最も上のもっと上

雛田

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どうか

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 都会を出て、島に帰る日、二人が見送りに来てくれた。
「ねえ、楽さん。ちゃんと、待ってるから来てね。約束。あの人のとこに行ったりしないで」
「約束しますよ。でも、あの人って?」
「あの図書室の人」
「え?姫野さん?」
「あの人、楽さんと距離近いもん。絶対好きじゃん」
「姫野さんとは、何も無いですから」
「のど自慢大会の日、手繋いでた」
やっぱり、あの時、居たんだ。見間違いじゃなかった。
「あれは、姫野さんが勝手に」
「勝手でも嫌だからやめて」
「分かりました。彩さんが嫌がることはしないっす」
「がっくん、大変だなあ。彩が、やきもち焼きだから」
「良いっすよ。嬉しいから」
目の前で、恥ずかしそうに笑う、彩さん。
 初めて見た時から、変わらない。ずっと、憧れで、大切な人。愛おしいって、一周回って、まじで涙出るんだと思う。
「あっつ。熱すぎじゃん」
いろはくんに囃し立てられながら、また笑い合った。
 それから、新幹線に乗って、揺られて、駅に着いて、電車に乗り換えて、船に乗る。夢を追いかける二人と、誰かの背中を押す為に、今、自分が書ける全てを、歌詞に捧げようと思う。
 今まで、書き連ねた歌詞たちを眺めて、机に向かう。出会えて良かった。応援している。その気持ちだけ込めて、歌詞と向かい合う。

ーーー真っ直ぐに正直に君の世界が見たいから。
ド派手なレッド、浮かぶ色彩。
誰よりも味方でいたい。無責任かな。ーーー


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