25 / 34
マネージャーとアイドルと社長
現れたネズミ
しおりを挟む
しかし、それは、突如として現れたネズミの被り物と女によって阻止された。
「ちょっと、このクソガキなんとかしなさいよ!」
「うるさい、白鳥くんに謝れ」
あれ?神崎は、白鳥と伊永が迎えに行ったはずでは?
「何事だね」
「社長、どうなってんのよ、ここの治安は!」
その瞬間、俺の位置からは見えた。神崎が開けっぱなしにしたドアの外に白鳥と伊永が到着したのが。
「ネズミ駆除くらいしなさいよ」
「馬鹿にすんな、何も知らない奴が、知らねえとこから口出しすんな」
その言葉に、白鳥が、ハッとしたような顔をする。
「はあ?あんたこそ何様なのよ」
「何様でもないし、様目線で話してない。ただ、知らない奴は勝手に知った風な口聞いて、知ったように表面だけなぞるのが好きだなって思っただけだ」
段々とヒートアップしていく二人。
「何よ、被り物つけて偉そうに。顔見えないからって良い気になってんじゃないわよ。どうせ見せられるだけの顔じゃないんでしょ」
その言葉に三人、動きそうになった。ただ、今じゃないことが分かったから、俺も、山田も、伊永も動かなかった。
「無かったら、お前と同じ立場で話して良いのか?」
「私の前で外す自信があるならね」
神崎の手が、被り物に伸びる。
「それ以上、言ったら怒りますよ、これ以上の侮辱は、俺が許さへん」
我慢できなかった男が一人。ドアの向こうから飛び込んできた。
「伊永くんには、関係無いでしょ!」
「ある、あるに決まってる。社長も黙っとらんと、はよ、何とかしてや」
「社長さあ、その人、神崎先生やで」
伊永と白鳥のダブルパンチに社長の顔が青ざめていく。
「今すぐに、神崎先生から離れて出て行きなさい。それができないなら、今後一切、関わりを断つよ」
女が悔しそうに出て行った。
「すみません、神崎先生とは梅雨知らず」
「別に構わんよ、にしても、あいつ腹立つな」
「え?どういうこと?」
俺は聞かずにはいられなかった。俺の知らない事情を目の前のネズミは知っているということになる。俺の方を一瞬見た後、白鳥の方を見た神崎。
「白鳥くんのテレビ、観てたよ。白鳥くん、かっこよかった」
「ちょ、やめえや、恥ずい」
かっこよかった。その言葉に、明らかに、言葉通り、照れている白鳥。
その隣、慌てる伊永。あいつ、さては、言われたことなかったな。
「社長さん、良い教育されてますね」
ネズミの被り物の向こう側、笑っているような声をしている神崎。
「あ、てか、あれか、被り物、失礼か、外そっか?」
「え?良いんですか?」
「ほら、社長室に着くまでのカモフラージュ的なやつだから」
そう言って今度こそ、被り物を外した。
「うわ、神崎先生、可愛いやん」
その言葉に、白鳥を伺う伊永。きっと、気が気ではない。
「てかさあ、神崎先生、ほんまにありがとう」
「何で?」
「神崎先生が居なかったら、俺、危なかったかも」
「大丈夫だよ、私が居なくても。観てくれた人は、白鳥くんが悪くないこと分かると思うし。これで白鳥くんに何かあったら、きっと社長さんの立場も危ういと思うし。なあ?社長さん」
「え?あー、そうですね」
何とも歯切れの悪い返事の社長を無視して、神崎は話を変えた。
「ところで、社長さん、私のファンなんですか?」
「そうなんです!お会いできて光栄です」
「そっかあ、私も嬉しい。今度、私の作品実写化するってなったら、お願いしたい。ね、山田」
「それは、今後次第でしょ」
「もう、すぐそういうこと言う」
「あ、良ければ、サイン」
「そういうのは、お断りしてて」
山田の言葉を無視して神崎が続ける。
「良いよ、してあげる、お騒がせしちゃったし。お詫びみたいな。あと、一人のタレント切っちゃったし。ごめんね」
「そんなそんな、お気になさらず」
サインを書いて、二人は社長室を出て行く。もちろん、被り物を被って。ついでに、俺たちもお咎めなしで部屋を出た。
「ちょっと、このクソガキなんとかしなさいよ!」
「うるさい、白鳥くんに謝れ」
あれ?神崎は、白鳥と伊永が迎えに行ったはずでは?
