰められた男が後ずさりながら魔法を手から発射する。

『くっくるな……!』

 走りながら魔法を切り裂き、容易く距離を詰める。

 素早く男を貫くと剣を引き抜いて見向きもせず次の目標を狙う。

「ひっ」

 一番近くにいた女性と目が合う。


『よそ見してる場合か?』


 横から飛び出したガロードが女性をすれ違いざまに斬り伏せる。

「これで二人目、お前は?」

「……一体だよ」

「ははっ」

 ガロードはその辺の土を握って別の敵を狙う。

 火の玉に土をぶつけて、武器を振り回しながら近寄っていく。

「楽にしてやるよ……」

 不意に横から魔法が現れる。大きな水の玉がガロードを付け狙っていた。

『あぶねえ!』

 リュウキは素早く腰の剣を抜き、水玉に向けて投げる。

「発動しろ……!」


 その瞬間、剣が緑色のオーラを纏って加速する。


 それは風の魔法。剣が水玉を横切ると突風が巻き起こった。


 一時的な風圧が水玉を押し返す。


「返ってきやがった!?」

 発動主に戻っていく水玉が触れたモノ全てを飲み込む。

「うわぁあ!」

 弾けた玉に男はもう居なかった。

 その間にガロードが武器を投げてトドメを刺す。

「これで三人」

「二人……いや、一人居る!」

 最後の一人を見つけるが、既に攻撃を受けていた。

「えい! えーい!」

「やめ、やめてくれ……!」

 リュウキはすぐに金髪ちゃんの魔法だと理解する。


 火攻めされた相手が苦しそうに消えていく。


「やった!」

「さすが金髪ちゃん!」

 タワーの元に合流して喜びを分かち合う。

「……いや、まだ終わってないよな」

 勝った気になっているが、戦いはまだ続いている。

「タワーで潰せばいい」

 仲間の案に、リュウキとガロード以外が魔力を込めてタワーを動かす。

 素早く溜まっていくタワーが電撃を発射していく。

 何度も、何度も。

「もう魔力が……」

「こっちも」

 しばらくして全員の魔力が枯渇しかける。

「もう限界~」

 最後まで魔力を注ぎ続ける金髪の子。

「なんで終わらないんだ」


『あ、あれ!』


 仲間が指をさす。その方向には二人の姿が見えた。

「やっぱりか」

 リュウキにとって見覚えがある二人。

 スカーとカロンだった。

「あいつが仲間をやったんだ……!」

 タワーが見計らったように青く光る。

「これが最後の魔力!」

 スカーに閃光が降り注がれる。

 本人はそれに対して慌てることはない。

 手を空に向け、閃光を受け止めた。

「どういうことなの……!」


 そのまま指をタワーの元に向ける。


 その瞬間、バリバリと音を立てる電撃が仲間を襲う。


「ぎゃああ!」

「いやあ!」

 悲鳴と共にそれぞれが粒子となって消えていく。

 リュウキの仲間はガロードと金髪しか居なくなった。


『女は排除しなきゃ』


 スカーは向こうには聞こえないように呟き、手をかざして金髪の子を爆破する。

「きゃあ」

「金髪ちゃん!」

 爆風をまともに受けた金髪の子がフラつく。

 倒れそうになったところをリュウキが受け止める。

「大丈夫か!」

「がんばってね……」

 ゆっくり目を閉じると粒子となって消えていく。

「金髪ちゃんだけ狙ったのか!」

「そうみたいだな」

 負けたくない戦いに腰の剣を一本抜く。

「俺は白いヤツをやる」

「了解」

 ガロードはカロンを。リュウキはスカーを。

 それぞれが別れて走り出す。

 距離を詰める最中でガロードは二本の剣をクリエイトした。

 二人の接近をスカーが魔法で妨害する。

 空から振る火球。立ち塞がる竜巻。


 リュウキは剣に込められた魔力に火をつけて投げ、竜巻を無効化する。


 新しい剣を抜いて距離を詰める。

 縦に振り下ろした一閃はスカーが吹き飛ぶ形で外れる。

 中に浮いたスカーが切り揉み回転しながら地に足を付ける。

「その程度か?」

「なんだよそれ!」

 むちゃくちゃに放たれる斬撃が簡単に避けられる。

 浮いている間に追撃しても、それすら魔法で距離を取られてしまう。

「くそっ!」

「ふふー」



 その間にガロードはカロンとの戦いにケリをつけようとしていた。

「やりますね」

「化け物が」

 カロンとガロードの間に敷かれた暴風の壁。

 カロンが放つ魔法だけを通し、人間を進行させない究極の時間稼ぎ。

「もう終わらせる」


 ガロードは、二本の土の剣を地面に擦りつけながら疾走する。
 

 地面を裂いていく剣が火花を散らす。


「不可能ですよ」

 カロンの魔法を避けながら、ひたすらフィールドを駆け抜ける。


 その過程で強烈な摩擦熱を纏って赤くなる土の刃。


 振り上げて二本の剣を片手で握る。


『クリエイト』


 強く振り抜くと剣は炎を纏う大剣に変化する。


 そのまま暴風の前で強烈に斬り上げ、火炎の竜巻を前方に放つ。振り上げた大剣の勢いが背後の地面を叩いた。


「えぇっ!」

 本来なら近寄れない空間に容易く侵入していく火の渦。

 危険空間を切り裂き、ガロードが通れる道を形成する。

 ガロードは大剣を担いで竜巻に突っ込む。


 燃えながらカロンの前に着地する。


「吹き飛びなさい!」

 焦ったカロンが手を払って風を起こす。

 吹き飛ばされそうになったガロードは強引に炎の大剣を振り倒す。


 ブオンブオンと風を切り裂く熱が次第にカロンの汗を誘う。


「くっ……!」

「諦めろ」

 そう言って火を散らし切ると大剣を地面に叩き付ける。

 その瞬間、カロンが微かに振動でよろける。

 魔法の隙間を逃さなかったガロードは大剣を手放し、地面を蹴った。

 懐に潜り込んでカロンを掴むと地面に叩き付ける。

『かはっ……!』

 砂が舞うほどの衝撃にカロンが気を失い、粒子となって消えていく。

『……ギブ』

 限界を超えた動きを繰り返したガロードも粒子を見届けて力なく倒れた。





 リュウキも背中の剣を抜いて最後の賭けに出る。

 避けられて攻撃しての繰り返しでは自分が疲れて負ける事に気づいたのだ。

「無駄だよ」

 距離を詰めて大きく横に薙ぎ払う。その間に風のオーラを剣に纏わせて風を巻き起こす。

 スカーは回避行動を取るが、リュウキの影響で思うような動きにならない。

 その隙に叩き斬ろうと一歩前に出る。


 カチカチ。


 その瞬間、リュウキの足が凍り付く。

 斬撃は届かずに終わってしまう。

「くっ……」

 綺麗に着地し直したスカーがゆっくり歩み寄る。

「凍れ凍れ」

 足の氷は次第に伸びて行き、肩まで侵食するとピタリと止む。

「な、なにをするつもりだ」

「どうすると思う?」

 スカーは白い冷気を吐きながら微笑んだ。

「……」

 どうすれば勝てるのかリュウキは考えた。魔法が使えない時点で勝算はないという結論が出る。


『えへへ』


「や、やめろ!」

 スカーが無理やり、リュウキに唇を重ねる。


『ん、んんっ……』

 舌を差し込んで、強引に口内に侵入する。



 そのまま息を鼻から吸うと。



 大量の冷気をリュウキの口内に吐き出した。









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