毒殺されて生まれ変わった聡明な公爵令嬢は、「君を殺したのは、俺なんだ」と告げる謎多き隣国の公爵子息に溺愛される

海咲雪

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賭けの結果は?

私はまず屋敷に帰り、賭けについて頭を整理した。

この賭けでアルト様は一言も、「フローラ・ヴィアローズ男爵令嬢に夢中になっている貴族子息たちを正気に戻せ」、とは【言っていない】

つまり、フローラ・ヴィアローズ男爵令嬢にアルト様を諦めさせるだけでよいのだ。

そしてその方法で一番手っ取り早いのは、アルト様にフローラ・ヴィアローズ男爵令嬢が間に入れない程、仲の良い女性がいることを示すのが早い。

今、その女性のふりを出来るのは、賭けの内容を知っている【私だけ】


つまり、どう転んでもアルト様は私と近づきたいらしい。


賭けに勝つためにはアルト様と仲睦《なかむつ》まじいフリをしなければならない。

そして、賭けに負ければ私から口づけをしなければならない。


「アルト様は策士ですわね」


さぁ、どうしましょうか。

このまま、アルト様の思惑に乗る?

冗談じゃない。

私は私の方法で、この賭けに勝って見せますわ。

翌日、私はアルト様を空き教室に呼び出した。

「リーネ、どうしたの?不戦敗でも申し込みに来た?」


「そんなことしませんわ。私、これでも負けず嫌いですもの。しかし、この賭けにはある問題がありますわ」

「どれだけ私がフローラ・ヴィアローズ男爵令嬢を諦めさせても、アルト様がフローラ・ヴィアローズ男爵令嬢に気があるフリをすれば永遠に彼女は貴方を諦めない」

「つまりアルト様が賭けに勝つために彼女を利用する限り、私に勝ち目はない」



「へー、さすが。やっぱり、リーネは頭がいいね・・・そう、リーネのいう通り、リーネに隠れて俺が彼女に気のあるふりをすれば、君に勝ち目はない」

「俺は、賭けに狡《ずる》さは必要だと思っているからね」

「でも、君は一度受けた勝負を降りることなどしないだろう?」



「ええ、だから本当に私を愛しているのなら証明して下さい」



私は、公爵令嬢らしく微笑んだ。

アルト様の表情は変わらない。


「私、浮気性の男は嫌いですわ。だから私にアピールしたいなら、付き纏《まと》う女など自分で振り払ってくださいまし」

「その代わり、アルト様の愛を信じますわ」



アルト様が一歩だけ私に近づく。



「つまり俺の愛を信じる代わりに、賭けは勝たせろと?」



「ええ。私、一途な男の人が好みですもの!」



その瞬間、アルト様は吹き出した。



「ははっ!いいよ、この賭けは君の勝ちでいい。・・・それで、本当に俺の愛を信じてくれるの?」




「ええ」



私ははっきりそう述べると、アルト様は今まで見たことがないほど嬉しそうに微笑んだ。

初めて見るアルト様の表情に、顔に熱が集まるのを感じる。




「・・・それで、質問は何にするの?」




私は一度目を瞑《つぶ》り、気持ちを落ち着かせる。

そして、顔をゆっくりと上げた。





「アルト・レクシア様。貴方は【レータ・カルデ】ですか?」






まず、そのことを確認しなければ何も始まらない。

私の質問にアルト様は予想通りとでもいうように簡単に答える。


「俺は、【レータ・カルデ】ではないよ」



「っ!?」



アルト様は、さらに私に近づく。

そして、私の首を掴むようにそっと触れた。


「でも前も言った通り君を殺したのは、俺」


アルト様に首を絞められたわけでもないのに、息が苦しくなる。

震える私を見て、アルト様の表情が変わる。


アルト様は悲しそうな表情で私の目をじっと見つめている。


「アルト様、先程の賭けに勝つために私は貴方の愛を信じると述べましたわ」

「では何故、貴方は自身が殺した者を愛するのですか?」


私は呼吸を整え、私の首に触れているアルト様の手に自分の手を重ねる。



「アルト様、私は貴方の秘密を知らない。・・・しかし貴方が私を愛しているというのなら、私を頼って下さい」

「貴方の秘密、私も共に抱えてあげますわ!」



その瞬間、アルト様が私を抱きしめる。



「アルト様!?」



「うるさい」



「うるさいとは何ですの!?急に抱きしめたのはそちらでしょう!」



「だから、うるさいと言っている。・・・今は、ただ静かに抱きしめられていればいい」



そう仰ったアルト様は、さらに私を強く抱きしめた。

その日、私はもうアルト様の謎を追求することは出来なかった。

屋敷に帰った私は、もう一度疑問を整理した。

前に整理した疑問は四つ。


1、彼は何故、私がリーネ・フローリアだと気づいたのか

2、彼が本当に私を殺したのか

3、彼もまた誰かの生まれ変わりなのか

4、彼は、何故私を愛すると言ったのか


一つ目の疑問は、私の首飾りを留める癖によって気づかれたのだろう。

二つ目と三つ目の疑問はまだ分からない。


そして、四つ目の疑問。


彼は何故私を愛すると言ったのか・・・しかし、今回の賭けで私はアルト様の気持ちを信じると約束した。

その時のアルト様の嬉しそうな顔が頭をよぎる。


「彼は本当に私を愛しているというの・・・」


私は何故か心臓が早くなるのを感じながら、その日はいつもより早めに眠りについた。

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