最弱スキル《リサイクル》で世界を覆す ~クラス追放された俺は仲間と共に成り上がる~

KABU.

文字の大きさ
16 / 41
第二章:「隠された力」

第16話:旧世界の遺産

しおりを挟む
 廃都メルディナの再生から数日後。
 街は少しずつ活気を取り戻していた。
 灯りが灯り、水が流れ、風が心地よく吹く――まるで街そのものが「ありがとう」と言っているようだった。

 リアが瓦礫の上に腰を下ろし、空を見上げる。
「なんか、ここ……落ち着くな」
「ああ。廃墟だった頃の面影が嘘みたいだ」
 蓮は笑いながら答える。
 だが、その目はどこか遠くを見つめていた。

「……まだ終わってない。
 この街の下に、何かがある気がする」
「根拠は?」
「スキルの反応だ。ずっと地の底で、何かが“呼んでる”」

 リアは剣を握り直した。
「行くのか?」
「もちろん」



 二人は街の中心、魔導炉の下層へ向かった。
 再生した炉の裏側には、巨大な魔力循環路が広がっていた。
 石造りの階段を降りると、空気が変わる。
 重い。
 だが、どこか温かい。

「……ここ、動いてる」
 リアが呟く。
 床の下から、低い鼓動のような音が響く。
 まるで大地が心臓を持っているかのようだった。

 蓮は壁に手を当て、《リサイクル》を起動した。

《解析開始――古代魔導構造体》
《状態:稼働停止/機能損傷率78%》
《再構築可能領域――魔力循環コア》

「……やっぱり、あったか」
「なにが?」
「この街の“根”だよ。
 魔導炉はただの表層装置じゃなかった。
 こっちは、もっと深い――“魔力そのもの”を再利用する仕組みだ」



 床を開き、さらに降りると、そこは広大な円形のホールだった。
 壁一面に無数の管と結晶が埋め込まれ、中央には黒い球体が浮かんでいる。
 静かに回転しながら、時折、青い光を放った。

「……これが、旧世界の遺産」
「古代文明の人たちが、魔力を再利用してたってことか?」
「そうだ。彼らは“魔力を作る”んじゃなくて、“使い終わった魔力を循環させる”仕組みを作ってた。
 でも、制御ができなくなって滅んだ」

 蓮の手が震える。
 今の世界にも似ている。
 スキル、魔法、加護――それらはすべて“便利すぎる再利用”に頼っている。
 もしそれが暴走したら、どうなるのか。

 ――その未来を、古代人はもう経験していたのだ。



「蓮。どうする?」
「……触れる」
「はぁ!? また無茶すんなって!」
「大丈夫。今度は制御できる。……やってみせる」

 蓮は球体に手を伸ばした。
 その瞬間、空間が反応する。
 魔力の渦が広がり、彼のスキルが勝手に発動した。

《共鳴発生――エネルギー循環体との融合開始》
《再構築対象:魔力素子(コア)》

 光が爆発した。
 リアが咄嗟に身を覆う。
 渦の中心で、蓮の身体が光に包まれていく。

「……見える。流れが……!」
 魔力の流れが視覚として浮かび上がる。
 空気中の粒子、地中を走る光脈、すべてが“再利用可能な資源”として見えるのだ。

「蓮! 離れろ!」
「まだだ!」

 彼の掌から無数の光線が伸び、壁や管に触れる。
 破損していた回路が次々と繋がり、ホール全体が青白く光を帯びた。

《再構築成功――魔力循環機構、限定稼働モードに移行》

 轟音が響く。
 街の上空で、光の柱が立ち上がった。
 廃都メルディナ全体に、柔らかな風が吹き渡る。



「……成功した、のか?」
 リアが息を呑む。
「完全再起動はしてない。でも――“魔力そのもの”を再利用できるようになった。
 つまり、《リサイクル》が“エネルギー”を対象にできる」

「つまり、物を直すだけじゃなく……魔力をも直せるってこと?」
「そういうことだ」

 蓮はゆっくりと手を握った。
 手のひらには青い光が宿っている。
 それは燃えるようで、けれど優しい。

「これが、俺の新しい力か」
 その声に、リアが微笑む。
「……いい顔してるよ」
「お前もな。……ありがとう、リア」



 地上に戻ると、セリナが待っていた。
 彼女は塔の上から光の柱を見つめ、微笑んでいた。
「やはり、あなたは《リサイクル》を進化させた……。
 ――それは“創造”に最も近い再生。危険でもあり、希望でもある」

 蓮は静かに頷いた。
「俺は、使うよ。どんなに危険でも、壊れた世界をそのままにはしない」
 セリナの瞳が柔らかく細まる。
「その覚悟、覚えておきましょう。いずれ試される時が来ます」

 風が吹く。
 再生の街は光を帯び、まるで新しい鼓動を刻んでいた。
 それは、この世界が――確かに変わり始めたという証だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした

夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。 しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。 やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。 一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。 これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!

【完結】勇者PTから追放された空手家の俺、可愛い弟子たちと空手無双する。俺が抜けたあとの勇者たちが暴走? じゃあ、最後に俺が息の根をとめる

岡崎 剛柔
ファンタジー
「ケンシン、てめえは今日限りでクビだ! このパーティーから出て行け!」  ある日、サポーターのケンシンは勇者のキースにそう言われて勇者パーティーをクビになってしまう。  そんなケンシンをクビにした理由は魔力が0の魔抜けだったことと、パーティーに何の恩恵も与えない意味不明なスキル持ちだったこと。  そしてケンシンが戦闘をしない空手家で無能だったからという理由だった。  ケンシンは理不尽だと思いながらも、勇者パーティーになってから人格が変わってしまったメンバーのことを哀れに思い、余計な言い訳をせずに大人しく追放された。  しかし、勇者であるキースたちは知らなかった。  自分たちがSランクの冒険者となり、国王から勇者パーティーとして認定された裏には、人知れずメンバーたちのために尽力していたケンシンの努力があったことに。  それだけではなく、実は縁の下の力持ち的存在だったケンシンを強引に追放したことで、キースたち勇者パーティーはこれまで味わったことのない屈辱と挫折、そして没落どころか究極の破滅にいたる。  一方のケンシンは勇者パーティーから追放されたことで自由の身になり、国の歴史を変えるほどの戦いで真の実力を発揮することにより英雄として成り上がっていく。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

処理中です...