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ササメ15
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●その、日
影を操る闇天狗にとって、人知れず屋敷に侵入することなどたやすいこと。
かげは、天狗の城へと忍び込んでいた。人目を盗み、側に誰もおらぬときを見計らって天狗の前に現れた。
「上様」
無礼を承知で、璃石は鳴子の前に膝を折った。
「璃石」鳴子は呻くように言って、後ずさった。慌てたために、背後の壺へぶつかりそれが倒れそうになった。璃石はそれを素早く受け止める。
音を立てられては困る。
「そち、何をしに参った」
鳴子は、白装束に身を包んだかっぷくのよい天狗だった。顔は酒やけしたように赤く、鼻先は丸くて、だが長い。眉は太くて長く、目は切れ長だが垂れている。白い髭を顎に伸ばしていた。
「黒幕は、侍寸でございます」璃石は、単刀直入に言った。「叔父は、上様の命を狙っております。鬼に天狗一族を贄に捧げ、鬼を復活させた暁には闇天狗がこの世を治めようという魂胆なのです」
鳴子はしばし考えてから言った。
「裏切り者のそちがいう、そのような話を真のことと思えというのか。いささか無理があるのではないか」
「ごもっともでござります。ですが、上様は初めから私が鬼の僕であることをわかっていらっしゃったのではございませんか。それはつまり、叔父の陰謀にも気づいていたということ。気づいていて。我らを泳がせていたのではないかと、私は考えております」
鳴子の返答には間があった。
「何故、そう思う」
「おおよそ私の勘ではありますが、まず、姫を侍寸から遠ざけたこと。それから、秘密裏に王位を継承させたこと」
「だがお前は気づいたのだな、癒簾が今天の守護をもっていることに」鳴子はにやりと笑った。
「知っておって、鬼には報せなかったようだな。鬼がしっておれば、余の命はとうになかろうな」
璃石はそれには答えずに言った。
「教えてください、真実を。私は、父の遺言をずっと信じてきました」
父はある日、鳴子の了承を得て子をもうけることになった。
だが、そのとき同時に鳴子以外の闇天狗の子が大勢生まれた。それが原因で、謀叛の疑いをかけられた。
父が裏切ったと思った鳴子は大層怒った。天の使いである天狗の怒りは地を揺るがし、山を噴火させ、嵐を起こし、海を荒れさせ、津波で大地を削る。
不運にも、その怒りの中へ鳴子の娘である癒簾が巻き込まれた。
だが、そこについていたかげの母が身代わりとなって癒簾を救ったのだ。
父は、鳴子が故意に母を殺したと思い、鳴子を大層怨むようになった。
謀反の冤罪をかけられ、愛する者まで奪われた父は、鳴子に失望し、彼を倒し自らが王に立とうと決めた。そして、鬼を蘇らせた。
だがその鬼姫が動けるようになるためには巨大な力が必要だった。
ひとを犠牲にできるような父ではない。自らが、鬼姫の生贄となって魂を捧げ、後を弟の侍寸に託した。
「叔父は、王が謀って父を陥れたのだと申しておりました。子を成せと命じておきながら、実際子を作ればそれが謀叛と責め、殺す。鳴子は、初めからそのつもりだったと」
幼くして指針を失った璃石にとって、側に居た唯一の大人である侍寸の言葉は信じるしかなかった。
だから、天狗とは憎むべき存在なのだとずっと思ってきた。そして、王将となるべくは闇天狗なのだと信じてきた。癒簾に仕えるようになるまでは――。
「父は最期に、鬼と共に天狗を討てと言い残しました。それは、叔父から聞いたことです。それが父の遺志と信じて参りました。命がけで鬼を蘇らせたのはそのためかと、私は納得して父の遺志をつごうと必死でした。ですが、」
癒簾を裏切ろうとして、ないはずの心がちぎれそうなほど痛んだ。
断じて、癒簾をこの手にかけることなんてできない。できなかった。
侍寸は、城の守護から癒簾を出し、秘密裏に癒簾を暗殺するよう命じたのだ。そして、それを鬼に捧げ、鬼の力の一部とするはずだった。
だが、暗闇しかない影の中にいて、ずっと己を導くように光り続けてくれていた癒簾を殺すことが、どうしても正しいとは思えなかった。
たとえ、父が命をかけて果たそうとしたことであっても。
璃石は、鳴子に深く頭を下げた。
「どうか、真実を教えてください。私は、あなた様が父を陥れるような卑怯なことをするひとだとは思えない。偽りの姿とはいえ、王家に仕えさせていただいたこれまでの間に、私は本当に癒簾様のためならこの命を投げ出しても良いと思ったことが何度もあります。できることなら、心から貴方様方に仕えたかったと、密かに無念に思うことも数えきれなかった。それでも私は己にかせられた宿命を断つことはできなかったのです。そうして、ここまできてしまった。大熄俎はもう間もなく始まります。私は、この土壇場でどう動いたらよいのかがわからない。鬼とともに天狗を倒すのか、寝返って、あなた様の命をお守りするのか」
しばらく、鳴子は黙ったままだった。
「事実だけを言おう」
鳴子はゆっくりとあるいて窓際に向かった。
灰色に染まる空を見上げながら、王は語った。
「帆蔵に子をつくらせたのは、余じゃ」
璃石は唾を呑みこんだ。ならば、叔父の言っていたことがやはり正しいのだろうか。だが、すぐにそれは誤りだったとわかる。
「いや、二人で話し合って決めたことじゃった。帆蔵だけが望んだことでもなく、余が一方的に命じたことでもない。余と帆蔵はよくよく話し合って、帆蔵の子に最期の望みをかけたのじゃ」
その子どもが、俺だというのか。
璃石は喉が渇くのを感じた。不意に、意識が遠のく。
一昨日からだ。
眠っている間に意識が飛んで、故郷の夢を見た。人間だった頃の村に璃石はいて、考えるのもおこがましいことだが癒簾と通じていた。その眠りから覚めてからというもの、璃石は己がどこか落ち着かないような感覚にさいなまれていた。時折こうして、ふっと意識が遠のきそうになることもある。
「大丈夫か、顔色が悪いぞ」
冷や汗が浮き出ていた。鳴子はそれに気づいたのだろう。
「いえ、大事ございませぬ。どうか、続きを」
「うむ、ならば」と鳴子は怪訝そうにするようすもなく、続けた。
