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双子の多忙な日々 Ⅷ
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「「業」は妖魔を複製出来る。だけど、以前のあの時点ではまだ能力に限界があって、《刃》は三体までしか現成出来なかった。多分、西安にいた奴がオリジナルで、他の二体が複製。オリジナルが最も強かったと思われるけど、複製であってもあの時は強敵だった」
「はい、存じてます」
《刃》については、本当に苦慮した。
タカさんが「魔法陣」をある程度解禁しなければならなかったのだ。
多くの犠牲が出た。
あの石神家の剣技を操り、更にそれを100本の腕で同時に放って来るのだ。
聖でさえ、死に掛けた。
石神家のみなさんも、《刃》相手に戦えば全員戦死していただろう。
皇紀ちゃんももしかしたら死んでいてもおかしくなかった。
皇紀ちゃんの「城塞」が一切効かなかったのだ。
何よりも、《刃》によって諸見さんと綾さんが死に、保奈美さんも助けられなかったことが悔やまれる。
私たちには非常に苦い記憶となってしまった。
「私たちは《刃》をもう降せるけど、今も強敵であることには変わりないです。あちこちで出現したら、とんでもない被害が出る。石神家の剣聖でも油断できない。ソロで対戦出来るのは、タカさん、聖、怒貪虎さん、虎白さんとか石神家の剣聖と亜紀ちゃんくらいかな。それと今は羽入さんか」
「それにもっとコワイことがある。《刃》が更に進化していた場合、ヤバ過ぎるよ」
「でも俺なんかが斃したんですから」
「《流星剣》の途轍もない威力があったからね。そっちも本当は解析したいけど、今は忙しくって」
「羽入さん、がんばー」
「は、はい!」
みんなで笑った。
羽入さんは《青い剣士》を瞬殺したけど、それは《流星剣》の限定解除の威力のお陰だ。
でも、そのために羽入さんは心肺停止に陥った。
今後は死なずに使いこなす訓練が必要なのだ。
少しずつ力を解放しながらの手さぐりになる。
難しいことだけど、やるしかない。
それが「神剣」の担い手なのだ。
今後は石神家の剣聖の人と、紅さんが霊素観測をしながらの訓練になる予定だった。
万一の蘇生チームも用意する。
羽入さんも十分に分かっていることなので、話題を変えた。
「羽入さん、「型崩し」って知ってる?」
「いいえ、初めて聞きましたが」
「そう。私たちも詳しくないんだ。でも石神家の剣技では、型をなぞらない剣技があるんだって」
「え!」
羽入さんはすぐに私たちの言葉の重みを理解した。
「ね、コワイでしょ?」
「それは一体どういうもんなんですか?」
「だから分からないんだって。私たちも一度だけ聞いただけの」
「私たちって、技の解析が得意なのね。だから虎白さんに教わってた時に、虎白さんの技の動きで何が出るのか解析しながらやってたの」
「そうしたら、全然知らない動きから「煉獄」が出て、びっくりしちゃった!」
「虎白さんに「ズルだ」って言ったら、笑って「型崩し」と言うんだと教えてくれた」
多分あの時、虎白さんは私たちが解析しているのをからかったつもりだったのだろう。
もちろん、私たちの解析能力をちゃんと認めてくれていて、その上の段階を見せてくれたということなのだろうが。
「それ以上は教えてくれなかったけどね」
「あそこは深いね!」
「そういうものが……」
紅さんのパンケーキが美味しくて全部頂いた。
コーラフロートも作ってもらって、満足してお礼を言った。
「いいお話を聞けました!」
「じゃあ、とっておきの情報をお教えします」
「え、なんですか?」
「士王が士官学校の先輩のソフィと初体験したって」
「オッパイのおっきい子だよ!」
「「……」」
私たちは望岡へ向かった。
また「タイガーファング」の中で211の事案を片付けた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
羽入さんたちと話して、《青い剣士》がどうやら石神家の剣技を使ったのではないかという予想が私たちの中で確信となった。
要は「型崩し」だ。
それを虎白さんに確かめたい。
前に確認したけど、タカさんも「型崩し」に関しては知らなかった。
石神家の秘奥義のようだった。
タカさん、当主なんだけどなー。
私たちがタカさんに虎白さんから聞いた「型崩し」を話すと、驚いていた。
タカさんも秘奥義であることは一瞬で理解し、それを隠すために公の発表では《青い剣士》が石神家の剣技を使った可能性は秘匿したのだ。
そして私たちに調査を命じた。
だから《青い剣士》のことはトップシークレットになっていて、石神家の人たちにも映像や情報はまだ見せていなかった。
私たちが羽入さんに直接確認し、タカさんの許可をさっき取ったところだ。
盛岡に着いたのは、夕方の5時だった。
丁度鍛錬を終えて、みなさんが里に戻る頃だ。
「タイガー・ファング」が山頂の発着場に着くと、みなさんが出迎えてくれた。
「よう、嬢ちゃんたち! よく来たな!」
「「虎白さーん!」」
「おう、丁度終わったとこだぜ。一緒に飯食うか!」
「「食べるー!」」
やったぁ!
