0と1の告白

須藤正臣

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君にあてた手紙です[QRの先]

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 スマホでQRコードを撮影した先には、「君にあてた手紙です」と書かれたフォームがあるだけだった。

──今日の日付を入力してください
 「え?今日の日付?...えっと2020年7月31日だから...」

 僕は、この手紙を貰った日付は今日だよななんて思いながら、『20200731』と入力し送信ボタンをそっとタップした。

───────────
高梨弘樹様

毎朝、登校する君を見ていました。
見ているだけで良いと思っていたけど、
気持ちを伝えたくて、でも、伝えるのが怖くて、
名前も告げずにこんな伝え方を選んだ僕を許してください。

僕は君が好きです。

初めて、君に出会ったのは高校の入学式のときでした。
クラスの女子が落とした式典用の花を拾って、
ちょっと汚れてるねと、自分の花と交換した優しさにドキリとしました。

教室で隣の席の子と話をするときの表情が羨ましくて、
僕はどうして君の傍にいないんだろうと思いました。

他にもたくさん伝えたいことがあります。

だけど、僕は君にとっては同性で、恋愛としては対象外なんだと思います。
だから、僕が名前を告げることも、君に近づくこともありません。

知ってほしいけど、知られるのが怖いなんて矛盾していますよね。
また、許されるなら、君への思いを送らせてください。

2020年7月31日 Kより
───────────

 ...手紙だ。
 僕宛で間違いなかった!
 『僕は君が好きです。』
 『僕は君にとっては同性』
 えっと、男?

 今まで、恋愛の対象は異性だけだったけど、同性って可能性もあったのかと驚きが先に立った。

 彼はどんな気持ちで、これを考えたんだろう?
 僕が手紙を落としていたら?
 でも落とされていたQRコード読み込むなんてバカな真似は普通しないよなぁ。

 うん、もし僕が拾ったんだったら読み込まないかな。

 僕はどうして読み込んだんだろう。
 下足箱にあったから?
 あそこはプライベートな空間で、僕宛だと思ったからだ。

 夏休み中、『K』はどんな気持ちでいるんだろう。
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