「余たちは、その前から既に鬼の復活の兆しを読み取っていたのじゃ。もちろん、すぐに封じ直すことが最善策であったろう。だが、鬼は隠れるのがうまい。居場所がなかなか掴めなかったのじゃ。弱っているとはいえ、相手は鬼。容易に手を出すこともできず、尻尾を出すまで余たちは見守るしかなかったのじゃ。しかし、」
そこで王は嘆息をした。
「そこが手ぬるかった。鬼は余たちの想像していたよりももっとずっと早く力をつけてしまったのだ」
やはり――。
璃石は目を伏せた。
「贄を喰ったのだ。そちが生まれると同時に、産まれた闇天狗の魂を、鬼は大量に喰ったのだ」
璃石は歯を噛みしめていた。
その、贄となる闇天狗を生ませたのが父だと、鳴子は思っているはずだが……。
「その贄を生ませたのは、帆蔵ではない」
璃石は思わず顔をあげた。
鳴子は情愛の籠った瞳を璃石に向けていた。敵意は、ひとかけらも感じない。
「鬼を蘇らせた誰か、が仕組んだことじゃ。と、今は言える。だが、余も未熟であった。余は、その者の巧みな話術によって疑心暗鬼に陥ってしまったのじゃ。余は、帆蔵が鬼を復活させるために余を言いくるめて子をつくらせたものかと思ったのじゃ。そんなときに、闇鴉が、癒簾をさらったのじゃ」
闇鴉といえば、闇天狗の族長のみが使える眷属だ。
「余は、帆蔵が裏切ったと思った」
そして、後は叔父から聞いた通りだった。天狗の怒りによって起こった噴火に、闇鴉に捕らわれていた癒簾が巻き込まれ、駆けつけた側近だった璃石の母が命を張って癒簾を守った。
「そのことで帆蔵は余を恨み、反乱を起こそうとしているという噂も広がった。そのとき、侍寸が余の下へ来て、頭を下げたのだ。兄に代わって謝罪をし、自ら帆蔵を処に刑し、鬼をも始末するからどうか一族の者を許してくれと嘆願した。余は、それに応じた。余は、帆蔵ではなく、侍寸を信じたのだ」
鳴子の声は静かだったが、深い後悔の色が顔に現れていた。
「そして、侍寸は帆蔵をその手にかけた。罪状は謀叛による処刑とされておる。鬼も退治されたと聞いた。実際、鬼はそれきりなりをひそめておった。それで、すべてが解決したと、思われている」
鳴子は妙な言い回しをして、璃石をじっと見つめている。
「余を愚かと思うじゃろう。余は、余を愚かと思うておる。余が信じるべきは、侍寸ではなく、帆蔵であったのじゃ」
そのたった一つの間違いが、鳴子の深い後悔の正体だ。
ひともてんぐもやみてんぐも皆同じなのだ。
惑い、そして必ず正しい結論が出せるとは限らない。
だから怖い――己で、己の道を選ぶことが。
「余はな、帆蔵を失い心を痛めた。長年、余の一番近くで余を支えてくれた者じゃった。何故、最期まで信じ切ることができなかったのであろうとな。皮肉にも、余は帆蔵の死によって、気づかされたのじゃ。あやつは、鬼と接近できる唯一の機会に、鬼を討たんとしたのだ。あやつは敵も味方も欺き、その計画を果たそうとしたが、無念に終えたのじゃ。あやつは、侍寸の手にかかり、憐れ、鬼の餌と成り果てたのじゃ」
叔父が父を殺した。父は、鬼の餌に……。
璃石は茫然とした。そんな璃石に、鳴子はとんでもないことを言う。
「じゃが、そちがいる。帆蔵と共に望みをかけた帆蔵の子である、そちがおる」
璃石は無意識に首を振っていた。
おれに、何を望んだと言うのか。璃石には、わからぬ話だった。
叔父の嘘も見抜けず、父の死を踏みにじって悪に加担した。己のように無力で役立たずな者に、何を望む――。
だが、鳴子の眼は期待に輝いているように見えた。
「そちは、正しいことを知っておる。そして、間違わぬ」
璃石は、首を振った。
「私は、裏切り者です。ただ、姫を悲しませることに耐えられなくなっただけのこと」
「その胸の痛みが正しいことを知っている証だ。そして、そちは素直にその心の声を聞いた。聞かずにはいられないのだろう」
鳴子は笑った。
「そちは、光を決して見失わぬ。時に、正しいことをするには勇気がいる。そちはその勇敢さを持っているのじゃ」
「俺は、そんなんじゃない」
璃石はうつむいた。
かいかぶらないでほしい。期待をかけないでほしい。己には、その期待に応えるだけの力は、ない。
「余はな、そちに賭けたのじゃぞ」
「賭けた?」
眉を潜める璃石に、鳴子はどこかいたずらっぽい笑みを浮かべて肯いた。
「そちには都合よく聞こえるかもしれないが、余はそちをはじめから信じておったのじゃ。でなければ、大事な愛娘の護衛に白か黒かわからぬ者の勧めてきた者をつけたりなどせぬわ。じゃが、そちがいくら澄んだ眼をしておるからといえ、そちには鈴の呪縛もある。じゃから、これは賭けであった。癒簾へ秘密裏に王位を継承した。側にいるそちは絶対にきづくであろうと思っていたからな。じゃが、そちはそのことを鬼に伝えず、癒簾も無事に逃してくれたのであろう。余は、賭けに勝ったというわけじゃ。あっはっは」
と、鳴子は豪快に笑った。部屋の空気がぐるぐる回るように吹いた。
「何故、そのようなことを。万一、私が鬼に継承のことを話していれば、あなた様の命は今頃なかったのですぞ」
「じゃから、言うたであろう。余はそちを信じておった」
「しかし、あまりにも無謀。鬼が侍寸に封じられていないことも気づいておられたのでしょう」
「余は天狗じゃ」
鳴子は威厳を込めて言った。真顔の鳴子に璃石は委縮して、頭を下げた。
「城の守護もある。己の身くらい己で守れるわ。しかし、あの子は違う。癒簾は、元は人間じゃからな。守護が必要じゃ」
「それだけではありますまい。上様は、囮になられるつもりであられたのではありませぬか」
鳴子は璃石を見て、にやりとした。
「聡いのう。その通りじゃ。隠れている場所さえ分かれば、乗り込んで討ち果たすつもりじゃった。じゃが、流石に鬼じゃな。いくら探しても見つからぬのじゃ」
「だから、鬼があなた様を狙ってやってくるのを待つしかないと、」
「いずれ必ず余の下には現れるであろうと思っておったからな。そのときには、刺し違える覚悟じゃ」
「なりませぬ、そのようなこと」
「余は、王将じゃ。位は癒簾に譲ったが、闘ってこの国を守るのは男児たる余の役目じゃと思うておる。それに、万一余が無念の末に死んでも、癒簾だけは守られるからな。あれは、見かけによらず強い娘じゃ。きっと、鬼を滅ぼしてくれよう」
「そんな……」
「そんな酷なことと思うたか。ならば、力になってやれ」
鳴子は璃石の側までくると、その両肩に手を置いて真正面から璃石を見た。
