憧れの生徒会長が僕の奉仕奴隷になったわけ

冬野花火

文字の大きさ
11 / 15

安城院雫と生徒会室2

しおりを挟む
安城院雫という人は 安城院雫という人は当然だがモテる。
 
 抜群の美貌はそれだけで人を惹き付けるし、そのどこか遠さを感じさせるような性格は憧れを誘う。
 戸塚に聞くところによると、先輩に振られた男子生徒を集めると優に一クラス分を超える人数になるらしい(女子生徒を合わせるとちょうど二クラス分だとか)。
 僕はそれいつものあいつの冗談で、流石に言いすぎだろうと思っていた。

 けれど、目の前の光景はもしかしたらと思わせた。
 僕は昨日同様に生徒会室で先輩の手伝いをしていた。
 簡単に食事を済ませると、今日は生徒会室内の別室、会議室にある資料の整理を頼まれた。

 ガラス張りの会議室からは、先輩が相変わらずに山のような資料を崩していく様子が見える。
 事態が変わったのは、資料整理を初めてすぐのことだった。
 気がつくと僕と同級生だろう男子生徒が、安城院先輩の座る前その前に立っていた。

 いや僕が気づいたのは、彼がそこに立っていたからじゃない。
 別室であるこちらにも聞こえる声で、先輩への愛を叫ぶその声のせいだ。
 それは僕が聞いてもなかなかに胸を打たれるような愛の言葉の羅列で、彼の想いが詰まっていた。

 先輩はどう応えるのだろうか。
 今朝のキスの感触を思い出しながら、気が気じゃなくてその場面に釘付けになる。

 彼の表情は真剣そのものなのに対して、先輩はほとんど表情が変えなかった。
 いつものクールな装いを崩さずに、彼の言葉を聞き終えると頭を下げた。
 頭を上げると何か口が動いたけれど、その声はこちらには届かなかった。

 告白をした彼はその答えで十分だったのか踵を返して、早足でいやほとんど走るようにして出ていった。
 先輩は大きく息をついて、そして僕の視線に気づいたのか、苦笑してこちらを見る。
 僕はさすがにこのまま資料整理を続けるわけにもいかず、一度、先輩の方へ戻る。
 先輩は慣れているのか、もういつも通りの仕事に戻っているが、僕に気づくと顔をあげる。

「聞こえてたかしら?」
「まあ、おおよそは」
「ああいうの。その、嬉しいんだけどね」

 先輩は照れたように頬をかく。

「自慢じゃないけれどね。ああいう風に言ってくれる人はこれまでもいたんだけれどね、どの人もどこか私を見ていないように思うの」

 安城院雫に憧れている人の多くがそうなのだろう。
 自分の理想を先輩に仮託する。
 先輩の外見に理想を見て、その内面にも理想を押しつける。
 そこには、先輩の姿はない。

 実は犬っぽくて世話焼きな先輩を、笑うととてもかわいい先輩を、それから実はとってもHな先輩を誰も知らない。
 先輩が言っているのはそういうことなのだろう。

「それに私なんてぜんぜんなのに、とも思っちゃうのよね。全然かわいらしくないし。口下手で友達もほとんどいないし。それに、そのHだってわかっちゃったし」

 先輩が自分のことをそんな風に思っているなんて、僕は知らなかった。
 少なくとも最後のは断然ポイント高いと僕は思うけれどと、そんなことを口にしない。

「それに、できれば初めての人は自分から告白したいなって、そう思っているの。人から選ばれるんじゃなくて、自分で選びたいな、って」 

 先輩は手をぎゅっと握って、意志を込めていた。
 けれど自分の言葉に反応してか、その頬は赤らんでいる。

「先輩はまっすぐな人ですね」
「そういうわけではないと思うけれど。その、川上くんはどうなの、告白とか、そういうのは」
「僕はされたこともないですよ」
「そうなんだ」

 先輩はほっとしたようでどこか声音が軽くなる。
 どうしてだろう。
 僕が告白されていようと、そうでなかろうと、先輩にはあまり関係がないようにと思うけれども。
 僕がそんな風に疑問に思っていると、

「さてはて、この話題はこの辺にしましょうか。もう少しだけお願いできるかしら、川上くん」
「はいっ」
 僕は頷いて自分の持ち場に戻る。

 けれど、その前にもう一度、先輩を見る。
 さっきの先輩の言葉で、僕自身が先輩に理想を見ていたことに気づいた。
 でも、僕は少しだけ他の人が知らない先輩を知っている。

 そしてそれは、これからも増えていく。増やしていく。
 そんなことを思う。

「返事はよかったけれど、私の顔に何かついているかしら?」
「いえ、すぐにします」

 そう言って今度こそ、僕は持ち場に戻った。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...