最弱スキル《リサイクル》で世界を覆す ~クラス追放された俺は仲間と共に成り上がる~

KABU.

文字の大きさ
62 / 75
第四章:「大陸統一戦争」

第62話:奴隷王の解放

しおりを挟む
⸻夜明けの砂漠は、血のように赤かった。
前夜の戦火の名残が、まだ地を焦がしている。

風が吹き、砂の粒が舞い上がる中――
リアは静かに立っていた。
倒れた砦の上、手にはまだ戦闘の余韻が残る。

「……蓮、あんた、もう動いてるの?」

少し離れた場所で、蓮は瓦礫の上にしゃがみ込み、何かを調べていた。
焼け焦げた鎖、崩れた石柱、そして――檻の跡。

「この国には、戦争だけじゃなく“人間の枷”も残ってる。」
彼はそう言って鎖を拾い上げた。
錆びついた鎖の一端には、まだ小さな血痕がこびりついていた。

セリナが近づき、淡い声で呟く。
「奴隷制度……。聞いていました。サルバードでは“労働奉仕”の名目で、民が売られていると。」

リアが眉をひそめる。
「そんなの、ふざけんなって話だろ。」

「だから行く。」
蓮は立ち上がる。
その瞳には、夜明けよりも鋭い光が宿っていた。
「砂の都の地下に、“奴隷王アドラ”がいる。
 すべての鎖を操る支配者だ。」

リアの耳がぴくりと動いた。
「“王”って……また敵かよ。」

セリナが小さく微笑む。
「いいえ――今度は、救う番です。」



砂の都《アダマス》の中心部、地下迷宮。
そこは、女神の神殿よりも深く、光の届かぬ世界だった。

石造りの壁に無数の鉄格子。
鎖の音と、呻き声。
リアはその光景に、思わず歯を食いしばる。

「ひでぇ……これが、人間のやることかよ。」

セリナが詠唱を始め、杖の先に淡い光を灯す。
「気をつけて。ここは監視用の魔法陣が張り巡らされています。
 ……“信仰”による支配の象徴です。」

「信仰?」リアが振り返る。

セリナの声は冷たく響いた。
「祈れば救われる、と人々に信じさせ、奴隷たちに“労働こそ赦し”と刷り込む。
 神の名の下に――自由を奪った。」

リアの爪が床を削った。
「そんなもん、神でもなんでもねぇ。」

その時だった。
地下の奥から、低い声が響いた。

「……誰だ。異端者どもか。」

光の奥、鉄の玉座の上に、一人の男が座っていた。
鎖のように絡まった金属の衣を纏い、瞳は濁った銀色。

「貴様らが“砂帝国を倒した”という者か。」

蓮は一歩前に出る。
「お前が――アドラか。」

「……そうだ。」
男の声は低く、乾いていた。
「俺はこの国の“鎖”そのもの。
 民が逃げ出さぬよう、自らの手足で縛る役を担ってきた。」

「なぜそんなことを?」

「そうするしかなかった。
 逃げれば、女神の光が空から降り、すべてを焼く。
 俺は民を守るために、自ら鎖になったのだ。」

リアが一歩踏み出す。
「そんなの間違ってる! 守るために縛るなんて、誰も幸せにならない!」

アドラはリアを見据える。
「……狼の娘よ。お前も、かつて“檻の中”にいたのだろう?」

リアの身体が強張る。
一瞬、目の奥に、かつての炎と悲鳴が蘇る。
人間に追われ、家族を殺され、鎖につながれた過去。

「……ああ。だけど、蓮がその鎖を壊してくれた。」
彼女は胸を叩く。
「だから、今度はあたしが壊す番だ!」

アドラがゆっくりと立ち上がる。
「鎖を断てば、天の罰が下る。それでも――やるか?」

「上等だよ。」
リアの瞳が金色に光る。
「“狼の血”をなめんな。」



轟音が響いた。
アドラの鎖が宙を舞い、蛇のようにリアへ襲いかかる。
鉄と魔力が絡み合い、空気が震える。

リアは跳び、爪で鎖を裂いた。
「こんなもん、怖くねぇ!」

だが、切っても切っても再生する。
アドラの身体から新たな鎖が伸び、彼の腕や胸に食い込んでいた。

「見ろ。俺自身が、鎖でできている!」

「だったら――その鎖ごと再利用してやるよ!」

リアが吼え、蓮が前に出る。
「リア、下がれ。《リサイクル・ドライブ》――展開!」

床下の魔法陣が反転し、鎖の魔力が一瞬で流れを変える。
アドラの足元から立ち昇る光の柱。

「なっ……何をした!?」

「鎖を“縛る”んじゃなく、“繋げる”ようにした。」
蓮の声が響く。
「お前の力は本来、人を閉じ込めるためじゃない。
 人と人を繋げるための“絆”の魔法だったんだ。」