「そちは最期の希望なのじゃ。正しい闇天狗の意志を継ぐ最後の族長。鬼を封じるには、闇天狗の力が必要なのだ。先祖が鬼を封じたときにも、傍らには闇天狗がおりその力を貸した。闇の中で光を見失わぬ者に、闇の支配者は弱い。そちの力が、必要なのじゃ。余は、そちを頼りにしておる」
結局、何を信じろと言うのだろうか。
「信じるものは、そちが決めればよい」
父も母も死んだ。己をここまで導いてくれたのは侍寸で、だが居場所を与えてくれたのは癒簾だった。そこは居心地のよいところで、己の歩んできた道が酷く暗く見えた。
侍寸に聞いていた話と、鳴子の話とは食い違う。
帆蔵を、父を殺したのは鳴子ではなく侍寸だった――。
鬼を蘇らせたのも、侍寸だ。そして、その鬼の力を得る為に、侍寸が帆蔵をはめて鬼の餌としたのだ。許されぬ子を、ほかの闇天狗に子をつくらせたのも侍寸だ。族長の弟である彼にしかそれはできないことだ。さらに、その罪を帆蔵に着せ、自ら断罪するふうを装い、鬼の存在を隠し、真実を葬ったのだ。
それから、璃石を鬼の僕におとし、王家に潜入させていいように利用してきた。あたかも、自分だけは璃石の味方であるようにみせて。ずっと、侍寸は璃石を騙し続けてきたのだ。
考えると、身体が震えた。意識が、遠のく。ぐらりと揺れる璃石の体を、鳴子が受け止めた。
「そち――」
鳴子が何かに気づいたように言った。
「申し訳ありませぬ」
璃石は、鳴子の腕から身を起こした。
璃石は、己の身に異変が起きていることに気づいていた。だが、今これを受け入れる訳にはいかないのだ。
俺は、闇天狗だ。
「闇天狗は、命じられたようにしか生きられぬものと思っておりました」
身も心もなく、ただの虚像として。
「そんなことはない」鳴子は穏やかに言った。璃石に、何がおきているのかわかったようだった。
「人も天狗も闇天狗も、望む場所に居てよいものだ」
「ならば」
璃石は立ち上がった。
「私は闇天狗として、天狗様にお仕え致します」
心を締めると、身の動揺は収まった。
闇天狗など、あるかなきかのいきものであろうと思っていた。けれど、ちゃんと己を見てくれている者はいた。
そのひとが、璃石の在り処を教えてくれたのだ。
それだけで、充分だ。
命は、惜しくない。
そう思ったとき、一瞬癒簾の顔が浮かんだ。そう仕向けたのは、獻瑪の言葉だ。
だが、怖じるわけにはいかないのだ。
「必ずや、あなた様をお守りします」
ゴォウンゴオゥンと、突如、空が唸り始めた。
大熄俎が始まったのだ。
一瞬だった。既に、城の外で待ち構えていたのだろう。天の加護が失われ、城の結界も解けた瞬間に、一気に使鬼がなだれ込んできた。窓から、扉から、天井や壁を突き破り、赤い胴体に手足と羽、牙、角を持った使鬼が厚い壁となって璃石と鳴子を取り囲んだ。考える間もなく、使鬼どもは襲い掛かってくる。
鳴子と璃石とは申し合わせたように背中わせになり、互いに目の前の使鬼を豪風により吹き飛ばした。だが、その風から逃れた使鬼たちが次々に飛び掛かり始めて、鳴子も璃石も風を放つ間をとれない。
璃石は鳴子を壁に追いやり、背後に鬼導術による結界を張ってから目の前の使鬼に集中した。だが、斬っても斬ってもきりがない。
璃石は、扇子を開いた。
床の石を砕き、宙に舞わせた。扇子を仰ぎつつ、素早く唱える。
「爆散」
これも鬼導術であった。石を粒子にしたものを、闇天狗の風の術により吹き飛ばす。
矢よりも鋭く空を切り、石の粒子は四方の使鬼を一斉に打ち砕いた。カ○ルが潰れたような音を出し、使鬼どもは消えた。が、すぐにまた別の使鬼が現れる。それらはすぐ側で生み出されていた。
それに気づくのと同時であった。
ちりん――。
璃石は意思とは無関係に、動きを止めた。
使鬼が道を開ける。その向こうに鬼姫がいた。
「やっぱり、来てくれた」
低く響く声で、喉を震わすように忌扠は物を言う。
「いとしいあなた」
血のように赤い、着物の裾を引きずりながら忌扠はゆっくりとこちらへ近づいてくる。一歩、一歩と前へ進むたび、鈴の音は大きくなって璃石の耳に響く。
目の前が白くなる。目にうつるものすべてが幻想のように見えて、正気を失いそうになる。
声に抗いたいのに、身体は思うように動いてくれない。
忌扠を、鳴子に近づけてはならぬのに、璃石は武器を構えられない。
「ゎらゎのかげよ。どうしていなくなったの」
ちりりん。鈴の音が耳の奥で膨張する。他のなにものも入れぬようにと、それは璃石の頭の中を支配する。
「ゎらゎのもとへ戻ってくるでありんすよ。いとしいかげよ」
「俺は、璃石だ」
己の声は、すぐに忌扠の鈴の音に飲みこまれる。
それでも、璃石は叫んだ。
「俺は、もうあなたには従わない」
一気に、周囲の空気が冷え切った。そしてそれは錯覚ではない。高くひび割れるような音とともに、部屋にある家具や壁が凍りついたのだ。
ちりん。
と、璃石の中でその音は大きくなった。
からだの真ん中から、その音は響いてくる。
ちりんチリンチリンチリンリンリンリンリン……。
頭が割れるように痛んだ。
「うああっ」たまらず両手で頭を抱きこみ、璃石はその場に崩れた。
崩れたと、思った。
だが、意識とは別のところで、璃石は扇子を鳴子に向けていたのだ。
やめろ!
その璃石の叫びは、己にすら聞こえない。
璃石が術を放つ。この至近距離で、璃石の術を受ければ、鳴子に生き残る術はない。
上様!
死ぬほどの後悔の念が襲ってくる。しかしそれも束の間、璃石の目に光が戻った。
「相変わらず情けねえなあ」
璃石の術を見事な結界術で防いでいた男がいた。
獻瑪――。
獻瑪は、自らを盾にするように鳴子の前に立っていた。
「目を、覚ましやがれこのド変態が!」
獻瑪は、立て続けに術を放ってきた。
いかぬ。やめろ、獻瑪。いくら鬼導師といえど、人間の力では闇天狗には太刀打ちできぬ。
しかしその叫びは虚しく消えていく。
璃石はもはや己のからだを制御できなかった。己が己の意思とは関係なく動いていく。昔ならば逃げ場のなかったこの悪夢だが、今なら璃石は帰る場所を知っている。だが、ここで己だけ逃げるわけには断じていかないのだ。
しかし、どうすることもできない。
璃石の意思を離れた璃石のからだは、獻瑪を容赦なく打ち伏せた。
璃石の闇の風に絡みとられた獻瑪は、天井近くへ飛ばされて、床へ激しく叩きつけられた。そのまま、獻瑪はピクリとも動かなくなった。
獻瑪!
