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マネージャーとアイドルと社長

社長室

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 社長室に向かって、すぐさまそのドアを叩く。どうぞの声がして、開けると、白鳥も居た。
「どうしたんすか」
「共演者に向かって、失礼な物言いをしたそうだよ」
「何か理由があるはずでは?」
「共演者の方は、お客様だよ。それなのに、気を悪くさせたりしては、困るんだよ」
「お客様やからって、何言っても良いわけないやろ」
「君は黙ってなさい。佐藤くん、この責任はどう取るつもりだね」
「お言葉ですが、社長。白鳥の今の発言から、察するに、俺は、俺たちは、何かの責任を取る必要があるのでしょうか?」
 社長が怒りで口を開きかけた時、ちょうどドアがノックされた。
「誰かね」
咳払いの後、告げた社長。開いたドアから入ってきたのは、見覚えある人物。
「失礼します、神崎蘇雨の担当編集をしております、山田です」
「おお、お待ちしておりました」
 神崎の名前を聞いた途端、空気が変わった。
「何かトラブルですか?」
「いえいえ、お気になさるようなことではありませんよ」
「そうでしょうか?」
「大丈夫です。それで、神崎先生は?」
「来てはいるんですけど、緊張しているみたいで」
「早くお目にかかりたい、君たち、話は後にするから、とりあえず出て行きなさい」
は?何だと、このジジイ。
「あの」
 誰よりも早く口を開いたのは、伊永だった。危ねえ、伊永が口開いてなかったら暴言口から吐き出すとこだったわ。
「何だね」
「蘇雨先生、緊張してるんなら、俺、呼んできますよ」
「はい?」
「俺たち、番組の企画で会ったことあるし。ね?白鳥」
「お、おう?」
「良いですか?」
「それは、助かります。知り合いが居るとなれば、きっと来るでしょうし」
 そして、二人が出て行く。すぐに、山田が口を開いた。
「神崎さんは、気難しい人で。でも、一度会った人は、大切にしたいと思う人です。さっきの状況を見たら、悲しむと思います。伊永くんは、神崎さんへの想いをまっすぐ届けたファンの一人なので。白鳥くんは、神崎さんの心を軽くした人だと思います。佐藤さんは、あれです。ただの友達でしょうけど」
「失礼だろ」
「ただの友達だって大切ですよ、神崎さんには。だから、あまり怒らないで」
多分、山田の口からはまだセリフが続くはずだった。

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