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マネージャーとアイドルと社長

暴露

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 テーマパークデート企画の下見にやってきた。しかし、当の伊永は、ほぼ、上の空で。
「伊永、お前大丈夫か?悩みあるなら聞くぞ?」
「佐藤さん、俺、やばいかもしれへん」
「何が?」
「めっちゃ最低なことしたし、自制できひんくなるとこやった」
「ん?あれ?神崎のこと?」
「はい。ほんまに、めちゃくちゃにするところでした」
「えー、意外、二人っきりにしたのが効果的だったってことか」
 おっと、効果的は言っちゃダメなやつだよな。まあ、もう言っちゃったけど。
「あの後、結構大変やって、先生に煽られすぎて」
「ほう、何を思った?」
「先生の」
「先生の?」
これから、多分、やばめな発言を、この王子の口から聞けると思うと、俺の方がドキドキしてしまう。
「あの白い肌に、触れたいなって、俺だけが全部見たいなって、俺のって印つけられないかなとか」
「んで?触れた?」
「ちょっとだけ」
「え?どこ?」
「手とか、あ、あと、唇?」
「え?」
 思っていたより衝撃的な部位が出てきて驚いた。
「初めてあげちゃいました」
「うわ、まじか、結構進んでた」
予想より遥か向こう側へと進む事態に本気で驚いた。でも、衝撃は、これだけでは終わらない。
「その流れで、本番の約束しました」
「お?てことは、胸くらい触った?」
「む、さ、触れるわけないやん!」
「は?」
 は?とか思ったけど、可愛い反応やな。
「抱きしめた時に当たったくらいのもんやん、てか、そんな風な目で見らんとって」
当たったんだ。とか思うと、ニヤけてしまう。いや、それでも、現実は甘くねえべ。
「いや、待て、本番って触るんやで?」
「知ってますよ」
「え、どうするん?」
「今は、触れん気してるんやけど、蘇雨先生前にしたら、止まれんくなるんやもん」
「まじ?」
「だって、俺、あの時、大人のキスなんてするつもりなかったもん」
「えっ?」
 また、俺の想像を超えてきた。いや、キスって軽いやつじゃないんかい!全然、ついていけねえ。
「なんか、先生が可愛すぎて、全て欲しくなって、ずるい手使って、先生をその気にさせて。そんで、キスして、煽られて、舌が絡み合う時、先生の目が、顔が、可愛くて、息が上がって余裕無いのが、俺の理性飛ばしちゃって。でも、呼ばれたら、間違ったかもって思って、我に返って、その癖、俺の印つけたくなって、強引に俺のピアスつけました」
いや、相変わらず、ぶっ飛んでんなあ。
 神崎は、何したんだ。気になる。でも、神崎も、伊永の要求を呑んだということは、何かしら、あいつにもメリットがあるってことか。
 さては、描くことにしたのか?いや、待て。それよりも、色々気になる。ずるい手を使って、先生をその気にさせたって、どういう意味だろうか。
「なあ、伊永、ずるい手って?」
「同情してもらおうかなとか、初めてだけあげたいって。嘘をつきました。ほんまは、先生だけがええのに、先生は納得せえへんやろなって思ったら、どうしても、初めてだけでも先生がええからって言ってた」
「神崎は?」
「同情なんかしてやらんって言ってました。ただ、墓場まで事実持って行こうって。俺だけ悪者になるのは嫌だって。もし、そうするなら、初めては貰えないって」
「やっぱり」
「え?」
あいつも、伊永を利用しようとしているのだろう。本当に描くことにしたみたいだ。
「よし、お前は目の前の仕事頑張って、神崎に初めて捧げて、神崎の漫画原作ドラマの出演も掻っ攫って、全部叶えようぜ。お前の夢」
「はい」
笑う伊永に、俺は、何がしてあげられるだろうか。
 この笑顔を守るために、本来なら、止めないといけないだろう。でも、止めて何になる?お互いの妨げにしかならない。どちらにも生産性があるのだから、ウィンウィンではないだろうか。そう思う時点で、やっぱ、俺は、だめだめなんだろうな。
 とりあえず、伊永、実写化に売り込んでこようかな。あとのメンバーも、それぞれに合った仕事を決めてこよう。
「テーマパークデート企画、お前どうするつもり?」
「どうしましょうかね」
「まあ、ポップコーンとか買って、アトラクション乗れば問題ねえだろ」
「被り物とか?」
「ん。何とか乗り切るしかねえよ」
「頑張ります」
「おう」
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