今すぐ駆け寄って、安否を確かめたい。
だが、璃石は鳴子のほうを向いていた。
鳴子の風が飛んでくる。天の使者である天狗の術は、天の力を借りている。加護のないこの大熄俎のとき、その風は璃石にとってはそよ風のようなものだった。
「覚悟」
己でない声が言った。
璃石の振り上げた扇子が唸りをあげて振り下ろされる。しかしその瞬間、璃石は鳴子の前に立ちはだかった癒簾を認めた。
だからなのか、わからない。
ただ、これ以上ひとを傷つけたくないと、必死だった。
璃石から放たれた闇の風は、円を描いて空を切りつつ飛んでゆき、癒簾の前髪を一房切った。だがそこで急旋回し、璃石の振り向いたときには黒の刃が鬼姫の角を斬り落としていた。
床にちりんと音をたてて角が落ちる。
忌扠は茫然として足下に転がるそれを見ていた。見る間に、角は鉛色に変色して、ただの円錐の石と化した。
耳鳴りのような、鋭く不快な音が耳を襲った。
忌扠の悲鳴であった。
鬼にとって角はすべての力の源で、それを失えばもはや鬼としては生きてはいけない。
同時に、僕への支配も失うのだ。
璃石は、ついに呪縛を断ったのだ。
「姫、封じの印を!」
璃石の声が響いた。
警戒音のような忌扠の悲鳴は続いている。
癒簾が我に返り、すばやく呪文を唱え、印を結んだ。ぼうっとしているようにみえて、癒簾はまなぶべきことはまなんできている。
癒簾の術に間違いはなかった。
忌扠は突如現れた光の触手に身体を締め上げられた。
角を失った忌扠に、抗う術はない。
「やめろ。やめぬか!」忌扠はもがいていた。
「いやじゃ。いやでありんすよ。また独りで暗いところへもどりたくない。かげ」
名を呼ばれて、歯が浮かび上がるような感覚に襲われた。動揺した。忌扠が、かわいそうに、思えてしまう。
「癒簾、だめだ!」
意識を取り戻したのか、獻瑪が起きあがって叫んでいた。
どうやら、忌扠を気の毒と思ったのは璃石だけではなかったらしい。癒簾の一瞬の怯みを、忌扠は見逃さなかった。
光の縄を引きちぎり、蛇のような唸り声をあげて牙を剥いて飛び掛かってきた。
「縛!」獻瑪の声が響く。忌扠は再び自由を奪われた。
「消」獻瑪の術がかかり、忌扠は見えないしがらみに苦しみながら悶えた。
目は飛び出し、瞳は細く、牙はむき出し、唇は裂けていた。
髪を振り乱し、落ちた角からは闇色の煙が立ち上っていた。
忌扠は、からだを前後に振り、もがき続けている。
鬼姫は、得ようとしていた力を得ることはできなかった。復活は完全でなく、弱った今の忌扠ならば獻瑪の術で倒すことができるだろう。
すぐ側で、術をかけようかためらっている癒簾がいた。
目が合った。
癒簾の迷いは、璃石の決心を後押しした。
「これで、終わりだ」
獻瑪が最期の術を放とうとした。
「待て!」
璃石は、扇子を開き、忌扠と獻瑪の丁度真ん中へ跳び込んだ。扇子は、獻瑪の術をもろに受けて粉々に消え去った。
ともすれば、これが今の忌扠の運命だった。だがそれを、璃石が変えてしまった。
そんな、大げさな言い方をしなくてもいい。
璃石はただ、忌扠がただ失われていくのを見たくなかった。
「てめえ、何しやがる! まだ操られてんのか」
獻瑪は息があがっていた。今のが渾身の術であったのだろう。二度、同じ術は放てない。
「そうじゃない。俺はただ……」
璃石は言葉を失った。
背を突かれたような感覚があった。獻瑪が目を見開いていた。
癒簾の悲鳴が響いた。
「璃石!」
獻瑪の声ろ同時に、酷い痛みが襲ってきた。
床が急に目の前に迫ってきた。咄嗟に手をついて、己が倒れかけたのだと分かった。
己のからだから、鋭くとがった赤い爪のついた指が五本、見えていた。死人のように白いその手は、そのまま璃石の胸を貫き、肘の先まで伸びてきて、璃石の首を掴んだ。
背に、忌扠が張り付いていた。
「てめえ、このクソ鬼が! このまま絞め殺してやる!」獻瑪が縛術をきつく締める。
忌扠が苦しげに呻いた。
「やめろ!」
璃石が叫んだ。血は出ぬのに、痛みは感じる。不思議な、からだだ。闇天狗とは、なんなのだろうか。
子を己で産むことができず、人間に頼るしか種を増やせない。宿る影がなければ、生きてゆくこともできず、そうかと思えば光を見失った闇天狗は鬼と化す。
闇天狗とは、なんなのだろう。
「なんでだよ。なんで、そんなやつを庇う」
獻瑪が泣きそうな顔で言った。
「すまん。だが、俺にはできない。なんであろうと命は命だ」
「そいつは鬼なんだぞ! 悪なんだ」
「わかっている」
「わかってねえだろ! 情に流されるんじゃねえよ」
「ちがう」
「なにが違うってんだ」
「確かに、傀儡の虚像とはいえ肌を重ねた仲。だが、そうではないのだ」
俺にはただ――。
「俺にはただ、見逃せなかっただけだ」
命は、命だ。
「命が奪われることを、見逃せない」
「けど、そいつはたくさんのひとの命を奪ってきたんだ。このままそいつを生かしておけば、同じことを繰り返すぞ」
「そうはさせない。忌扠には、生きてほしいんだ。重い罪があるからこそ、生きて償いをしてほしい」
「鬼が反省なんかするわけねえだろう」
「ならば、死ねばするのか」
「それは――」獻瑪は言葉に詰まる。
「悪を殺したところで、生き残った者の気が済むだけではないのか。殺せば、罪を償う機会をも奪うことになろう」
「甘いな、てめえは。きれいごとばかり言いやがって。けど、」
獻瑪は、顔の前に構えていた手をすっと下ろして、苦笑を浮かべた。
「その甘さに救われてきたやつが沢山いるんだよな。おれも、含めて」
背が、温かかった。背に、震えが伝わる。
忌扠も、命なのだ。
苦しいことを苦しいと思い、哀しいことを哀しいと思う。孤独も感じ、暗闇も恐れる。そして、光をいつのまにか見失って、楽しいことをすべて忘れてしまう。闇の中に棲む。それが鬼だ。
「忌扠、もう人を苦しめないでくれ」
忌扠のすすり泣く声が耳もとで聞こえた。涙が、一粒肩に落ち、それが温かかった。
部屋に光が差し込み始めめていた。
大熄俎が明け始めている。
璃石は、支えを失ってその場に倒れこんだ。
横たわりながら見えるのは、一人の小さな少女が啜り泣いている姿だった。
これが、忌扠か?
