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19.クロルからのプレゼント
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馬術大会当日。
出場者の名前は、掲示板に張り出されている。
掲示板には人集りが出来ていた。
「え、マリーナ・サータディアと書かれているわ……! あの大悪女も出場するの?」
「嘘でしょう? 最悪じゃない。大会をめちゃくちゃにするつもりに決まっているわ」
「あんな悪女、出場しなければ良いのに」
皆、口々に私の悪口を述べていた。
しかし、学園内を歩いていると、ある声が聞こえた。
「ねぇ。でも、あの悪女、まだ噂のような行動をしていることを見たことがないのだれど……それにカートル公爵家の婚約記念パーティーでの出来事も……」
「そんなのまだ本性を誤魔化そうとしているだけに決まっているわ」
通りすがりに僅かに聞こえたどこかの噂の声。
それでも、その事が涙が出るほど嬉しくて。
私が起こした行動が無駄じゃなかったと教えてくれている。
これから馬術大会で優勝しようとしていることすら無駄ではないと教えてくれているようだった。
涙を堪える私に、隣を歩いていたクロルが何も言わずにハンカチを差し出してくれる。
「マリーナ様、きっとマリーナ様が国一番の自慢の王女と呼ばれる日も来ます」
「ありがとう。嬉しいわ」
それでも、涙はぐっと堪えた私は、ハンカチを使わずにクロルに返そうとした。
しかし、クロルは何故か微笑んだまま、ハンカチを受け取らない。
「クロル?」
「そのまま持っていて下さい。大会の会場では私はお側にいられません。お守り程度にしかならないとは思いますが……」
クロルの渡してくれたハンカチには、小さな花の刺繍が施されている。
「可愛い刺繍だわ。クロルも可愛らしいところがあるのね」
クロルがその時、小さく呟いた。
「それは……マリーナ様に渡そうと買ったものですので」
「え……! 私が頂いても良いのかしら?」
「はい。今回の大会の練習を頑張っていらしたので、お渡したくて……」
「ふふ、そういうものは優勝してから渡すものでしょう? 相変わらず、クロルは甘いのだから」
「王女であるマリーナ様に渡すのは躊躇ったのですが……もっと煌びやかなものの方がマリーナ様に似合ったかもしれません」
クロルが申し訳なさそうに視線を少しだけ下げた。
「ねぇ、クロル。私、本当に嬉しいわ。だって、クロルが刺繍の入ったハンカチを使うところを見たことがないもの」
「……?」
「クロルはいつも無地のハンカチを使っているでしょう? それにリーリルから聞いたわ。物に無頓着でいつも適当に選んでるって」
私はもう一度、クロルがくれたハンカチに視線を向けた。
「それだけ悩んでくれたのでしょう? 本当にありがとう」
その時、丁度チャイムが鳴った。
「そろそろ会場に行かないとね」
その時、クロルが私に頭を下げ、一礼をした。
「マリーナ様の健闘を心より願っております」
クロルが急に初めて出会った従者のように畏まる。
だから、私も王女らしく微笑んだ。
「ええ。ありがとう」
私は、そのままクロルと別れた。
だから……クロルがその後に呟いた言葉を知らない。
聞こえるはずもない。
「マリーナ様、貴方の側に居られることが私の一番の幸せです」
会場に人が集まっていく。
馬術大会が始まろうとしていた。
出場者の名前は、掲示板に張り出されている。
掲示板には人集りが出来ていた。
「え、マリーナ・サータディアと書かれているわ……! あの大悪女も出場するの?」
「嘘でしょう? 最悪じゃない。大会をめちゃくちゃにするつもりに決まっているわ」
「あんな悪女、出場しなければ良いのに」
皆、口々に私の悪口を述べていた。
しかし、学園内を歩いていると、ある声が聞こえた。
「ねぇ。でも、あの悪女、まだ噂のような行動をしていることを見たことがないのだれど……それにカートル公爵家の婚約記念パーティーでの出来事も……」
「そんなのまだ本性を誤魔化そうとしているだけに決まっているわ」
通りすがりに僅かに聞こえたどこかの噂の声。
それでも、その事が涙が出るほど嬉しくて。
私が起こした行動が無駄じゃなかったと教えてくれている。
これから馬術大会で優勝しようとしていることすら無駄ではないと教えてくれているようだった。
涙を堪える私に、隣を歩いていたクロルが何も言わずにハンカチを差し出してくれる。
「マリーナ様、きっとマリーナ様が国一番の自慢の王女と呼ばれる日も来ます」
「ありがとう。嬉しいわ」
それでも、涙はぐっと堪えた私は、ハンカチを使わずにクロルに返そうとした。
しかし、クロルは何故か微笑んだまま、ハンカチを受け取らない。
「クロル?」
「そのまま持っていて下さい。大会の会場では私はお側にいられません。お守り程度にしかならないとは思いますが……」
クロルの渡してくれたハンカチには、小さな花の刺繍が施されている。
「可愛い刺繍だわ。クロルも可愛らしいところがあるのね」
クロルがその時、小さく呟いた。
「それは……マリーナ様に渡そうと買ったものですので」
「え……! 私が頂いても良いのかしら?」
「はい。今回の大会の練習を頑張っていらしたので、お渡したくて……」
「ふふ、そういうものは優勝してから渡すものでしょう? 相変わらず、クロルは甘いのだから」
「王女であるマリーナ様に渡すのは躊躇ったのですが……もっと煌びやかなものの方がマリーナ様に似合ったかもしれません」
クロルが申し訳なさそうに視線を少しだけ下げた。
「ねぇ、クロル。私、本当に嬉しいわ。だって、クロルが刺繍の入ったハンカチを使うところを見たことがないもの」
「……?」
「クロルはいつも無地のハンカチを使っているでしょう? それにリーリルから聞いたわ。物に無頓着でいつも適当に選んでるって」
私はもう一度、クロルがくれたハンカチに視線を向けた。
「それだけ悩んでくれたのでしょう? 本当にありがとう」
その時、丁度チャイムが鳴った。
「そろそろ会場に行かないとね」
その時、クロルが私に頭を下げ、一礼をした。
「マリーナ様の健闘を心より願っております」
クロルが急に初めて出会った従者のように畏まる。
だから、私も王女らしく微笑んだ。
「ええ。ありがとう」
私は、そのままクロルと別れた。
だから……クロルがその後に呟いた言葉を知らない。
聞こえるはずもない。
「マリーナ様、貴方の側に居られることが私の一番の幸せです」
会場に人が集まっていく。
馬術大会が始まろうとしていた。
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