下へ降りて、虎白さんのお宅に行った。
虎白さんが私たちのために、食事の量を増やすように言ってくれた。
いつもやさしーなー!
「丁度先日、鹿を狩って来てよ」
「「やったぁー!」」
「丁度いい熟成の頃合いだ。みそ焼きでいいか?」
「「はい!」」
いろんな部位のステーキが来た。
みそ焼きが多いが、幾つか塩コショウだったり、グレービーソースもあった。
私たちが喜んで食べていると、虎白さんがニコニコしてくれてる。
「おい、何か緊急の問題でもあんの?」
私たちが端末をいじってるんで、気になったようだ。
「いつものことですから」
「ゆっくりするために必要なの」
「そうかよ。大変だな」
「「いいえー」」
何のことは無い。
食事をしながら、近況を話した。
今一番熱い話題は士王の童貞喪失だ。
虎白さんは大笑いしていた。
「高虎より早いんじゃねぇか?」
「ううん、タカさんは11歳」
「知子ちゃんだよ」
「そ、そっか」
虎白さんが「高虎のくせに」と小声で文句を言っていた。
美味しい食事のお礼を言い、聴きたいことがあると話した。
「おう」
「前にさ、虎白さんが「型崩し」って教えてくれたじゃないですか」
「あ?」
「先日、重慶に出た《青い剣士》が石神家の剣技を使ってた可能性があって」
「羽入さんが感じたの。確かに剣技の型はちがってたから、公式にはまだ認められてないんです」
「そうか」
虎白さんの顔が険しくなった。
「はい、存じてます」
《刃》については、本当に苦慮した。
タカさんが「魔法陣」をある程度解禁しなければならなかったのだ。
多くの犠牲が出た。
あの石神家の剣技を操り、更にそれを100本の腕で同時に放って来るのだ。
聖でさえ、死に掛けた。
石神家のみなさんも、《刃》相手に戦えば全員戦死していただろう。
皇紀ちゃんももしかしたら死んでいてもおかしくなかった。
皇紀ちゃんの「城塞」が一切効かなかったのだ。
何よりも、《刃》によって諸見さんと綾さんが死に、保奈美さんも助けられなかったことが悔やまれる。
私たちには非常に苦い記憶となってしまった。
「私たちは《刃》をもう降せるけど、今も強敵であることには変わりないです。あちこちで出現したら、とんでもない被害が出る。石神家の剣聖でも油断できない。ソロで対戦出来るのは、タカさん、聖、怒貪虎さん、虎白さんとか石神家の剣聖と亜紀ちゃんくらいかな。それと今は羽入さんか」
「それにもっとコワイことがある。《刃》が更に進化していた場合、ヤバ過ぎるよ」
「でも俺なんかが斃したんですから」
「《流星剣》の途轍もない威力があったからね。そっちも本当は解析したいけど、今は忙しくって」
「羽入さん、がんばー」
「は、はい!」
みんなで笑った。
羽入さんは《青い剣士》を瞬殺したけど、それは《流星剣》の限定解除の威力のお陰だ。
でも、そのために羽入さんは心肺停止に陥った。
今後は死なずに使いこなす訓練が必要なのだ。
少しずつ力を解放しながらの手さぐりになる。
難しいことだけど、やるしかない。
それが「神剣」の担い手なのだ。
今後は石神家の剣聖の人と、紅さんが霊素観測をしながらの訓練になる予定だった。
万一の蘇生チームも用意する。
羽入さんも十分に分かっていることなので、話題を変えた。
「羽入さん、「型崩し」って知ってる?」
「いいえ、初めて聞きましたが」
「そう。私たちも詳しくないんだ。でも石神家の剣技では、型をなぞらない剣技があるんだって」
「え!」
羽入さんはすぐに私たちの言葉の重みを理解した。
「ね、コワイでしょ?」