その少女の足下から、黒いものが伸びていた。それは急に少女の背後で伸びあがり、大きく口をあけようとした。少女を飲みこもうとしたのだ。
あぶない!
声も出ず、身体も動かなかった。
だが、璃石には仲間がいる。
癒簾と獻瑪が同時にかけた術が、その黒い塊を打ち砕いた。
雲散霧消したそれは、人々の悪念である。邪悪な、人の念だったのだ。
それが、鬼の正体――。
邪気の抜けた鬼姫は、ただの少女ではないか。
子に、罪はない。
罪を押し付けるのは、いつだって無関心な大人たちなのだ。
鬼は、去った。
璃石は、安堵して、そっと目を閉じた。
影を操る闇天狗にとって、人知れず屋敷に侵入することなどたやすいこと。
かげは、天狗の城へと忍び込んでいた。人目を盗み、側に誰もおらぬときを見計らって天狗の前に現れた。
「上様」
無礼を承知で、璃石は鳴子の前に膝を折った。
「璃石」鳴子は呻くように言って、後ずさった。慌てたために、背後の壺へぶつかりそれが倒れそうになった。璃石はそれを素早く受け止める。
音を立てられては困る。
「そち、何をしに参った」
鳴子は、白装束に身を包んだかっぷくのよい天狗だった。顔は酒やけしたように赤く、鼻先は丸くて、だが長い。眉は太くて長く、目は切れ長だが垂れている。白い髭を顎に伸ばしていた。
「黒幕は、侍寸でございます」璃石は、単刀直入に言った。「叔父は、上様の命を狙っております。鬼に天狗一族を贄に捧げ、鬼を復活させた暁には闇天狗がこの世を治めようという魂胆なのです」
鳴子はしばし考えてから言った。
「裏切り者のそちがいう、そのような話を真のことと思えというのか。いささか無理があるのではないか」
「ごもっともでござります。ですが、上様は初めから私が鬼の僕であることをわかっていらっしゃったのではございませんか。それはつまり、叔父の陰謀にも気づいていたということ。気づいていて。我らを泳がせていたのではないかと、私は考えております」
鳴子の返答には間があった。
「何故、そう思う」
「おおよそ私の勘ではありますが、まず、姫を侍寸から遠ざけたこと。それから、秘密裏に王位を継承させたこと」
「だがお前は気づいたのだな、癒簾が今天の守護をもっていることに」鳴子はにやりと笑った。
「知っておって、鬼には報せなかったようだな。鬼がしっておれば、余の命はとうになかろうな」
璃石はそれには答えずに言った。
「教えてください、真実を。私は、父の遺言をずっと信じてきました」
父はある日、鳴子の了承を得て子をもうけることになった。
だが、そのとき同時に鳴子以外の闇天狗の子が大勢生まれた。それが原因で、謀叛の疑いをかけられた。
父が裏切ったと思った鳴子は大層怒った。天の使いである天狗の怒りは地を揺るがし、山を噴火させ、嵐を起こし、海を荒れさせ、津波で大地を削る。
不運にも、その怒りの中へ鳴子の娘である癒簾が巻き込まれた。
だが、そこについていたかげの母が身代わりとなって癒簾を救ったのだ。
父は、鳴子が故意に母を殺したと思い、鳴子を大層怨むようになった。
謀反の冤罪をかけられ、愛する者まで奪われた父は、鳴子に失望し、彼を倒し自らが王に立とうと決めた。そして、鬼を蘇らせた。
だがその鬼姫が動けるようになるためには巨大な力が必要だった。
ひとを犠牲にできるような父ではない。自らが、鬼姫の生贄となって魂を捧げ、後を弟の侍寸に託した。
「叔父は、王が謀って父を陥れたのだと申しておりました。子を成せと命じておきながら、実際子を作ればそれが謀叛と責め、殺す。鳴子は、初めからそのつもりだったと」
幼くして指針を失った璃石にとって、側に居た唯一の大人である侍寸の言葉は信じるしかなかった。
だから、天狗とは憎むべき存在なのだとずっと思ってきた。そして、王将となるべくは闇天狗なのだと信じてきた。癒簾に仕えるようになるまでは――。
「父は最期に、鬼と共に天狗を討てと言い残しました。それは、叔父から聞いたことです。それが父の遺志と信じて参りました。命がけで鬼を蘇らせたのはそのためかと、私は納得して父の遺志をつごうと必死でした。ですが、」
癒簾を裏切ろうとして、ないはずの心がちぎれそうなほど痛んだ。
断じて、癒簾をこの手にかけることなんてできない。できなかった。
侍寸は、城の守護から癒簾を出し、秘密裏に癒簾を暗殺するよう命じたのだ。そして、それを鬼に捧げ、鬼の力の一部とするはずだった。
だが、暗闇しかない影の中にいて、ずっと己を導くように光り続けてくれていた癒簾を殺すことが、どうしても正しいとは思えなかった。
たとえ、父が命をかけて果たそうとしたことであっても。
璃石は、鳴子に深く頭を下げた。
「どうか、真実を教えてください。私は、あなた様が父を陥れるような卑怯なことをするひとだとは思えない。偽りの姿とはいえ、王家に仕えさせていただいたこれまでの間に、私は本当に癒簾様のためならこの命を投げ出しても良いと思ったことが何度もあります。できることなら、心から貴方様方に仕えたかったと、密かに無念に思うことも数えきれなかった。それでも私は己にかせられた宿命を断つことはできなかったのです。そうして、ここまできてしまった。大熄俎はもう間もなく始まります。私は、この土壇場でどう動いたらよいのかがわからない。鬼とともに天狗を倒すのか、寝返って、あなた様の命をお守りするのか」
しばらく、鳴子は黙ったままだった。
「事実だけを言おう」
鳴子はゆっくりとあるいて窓際に向かった。
灰色に染まる空を見上げながら、王は語った。
「帆蔵に子をつくらせたのは、余じゃ」
璃石は唾を呑みこんだ。ならば、叔父の言っていたことがやはり正しいのだろうか。だが、すぐにそれは誤りだったとわかる。
「いや、二人で話し合って決めたことじゃった。帆蔵だけが望んだことでもなく、余が一方的に命じたことでもない。余と帆蔵はよくよく話し合って、帆蔵の子に最期の望みをかけたのじゃ」
その子どもが、俺だというのか。
璃石は喉が渇くのを感じた。不意に、意識が遠のく。
一昨日からだ。
