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最終章:僕がスカートを履く理由
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それは、年度末。
春の風が校舎をなでるように吹き抜ける、あたたかい朝だった。
教室のホワイトボードには、「制服自由化、正式決定」と、生徒会からの報告が大きく書かれていた。
パンツスタイルを選ぶ女子もいれば、スカートの男子もいる。
中には、制服の上からパーカーを羽織る子もいたし、まるでファッション雑誌のスナップのような空気が、自然にクラスを包んでいた。
もう、誰も驚かない。
誰も、笑わない。
> 「服装は自分を表す“言葉”のひとつであって、誰かの“許可”を必要とするものじゃない」
それが、桜陽学園の新しいポリシーとなった。
昼休み、屋上。
レンは、春の光に目を細めながら言った。
「ねえ、蒼真。もう一回聞いてもいい?」
「……なんだよ」
「俺のこと、好き?」
蒼真は黙ったまま、自分のスカートの裾をつまんで、風に乗せた。
(“男同士”とか、“普通じゃない”とか、そんなのはどうでもいい)
(俺は――)
「……多分、好きだよ。まだハッキリ言えるほどじゃないけど、お前の隣にいたいって思う気持ちなら、本物だと思う」
レンは何も言わずに、ふっと笑った。
「それで十分」
その日の放課後。
蒼真は、制服のまま駅前の歩道を歩いていた。
スカートの裾が揺れるたび、数か月前の自分を思い出す。
初めてセーラー服を渡された日のこと。
履き慣れないスカートに足がすくんだこと。
教室の視線に、心が折れかけたこと。
でも――今、胸を張って言える。
> 「これは俺が“選んだ”制服だ。
誰かに言われたからじゃなく、
“俺が俺らしくある”ために、選んだ服なんだ」
制服って、不思議だ。
身にまとうだけで、何者かになれる気がする。
でも、本当は自分が何者かを決めるのは、自分自身なんだ。
レンと並んで歩く帰り道。
桜の花びらがふたりの肩に舞い落ちた。
「蒼真、今の君、めっちゃかっこいいよ」
「……そうか? スカートなのに?」
「うん。スカート履いてても、ちゃんと“君らしさ”がある。
それが何より、かっこいいんだ」
笑いながら手をつないで、ふたりは歩いた。
そして、蒼真は心の中で、はっきりと答えを出した。
> ――これが、僕がスカートを履く理由だ。
完
---
✦ エピローグ ✦
春からは、制服自由化が始まった新しい世代の1年生が入ってくる。
中には、スカートに緊張した面持ちの男子生徒もいて。
そんな彼に、蒼真は優しく声をかける。
「初めてか? でも大丈夫。似合うかどうかじゃなくて、選んだ自分を信じるだけでいいんだ」
その言葉に、後輩はそっと笑った。
次の世代に、想いはちゃんと繋がっている。
---
◆ THE END ◆
春の風が校舎をなでるように吹き抜ける、あたたかい朝だった。
教室のホワイトボードには、「制服自由化、正式決定」と、生徒会からの報告が大きく書かれていた。
パンツスタイルを選ぶ女子もいれば、スカートの男子もいる。
中には、制服の上からパーカーを羽織る子もいたし、まるでファッション雑誌のスナップのような空気が、自然にクラスを包んでいた。
もう、誰も驚かない。
誰も、笑わない。
> 「服装は自分を表す“言葉”のひとつであって、誰かの“許可”を必要とするものじゃない」
それが、桜陽学園の新しいポリシーとなった。
昼休み、屋上。
レンは、春の光に目を細めながら言った。
「ねえ、蒼真。もう一回聞いてもいい?」
「……なんだよ」
「俺のこと、好き?」
蒼真は黙ったまま、自分のスカートの裾をつまんで、風に乗せた。
(“男同士”とか、“普通じゃない”とか、そんなのはどうでもいい)
(俺は――)
「……多分、好きだよ。まだハッキリ言えるほどじゃないけど、お前の隣にいたいって思う気持ちなら、本物だと思う」
レンは何も言わずに、ふっと笑った。
「それで十分」
その日の放課後。
蒼真は、制服のまま駅前の歩道を歩いていた。
スカートの裾が揺れるたび、数か月前の自分を思い出す。
初めてセーラー服を渡された日のこと。
履き慣れないスカートに足がすくんだこと。
教室の視線に、心が折れかけたこと。
でも――今、胸を張って言える。
> 「これは俺が“選んだ”制服だ。
誰かに言われたからじゃなく、
“俺が俺らしくある”ために、選んだ服なんだ」
制服って、不思議だ。
身にまとうだけで、何者かになれる気がする。
でも、本当は自分が何者かを決めるのは、自分自身なんだ。
レンと並んで歩く帰り道。
桜の花びらがふたりの肩に舞い落ちた。
「蒼真、今の君、めっちゃかっこいいよ」
「……そうか? スカートなのに?」
「うん。スカート履いてても、ちゃんと“君らしさ”がある。
それが何より、かっこいいんだ」
笑いながら手をつないで、ふたりは歩いた。
そして、蒼真は心の中で、はっきりと答えを出した。
> ――これが、僕がスカートを履く理由だ。
完
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✦ エピローグ ✦
春からは、制服自由化が始まった新しい世代の1年生が入ってくる。
中には、スカートに緊張した面持ちの男子生徒もいて。
そんな彼に、蒼真は優しく声をかける。
「初めてか? でも大丈夫。似合うかどうかじゃなくて、選んだ自分を信じるだけでいいんだ」
その言葉に、後輩はそっと笑った。
次の世代に、想いはちゃんと繋がっている。
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◆ THE END ◆
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