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マネージャーとアイドルと社長

嫉妬と安堵

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「神崎、嵐みたいだったな」
「ほんまっすよ、にしても、可愛かったなあ。佐藤さん、何で、可愛いって教えてくれんかったん?」
「チャラい、軽い、不誠実。三拍子揃った、お前に見せたくなかったからでーす」
「うわ、ひど」
 このやりとりの中、伊永は、黙っている。
「そういえばー、白鳥、何言われて何言ったの?」
「それはー、教えられへん!内緒やで」
「あとで、神崎に聞くか?な、伊永」
「え?あー、はい」
「聞いてなかったろ?」
「すんません」
相変わらず、素直なやつ。そういうとこ、可愛いけど利用されそうで怖い。
「大丈夫だよ、白鳥の言う可愛いなんて、他の人のおはようとかと変わんねえから」
「蘇雨先生のかっこいいは、それとは違うでしょ」
「ふは、お前、ほんっとに可愛いな」
「笑ってる場合ちゃうし」
「安心しろよ、お前特別だろうし」
そう言ってピアスを見る。
 その俺の視線に気づいて、微笑んだ。
「伊永、神崎先生ってええ人やね」
「ん。まあ」
「大丈夫やって、俺、童顔は範囲外やねん」
「お前、まじで、黙っとって」
「だって、童顔、燃えんやん?」
問題発言。爆弾投下。ほんっとに困ったやつだな白鳥。
「燃えるわ」
意外にも普通に答えた伊永。
 珍しい回答に、白鳥も驚いている。
「え?燃えるん?」
「あー、もう、燃えんのんなら、そんなに考えんとって」
「伊永って、結構独占欲やな」
「うっさいわ」
「そっちのがええと思う。同じ人間なんやなあって思うし」
「ずっと同じやわ!」
「何にキレてんねん」
「知らん」
「まあまあ、落ち着いて。伊永は、一瞬でも想像されたのが嫌やんな」
「なるほどな、別に考えたとかやなくて、童顔やったから、そう思ったってだけやで?」
「もうええ」
そんなやりとりに笑って玄関を出る。
 外に出たところで、神崎を見つけた。
「神崎」
「お、佐藤」
「さっきは、ありがとな」
「んーん、白鳥くん、怒られてた?」
「ギリセーフって感じやったで」
「そっか」
「白鳥、何言われて、何言ったの?」
「ん?聞いてないんか?」
「秘密だってよ」
「まあ、本人が言わないことは言えない主義だから、私」
神崎らしい理由が聞けて、安心した。その瞬間、山田が運転する車が到着。
「じゃ、帰るから、またね」
「あ、また連絡する」
「ん。しゅ、伊永くん、白鳥くんもまたね」
「はい、蘇雨先生、また」
「んじゃ、神崎先生!」
 神崎が車に乗り込み帰って行く。さっき絶対、駿くんって言おうとしたな。伊永の瞳から、熱が溢れて、好きがバレバレ。こういうのも、神崎にかかれば、キャラに投影されて描かれるのだろう。
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