眠っている間に意識が飛んで、故郷の夢を見た。人間だった頃の村に璃石はいて、考えるのもおこがましいことだが癒簾と通じていた。その眠りから覚めてからというもの、璃石は己がどこか落ち着かないような感覚にさいなまれていた。時折こうして、ふっと意識が遠のきそうになることもある。
「大丈夫か、顔色が悪いぞ」
冷や汗が浮き出ていた。鳴子はそれに気づいたのだろう。
「いえ、大事ございませぬ。どうか、続きを」
「うむ、ならば」と鳴子は怪訝そうにするようすもなく、続けた。
「余たちは、その前から既に鬼の復活の兆しを読み取っていたのじゃ。もちろん、すぐに封じ直すことが最善策であったろう。だが、鬼は隠れるのがうまい。居場所がなかなか掴めなかったのじゃ。弱っているとはいえ、相手は鬼。容易に手を出すこともできず、尻尾を出すまで余たちは見守るしかなかったのじゃ。しかし、」
そこで王は嘆息をした。
「そこが手ぬるかった。鬼は余たちの想像していたよりももっとずっと早く力をつけてしまったのだ」
やはり――。
璃石は目を伏せた。
「贄を喰ったのだ。そちが生まれると同時に、産まれた闇天狗の魂を、鬼は大量に喰ったのだ」
璃石は歯を噛みしめていた。
その、贄となる闇天狗を生ませたのが父だと、鳴子は思っているはずだが……。
「その贄を生ませたのは、帆蔵ではない」
璃石は思わず顔をあげた。
鳴子は情愛の籠った瞳を璃石に向けていた。敵意は、ひとかけらも感じない。
「鬼を蘇らせた誰か、が仕組んだことじゃ。と、今は言える。だが、余も未熟であった。余は、その者の巧みな話術によって疑心暗鬼に陥ってしまったのじゃ。余は、帆蔵が鬼を復活させるために余を言いくるめて子をつくらせたものかと思ったのじゃ。そんなときに、闇鴉が、癒簾をさらったのじゃ」
闇鴉といえば、闇天狗の族長のみが使える眷属だ。
「余は、帆蔵が裏切ったと思った」
そして、後は叔父から聞いた通りだった。天狗の怒りによって起こった噴火に、闇鴉に捕らわれていた癒簾が巻き込まれ、駆けつけた側近だった璃石の母が命を張って癒簾を守った。
「そのことで帆蔵は余を恨み、反乱を起こそうとしているという噂も広がった。そのとき、侍寸が余の下へ来て、頭を下げたのだ。兄に代わって謝罪をし、自ら帆蔵を処に刑し、鬼をも始末するからどうか一族の者を許してくれと嘆願した。余は、それに応じた。余は、帆蔵ではなく、侍寸を信じたのだ」
鳴子の声は静かだったが、深い後悔の色が顔に現れていた。
「そして、侍寸は帆蔵をその手にかけた。罪状は謀叛による処刑とされておる。鬼も退治されたと聞いた。実際、鬼はそれきりなりをひそめておった。それで、すべてが解決したと、思われている」
鳴子は妙な言い回しをして、璃石をじっと見つめている。
「余を愚かと思うじゃろう。余は、余を愚かと思うておる。余が信じるべきは、侍寸ではなく、帆蔵であったのじゃ」
そのたった一つの間違いが、鳴子の深い後悔の正体だ。
ひともてんぐもやみてんぐも皆同じなのだ。
惑い、そして必ず正しい結論が出せるとは限らない。
だから怖い――己で、己の道を選ぶことが。
「余はな、帆蔵を失い心を痛めた。長年、余の一番近くで余を支えてくれた者じゃった。何故、最期まで信じ切ることができなかったのであろうとな。皮肉にも、余は帆蔵の死によって、気づかされたのじゃ。あやつは、鬼と接近できる唯一の機会に、鬼を討たんとしたのだ。あやつは敵も味方も欺き、その計画を果たそうとしたが、無念に終えたのじゃ。あやつは、侍寸の手にかかり、憐れ、鬼の餌と成り果てたのじゃ」
叔父が父を殺した。父は、鬼の餌に……。
璃石は茫然とした。そんな璃石に、鳴子はとんでもないことを言う。
「じゃが、そちがいる。帆蔵と共に望みをかけた帆蔵の子である、そちがおる」
璃石は無意識に首を振っていた。
おれに、何を望んだと言うのか。璃石には、わからぬ話だった。
叔父の嘘も見抜けず、父の死を踏みにじって悪に加担した。己のように無力で役立たずな者に、何を望む――。
だが、鳴子の眼は期待に輝いているように見えた。
「そちは、正しいことを知っておる。そして、間違わぬ」
璃石は、首を振った。
「私は、裏切り者です。ただ、姫を悲しませることに耐えられなくなっただけのこと」
「その胸の痛みが正しいことを知っている証だ。そして、そちは素直にその心の声を聞いた。聞かずにはいられないのだろう」
鳴子は笑った。
「そちは、光を決して見失わぬ。時に、正しいことをするには勇気がいる。そちはその勇敢さを持っているのじゃ」
「俺は、そんなんじゃない」
璃石はうつむいた。
かいかぶらないでほしい。期待をかけないでほしい。己には、その期待に応えるだけの力は、ない。
「余はな、そちに賭けたのじゃぞ」
「賭けた?」
眉を潜める璃石に、鳴子はどこかいたずらっぽい笑みを浮かべて肯いた。
「そちには都合よく聞こえるかもしれないが、余はそちをはじめから信じておったのじゃ。でなければ、大事な愛娘の護衛に白か黒かわからぬ者の勧めてきた者をつけたりなどせぬわ。じゃが、そちがいくら澄んだ眼をしておるからといえ、そちには鈴の呪縛もある。じゃから、これは賭けであった。癒簾へ秘密裏に王位を継承した。側にいるそちは絶対にきづくであろうと思っていたからな。じゃが、そちはそのことを鬼に伝えず、癒簾も無事に逃してくれたのであろう。余は、賭けに勝ったというわけじゃ。あっはっは」
と、鳴子は豪快に笑った。部屋の空気がぐるぐる回るように吹いた。
「何故、そのようなことを。万一、私が鬼に継承のことを話していれば、あなた様の命は今頃なかったのですぞ」
「じゃから、言うたであろう。余はそちを信じておった」
「しかし、あまりにも無謀。鬼が侍寸に封じられていないことも気づいておられたのでしょう」
「余は天狗じゃ」
鳴子は威厳を込めて言った。真顔の鳴子に璃石は委縮して、頭を下げた。
「城の守護もある。己の身くらい己で守れるわ。しかし、あの子は違う。癒簾は、元は人間じゃからな。守護が必要じゃ」
「それだけではありますまい。上様は、囮になられるつもりであられたのではありませぬか」
鳴子は璃石を見て、にやりとした。
「聡いのう。その通りじゃ。隠れている場所さえ分かれば、乗り込んで討ち果たすつもりじゃった。じゃが、流石に鬼じゃな。いくら探しても見つからぬのじゃ」
「だから、鬼があなた様を狙ってやってくるのを待つしかないと、」
「いずれ必ず余の下には現れるであろうと思っておったからな。そのときには、刺し違える覚悟じゃ」
「なりませぬ、そのようなこと」
「余は、王将じゃ。位は癒簾に譲ったが、闘ってこの国を守るのは男児たる余の役目じゃと思うておる。それに、万一余が無念の末に死んでも、癒簾だけは守られるからな。あれは、見かけによらず強い娘じゃ。きっと、鬼を滅ぼしてくれよう」
「そんな……」
「そんな酷なことと思うたか。ならば、力になってやれ」
鳴子は璃石の側までくると、その両肩に手を置いて真正面から璃石を見た。
「そちは最期の希望なのじゃ。正しい闇天狗の意志を継ぐ最後の族長。鬼を封じるには、闇天狗の力が必要なのだ。先祖が鬼を封じたときにも、傍らには闇天狗がおりその力を貸した。闇の中で光を見失わぬ者に、闇の支配者は弱い。そちの力が、必要なのじゃ。余は、そちを頼りにしておる」
結局、何を信じろと言うのだろうか。
「信じるものは、そちが決めればよい」
父も母も死んだ。己をここまで導いてくれたのは侍寸で、だが居場所を与えてくれたのは癒簾だった。そこは居心地のよいところで、己の歩んできた道が酷く暗く見えた。
侍寸に聞いていた話と、鳴子の話とは食い違う。
帆蔵を、父を殺したのは鳴子ではなく侍寸だった――。
鬼を蘇らせたのも、侍寸だ。そして、その鬼の力を得る為に、侍寸が帆蔵をはめて鬼の餌としたのだ。許されぬ子を、ほかの闇天狗に子をつくらせたのも侍寸だ。族長の弟である彼にしかそれはできないことだ。さらに、その罪を帆蔵に着せ、自ら断罪するふうを装い、鬼の存在を隠し、真実を葬ったのだ。
それから、璃石を鬼の僕におとし、王家に潜入させていいように利用してきた。あたかも、自分だけは璃石の味方であるようにみせて。ずっと、侍寸は璃石を騙し続けてきたのだ。
考えると、身体が震えた。意識が、遠のく。ぐらりと揺れる璃石の体を、鳴子が受け止めた。
「そち――」
鳴子が何かに気づいたように言った。
「申し訳ありませぬ」
璃石は、鳴子の腕から身を起こした。
璃石は、己の身に異変が起きていることに気づいていた。だが、今これを受け入れる訳にはいかないのだ。
俺は、闇天狗だ。
「闇天狗は、命じられたようにしか生きられぬものと思っておりました」
身も心もなく、ただの虚像として。
「そんなことはない」鳴子は穏やかに言った。璃石に、何がおきているのかわかったようだった。
「人も天狗も闇天狗も、望む場所に居てよいものだ」
「ならば」
璃石は立ち上がった。
「私は闇天狗として、天狗様にお仕え致します」
心を締めると、身の動揺は収まった。
闇天狗など、あるかなきかのいきものであろうと思っていた。けれど、ちゃんと己を見てくれている者はいた。
そのひとが、璃石の在り処を教えてくれたのだ。
それだけで、充分だ。
命は、惜しくない。
そう思ったとき、一瞬癒簾の顔が浮かんだ。そう仕向けたのは、獻瑪の言葉だ。
だが、怖じるわけにはいかないのだ。
「必ずや、あなた様をお守りします」
ゴォウンゴオゥンと、突如、空が唸り始めた。
大熄俎が始まったのだ。
一瞬だった。既に、城の外で待ち構えていたのだろう。天の加護が失われ、城の結界も解けた瞬間に、一気に使鬼がなだれ込んできた。窓から、扉から、天井や壁を突き破り、赤い胴体に手足と羽、牙、角を持った使鬼が厚い壁となって璃石と鳴子を取り囲んだ。考える間もなく、使鬼どもは襲い掛かってくる。
鳴子と璃石とは申し合わせたように背中わせになり、互いに目の前の使鬼を豪風により吹き飛ばした。だが、その風から逃れた使鬼たちが次々に飛び掛かり始めて、鳴子も璃石も風を放つ間をとれない。
璃石は鳴子を壁に追いやり、背後に鬼導術による結界を張ってから目の前の使鬼に集中した。だが、斬っても斬ってもきりがない。
璃石は、扇子を開いた。
床の石を砕き、宙に舞わせた。扇子を仰ぎつつ、素早く唱える。
「爆散」
これも鬼導術であった。石を粒子にしたものを、闇天狗の風の術により吹き飛ばす。
矢よりも鋭く空を切り、石の粒子は四方の使鬼を一斉に打ち砕いた。カ○ルが潰れたような音を出し、使鬼どもは消えた。が、すぐにまた別の使鬼が現れる。それらはすぐ側で生み出されていた。
それに気づくのと同時であった。
ちりん――。
璃石は意思とは無関係に、動きを止めた。
使鬼が道を開ける。その向こうに鬼姫がいた。
「やっぱり、来てくれた」
低く響く声で、喉を震わすように忌扠は物を言う。
「いとしいあなた」
血のように赤い、着物の裾を引きずりながら忌扠はゆっくりとこちらへ近づいてくる。一歩、一歩と前へ進むたび、鈴の音は大きくなって璃石の耳に響く。
目の前が白くなる。目にうつるものすべてが幻想のように見えて、正気を失いそうになる。
声に抗いたいのに、身体は思うように動いてくれない。
忌扠を、鳴子に近づけてはならぬのに、璃石は武器を構えられない。
「ゎらゎのかげよ。どうしていなくなったの」
ちりりん。鈴の音が耳の奥で膨張する。他のなにものも入れぬようにと、それは璃石の頭の中を支配する。
「ゎらゎのもとへ戻ってくるでありんすよ。いとしいかげよ」
「俺は、璃石だ」
己の声は、すぐに忌扠の鈴の音に飲みこまれる。
それでも、璃石は叫んだ。
「俺は、もうあなたには従わない」
一気に、周囲の空気が冷え切った。そしてそれは錯覚ではない。高くひび割れるような音とともに、部屋にある家具や壁が凍りついたのだ。
ちりん。
と、璃石の中でその音は大きくなった。
からだの真ん中から、その音は響いてくる。
ちりんチリンチリンチリンリンリンリンリン……。
頭が割れるように痛んだ。
「うああっ」たまらず両手で頭を抱きこみ、璃石はその場に崩れた。
崩れたと、思った。
だが、意識とは別のところで、璃石は扇子を鳴子に向けていたのだ。
やめろ!
その璃石の叫びは、己にすら聞こえない。
璃石が術を放つ。この至近距離で、璃石の術を受ければ、鳴子に生き残る術はない。
上様!
死ぬほどの後悔の念が襲ってくる。しかしそれも束の間、璃石の目に光が戻った。
「相変わらず情けねえなあ」
璃石の術を見事な結界術で防いでいた男がいた。
獻瑪――。
獻瑪は、自らを盾にするように鳴子の前に立っていた。
「目を、覚ましやがれこのド変態が!」
獻瑪は、立て続けに術を放ってきた。
いかぬ。やめろ、獻瑪。いくら鬼導師といえど、人間の力では闇天狗には太刀打ちできぬ。
しかしその叫びは虚しく消えていく。
璃石はもはや己のからだを制御できなかった。己が己の意思とは関係なく動いていく。昔ならば逃げ場のなかったこの悪夢だが、今なら璃石は帰る場所を知っている。だが、ここで己だけ逃げるわけには断じていかないのだ。
しかし、どうすることもできない。
璃石の意思を離れた璃石のからだは、獻瑪を容赦なく打ち伏せた。
璃石の闇の風に絡みとられた獻瑪は、天井近くへ飛ばされて、床へ激しく叩きつけられた。そのまま、獻瑪はピクリとも動かなくなった。
獻瑪!
今すぐ駆け寄って、安否を確かめたい。
だが、璃石は鳴子のほうを向いていた。
鳴子の風が飛んでくる。天の使者である天狗の術は、天の力を借りている。加護のないこの大熄俎のとき、その風は璃石にとってはそよ風のようなものだった。
「覚悟」
己でない声が言った。
璃石の振り上げた扇子が唸りをあげて振り下ろされる。しかしその瞬間、璃石は鳴子の前に立ちはだかった癒簾を認めた。
だからなのか、わからない。
ただ、これ以上ひとを傷つけたくないと、必死だった。
璃石から放たれた闇の風は、円を描いて空を切りつつ飛んでゆき、癒簾の前髪を一房切った。だがそこで急旋回し、璃石の振り向いたときには黒の刃が鬼姫の角を斬り落としていた。
床にちりんと音をたてて角が落ちる。
忌扠は茫然として足下に転がるそれを見ていた。見る間に、角は鉛色に変色して、ただの円錐の石と化した。
耳鳴りのような、鋭く不快な音が耳を襲った。
忌扠の悲鳴であった。
鬼にとって角はすべての力の源で、それを失えばもはや鬼としては生きてはいけない。
同時に、僕への支配も失うのだ。
璃石は、ついに呪縛を断ったのだ。
「姫、封じの印を!」
璃石の声が響いた。
警戒音のような忌扠の悲鳴は続いている。
癒簾が我に返り、すばやく呪文を唱え、印を結んだ。ぼうっとしているようにみえて、癒簾はまなぶべきことはまなんできている。
癒簾の術に間違いはなかった。
忌扠は突如現れた光の触手に身体を締め上げられた。
角を失った忌扠に、抗う術はない。
「やめろ。やめぬか!」忌扠はもがいていた。
「いやじゃ。いやでありんすよ。また独りで暗いところへもどりたくない。かげ」
名を呼ばれて、歯が浮かび上がるような感覚に襲われた。動揺した。忌扠が、かわいそうに、思えてしまう。
「癒簾、だめだ!」
意識を取り戻したのか、獻瑪が起きあがって叫んでいた。
どうやら、忌扠を気の毒と思ったのは璃石だけではなかったらしい。癒簾の一瞬の怯みを、忌扠は見逃さなかった。
光の縄を引きちぎり、蛇のような唸り声をあげて牙を剥いて飛び掛かってきた。
「縛!」獻瑪の声が響く。忌扠は再び自由を奪われた。
「消」獻瑪の術がかかり、忌扠は見えないしがらみに苦しみながら悶えた。
目は飛び出し、瞳は細く、牙はむき出し、唇は裂けていた。
髪を振り乱し、落ちた角からは闇色の煙が立ち上っていた。
忌扠は、からだを前後に振り、もがき続けている。
鬼姫は、得ようとしていた力を得ることはできなかった。復活は完全でなく、弱った今の忌扠ならば獻瑪の術で倒すことができるだろう。
すぐ側で、術をかけようかためらっている癒簾がいた。
目が合った。
癒簾の迷いは、璃石の決心を後押しした。
「これで、終わりだ」
獻瑪が最期の術を放とうとした。
「待て!」
璃石は、扇子を開き、忌扠と獻瑪の丁度真ん中へ跳び込んだ。扇子は、獻瑪の術をもろに受けて粉々に消え去った。
ともすれば、これが今の忌扠の運命だった。だがそれを、璃石が変えてしまった。
そんな、大げさな言い方をしなくてもいい。
璃石はただ、忌扠がただ失われていくのを見たくなかった。
「てめえ、何しやがる! まだ操られてんのか」
獻瑪は息があがっていた。今のが渾身の術であったのだろう。二度、同じ術は放てない。
「そうじゃない。俺はただ……」
璃石は言葉を失った。
背を突かれたような感覚があった。獻瑪が目を見開いていた。
癒簾の悲鳴が響いた。
「璃石!」
獻瑪の声ろ同時に、酷い痛みが襲ってきた。
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「てめえ、このクソ鬼が! このまま絞め殺してやる!」獻瑪が縛術をきつく締める。
忌扠が苦しげに呻いた。
「やめろ!」
璃石が叫んだ。血は出ぬのに、痛みは感じる。不思議な、からだだ。闇天狗とは、なんなのだろうか。
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「悪を殺したところで、生き残った者の気が済むだけではないのか。殺せば、罪を償う機会をも奪うことになろう」
「甘いな、てめえは。きれいごとばかり言いやがって。けど、」
獻瑪は、顔の前に構えていた手をすっと下ろして、苦笑を浮かべた。
「その甘さに救われてきたやつが沢山いるんだよな。おれも、含めて」
背が、温かかった。背に、震えが伝わる。
忌扠も、命なのだ。
苦しいことを苦しいと思い、哀しいことを哀しいと思う。孤独も感じ、暗闇も恐れる。そして、光をいつのまにか見失って、楽しいことをすべて忘れてしまう。闇の中に棲む。それが鬼だ。
「忌扠、もう人を苦しめないでくれ」
忌扠のすすり泣く声が耳もとで聞こえた。涙が、一粒肩に落ち、それが温かかった。
部屋に光が差し込み始めめていた。
大熄俎が明け始めている。
璃石は、支えを失ってその場に倒れこんだ。
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これが、忌扠か?
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あぶない!
声も出ず、身体も動かなかった。
だが、璃石には仲間がいる。
癒簾と獻瑪が同時にかけた術が、その黒い塊を打ち砕いた。
雲散霧消したそれは、人々の悪念である。邪悪な、人の念だったのだ。
それが、鬼の正体――。
邪気の抜けた鬼姫は、ただの少女ではないか。
子に、罪はない。
罪を押し付けるのは、いつだって無関心な大人たちなのだ。
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高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
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