アドラの目が見開かれる。
鎖が次々と崩れ、彼の身体を覆っていた金属が溶けていく。

リアが拳を握った。
「ほら見ろ。あんたは、あたし達の敵じゃない!」

光が収まった時、そこに立っていたのは、鎖のない男――アドラだった。
疲弊した顔に、初めて人間らしい表情が浮かぶ。

「……自由、なのか。俺が……?」

蓮が頷いた。
「お前は、もう奴隷王じゃない。」

セリナが微笑む。
「今度は、あなたが民を導く番ですよ。」

アドラは膝をつき、深く頭を垂れた。
「――ありがとう。“再生の勇者”たちよ。」



地上。
解放された奴隷たちが歓声を上げていた。
鎖が消え、砂の都に初めて自由の風が吹いた。

リアは広場の中央に立ち、両手を広げた。
「みんな! あたしたちは自由だ!
 もう誰にも、縛られない!!」

歓声が砂漠を揺らし、人々が泣きながら抱き合う。
その光景を見て、セリナが呟いた。
「彼女は……“民の英雄”ですね。」

蓮は小さく笑った。
「そうだな。俺たちの再生は、まだ続く。」

リアが振り返り、笑顔で叫ぶ。
「さぁ蓮、次はどこ行く!?」

蓮は遠く北の空を見つめた。
「――北方だ。鉄血の女王が待っている。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放されたので辺境でスローライフしてたら、いつの間にか世界最強の無自覚賢者になっていて元婚約者たちが土下座してきた件

uzura
ファンタジー
王都で「無能」と蔑まれ、婚約破棄と追放を言い渡された青年リオン。 唯一の取り柄は、古代語でびっしり書かれたボロ本を黙々と読み続けることだけ。 辺境で静かに暮らすはずが、その本が実は「失われた大魔導書」だったことから、世界の常識がひっくり返る。 本人は「ちょっと魔法が得意なだけ」と思っているのに、 ・竜を一撃で黙らせ ・災厄級ダンジョンを散歩感覚で踏破し ・国家レベルの結界を片手間で張り直し 気づけば、訳あり美少女たちに囲まれたハーレム状態に。 やがて、かつて彼を笑い、切り捨てた王都の貴族や元仲間たちが、 国家存亡の危機を前に「助けてくれ」と縋りついてくる。 だがリオンは、領民と仲間の笑顔を守るためだけに、淡々と「本気」を解放していくのだった——。 無自覚最強×追放×ざまぁ×ハーレム。 辺境から始まる、ゆるくて激しいファンタジー無双譚!

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ
ファンタジー
「役立たず」の烙印を押され、パーティを追放されたアルフォンス。彼のスキルは戦闘に不向きな【土いじり】。失意の彼は都会を離れ、辺境の地で静かに農業を営むことを決意する。 しかし、彼が畑を耕すと、そこから不思議なダンジョンが生えてきた! ダンジョン内では、高級ポーションになる薬草や伝説の金属『オリハルコン』が野菜のように収穫できる。地味だと思われた【土いじり】は、実はこの『農園ダンジョン』を育てる唯一無二のチートスキルだったのだ。 噂を聞きつけ集まる仲間たち。エルフの美少女、ドワーフの天才鍛冶師……。気づけば彼の農園は豊かな村へ、そして難攻不落の要塞国家へと発展していく。 一方、彼を追放したパーティは没落の一途を辿り……。 これは、追放された男が最強の生産職として仲間と共に理想郷を築き上げる、農業スローライフ&建国ファンタジー!

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ
ファンタジー
佐藤健太、32歳。会社ではリストラ寸前の窓際サラリーマン。彼は人生逆転を賭け『探索者』になるも、与えられたのは戦闘に役立たない地味スキル【無限収納】だった。 「倉庫番がお似合いだ」と馬鹿にされ、初ダンジョンでは荷物持ちとして追放される始末。 だが彼は気づいてしまう。このスキルが、思考一つでアイテムや武器を無限に取り出し、敵の魔法すら『収納』できる規格外のチート能力であることに! サラリーマン時代の知恵と誰も思いつかない応用力で、地味スキルは最強スキルへと変貌する。訳ありの美少女剣士や仲間と共に、不遇だった男の痛快な成り上がり無双が今、始まる!

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

レベル1の死に戻り英雄譚 ~追放された俺の【やりなおし】スキルは、死ぬほど強くなる~

夏見ナイ
ファンタジー
スキル『やりなおし』のせいでレベル1から上がらないカイルは、勇者パーティから「寄生虫」と蔑まれ追放される。全てを失い、絶望の中で命を落とした彼だったが、その瞬間スキルの真価が発動した。それは【死ぬたびにステータスを引き継いで無限に強くなる】という最強の能力だった! 死の痛みを代償に、彼はあえて死を繰り返すことで人外の力を手に入れていく。やがて新たな仲間と出会い、その強さは世界に轟き始める。 一方、カイルを捨てた元パーティは凋落の一途を辿っていた。今さら戻ってこいと泣きついても、もう遅い! レベル1のまま最強へと成り上がる、痛快無双の追放ざまぁファンタジー、ここに開幕!

処理中です...