「何事だね」
「社長、どうなってんのよ、ここの治安は!」
その瞬間、俺の位置からは見えた。神崎が開けっぱなしにしたドアの外に白鳥と伊永が到着したのが。
「ネズミ駆除くらいしなさいよ」
「馬鹿にすんな、何も知らない奴が、知らねえとこから口出しすんな」
その言葉に、白鳥が、ハッとしたような顔をする。
「はあ?あんたこそ何様なのよ」
「何様でもないし、様目線で話してない。ただ、知らない奴は勝手に知った風な口聞いて、知ったように表面だけなぞるのが好きだなって思っただけだ」
段々とヒートアップしていく二人。
「何よ、被り物つけて偉そうに。顔見えないからって良い気になってんじゃないわよ。どうせ見せられるだけの顔じゃないんでしょ」
その言葉に三人、動きそうになった。ただ、今じゃないことが分かったから、俺も、山田も、伊永も動かなかった。
「無かったら、お前と同じ立場で話して良いのか?」
「私の前で外す自信があるならね」
神崎の手が、被り物に伸びる。
「それ以上、言ったら怒りますよ、これ以上の侮辱は、俺が許さへん」
我慢できなかった男が一人。ドアの向こうから飛び込んできた。
「伊永くんには、関係無いでしょ!」
「ある、あるに決まってる。社長も黙っとらんと、はよ、何とかしてや」
「社長さあ、その人、神崎先生やで」
伊永と白鳥のダブルパンチに社長の顔が青ざめていく。
「今すぐに、神崎先生から離れて出て行きなさい。それができないなら、今後一切、関わりを断つよ」
女が悔しそうに出て行った。
「すみません、神崎先生とは梅雨知らず」
「別に構わんよ、にしても、あいつ腹立つな」
「え?どういうこと?」
俺は聞かずにはいられなかった。俺の知らない事情を目の前のネズミは知っているということになる。俺の方を一瞬見た後、白鳥の方を見た神崎。
「白鳥くんのテレビ、観てたよ。白鳥くん、かっこよかった」
「ちょ、やめえや、恥ずい」
かっこよかった。その言葉に、明らかに、言葉通り、照れている白鳥。
その隣、慌てる伊永。あいつ、さては、言われたことなかったな。
「社長さん、良い教育されてますね」
ネズミの被り物の向こう側、笑っているような声をしている神崎。
「あ、てか、あれか、被り物、失礼か、外そっか?」
「え?良いんですか?」
「ほら、社長室に着くまでのカモフラージュ的なやつだから」
そう言って今度こそ、被り物を外した。
「うわ、神崎先生、可愛いやん」
その言葉に、白鳥を伺う伊永。きっと、気が気ではない。
「てかさあ、神崎先生、ほんまにありがとう」
「何で?」
「神崎先生が居なかったら、俺、危なかったかも」
「大丈夫だよ、私が居なくても。観てくれた人は、白鳥くんが悪くないこと分かると思うし。これで白鳥くんに何かあったら、きっと社長さんの立場も危ういと思うし。なあ?社長さん」
「え?あー、そうですね」
何とも歯切れの悪い返事の社長を無視して、神崎は話を変えた。
「ところで、社長さん、私のファンなんですか?」
「そうなんです!お会いできて光栄です」
「そっかあ、私も嬉しい。今度、私の作品実写化するってなったら、お願いしたい。ね、山田」
「それは、今後次第でしょ」
「もう、すぐそういうこと言う」
「あ、良ければ、サイン」
「そういうのは、お断りしてて」
山田の言葉を無視して神崎が続ける。
「良いよ、してあげる、お騒がせしちゃったし。お詫びみたいな。あと、一人のタレント切っちゃったし。ごめんね」
「そんなそんな、お気になさらず」
サインを書いて、二人は社長室を出て行く。もちろん、被り物を被って。ついでに、俺たちもお咎めなしで部屋を出た。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる