国一番の大悪女は、今から屋敷の外に出て沢山の人達に愛されにいきます

海咲雪

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17.クラヴィスとの練習3

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それでも、顔を上げれば美しい夕陽が広がっていた。

「綺麗ですね」

「そうだな。ユーキス国は自然が豊かな国だから、夕陽も映える」

「あの、クラヴィス。マリス国はどんな場所なのですか? 私、まだ行ったことがなくて……」

「美しい国だ。独自の建設技術が発展している国だから、ユーキス国とはまた違った美しさがあるだろう」

「ふふ、行ってみたいですわ」

すると、クラヴィスが馬を止めた。

私がクラヴィスの方を振り返ると、クラヴィスの顔が夕陽に照らされていて、どこか神秘的だった。



「いつでも我が国に遊びに来ればいい。君の噂が広がりきっているこの国より居心地が良いかもしれない」



「そうですわね、誰も私を悪女と呼ばない場所も魅力的ですわ。それでも……私は、この国の王女であることに誇りを持っていますの」



「悪女と呼ばれ、罵られてもか?」

「ええ。この噂は……私がユーキス国の王女として、国を守った証ですの。どれだけ私が国一番の大悪女と呼ばれようと、それだけは変わらない。私は今のこの状況を全く後悔していないのです」

クラヴィスは私の言葉を聞いても、すぐには何も仰らなかった。

しばらくして、少しだけ苦しそうな顔で口を開いた。

「マリーナ……君はどうして国一番の大悪女と呼ばれているんだ? 本来の君は全く違った人物だろう」

「まだ言えませんわ。しかし……」

私はギュッと両手に力を込めて、握り込んでしまう。

何も持っていない両手に力を込めても、意味がないことなど分かっているのに。



「いつか、その時が来たら聞いてくれますか?」



本当はもうクラヴィスなら信じてくれると分かっている。

それでも、私はクラヴィスに本当の理由を信じてもらえないことを恐れている。

それくらいクラヴィスに拒絶されることを怖がっている。

それくらい……もうクラヴィスが大切なのだ。

私の問いにクラヴィスは少しだけ笑った気がした。


「君が言いたい時に言えば良い。どんな理由があったにしろ、私はもうマリーナが噂とは違う人物だと知っている」


その時、クラヴィスがそっと私の頬に触れた。



「君が魅力的な人物であることに変わりはないのだから」



クラヴィスが触れた場所から熱が広がっていくような感覚がする。

クラヴィスはそっと私の頬から手を離した。

「そろそろ戻ろうか」

道を戻れば、もう夕陽は沈みかけていた。

クラヴィスと別れた後も、何故かまだ夕陽が沈んで欲しくないと願ってしまう。

まだ、この夕陽を見ていたい気がした。
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