「それは一体どういうもんなんですか?」
「だから分からないんだって。私たちも一度だけ聞いただけの」
「私たちって、技の解析が得意なのね。だから虎白さんに教わってた時に、虎白さんの技の動きで何が出るのか解析しながらやってたの」
「そうしたら、全然知らない動きから「煉獄」が出て、びっくりしちゃった!」
「虎白さんに「ズルだ」って言ったら、笑って「型崩し」と言うんだと教えてくれた」
多分あの時、虎白さんは私たちが解析しているのをからかったつもりだったのだろう。
もちろん、私たちの解析能力をちゃんと認めてくれていて、その上の段階を見せてくれたということなのだろうが。
「それ以上は教えてくれなかったけどね」
「あそこは深いね!」
「そういうものが……」
紅さんのパンケーキが美味しくて全部頂いた。
コーラフロートも作ってもらって、満足してお礼を言った。
「いいお話を聞けました!」
「じゃあ、とっておきの情報をお教えします」
「え、なんですか?」
「士王が士官学校の先輩のソフィと初体験したって」
「オッパイのおっきい子だよ!」
「「……」」
私たちは望岡へ向かった。
また「タイガーファング」の中で211の事案を片付けた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
羽入さんたちと話して、《青い剣士》がどうやら石神家の剣技を使ったのではないかという予想が私たちの中で確信となった。
要は「型崩し」だ。
それを虎白さんに確かめたい。
前に確認したけど、タカさんも「型崩し」に関しては知らなかった。
石神家の秘奥義のようだった。
タカさん、当主なんだけどなー。
私たちがタカさんに虎白さんから聞いた「型崩し」を話すと、驚いていた。
タカさんも秘奥義であることは一瞬で理解し、それを隠すために公の発表では《青い剣士》が石神家の剣技を使った可能性は秘匿したのだ。
そして私たちに調査を命じた。
だから《青い剣士》のことはトップシークレットになっていて、石神家の人たちにも映像や情報はまだ見せていなかった。
私たちが羽入さんに直接確認し、タカさんの許可をさっき取ったところだ。
盛岡に着いたのは、夕方の5時だった。
丁度鍛錬を終えて、みなさんが里に戻る頃だ。
「タイガー・ファング」が山頂の発着場に着くと、みなさんが出迎えてくれた。
「よう、嬢ちゃんたち! よく来たな!」
「「虎白さーん!」」
「おう、丁度終わったとこだぜ。一緒に飯食うか!」
「「食べるー!」」
やったぁ!
下へ降りて、虎白さんのお宅に行った。
虎白さんが私たちのために、食事の量を増やすように言ってくれた。
いつもやさしーなー!
「丁度先日、鹿を狩って来てよ」
「「やったぁー!」」
「丁度いい熟成の頃合いだ。みそ焼きでいいか?」
「「はい!」」
いろんな部位のステーキが来た。
みそ焼きが多いが、幾つか塩コショウだったり、グレービーソースもあった。
私たちが喜んで食べていると、虎白さんがニコニコしてくれてる。
「おい、何か緊急の問題でもあんの?」
私たちが端末をいじってるんで、気になったようだ。
「いつものことですから」
「ゆっくりするために必要なの」
「そうかよ。大変だな」
「「いいえー」」
何のことは無い。
食事をしながら、近況を話した。
今一番熱い話題は士王の童貞喪失だ。
虎白さんは大笑いしていた。
「高虎より早いんじゃねぇか?」
「ううん、タカさんは11歳」
「知子ちゃんだよ」
「そ、そっか」
虎白さんが「高虎のくせに」と小声で文句を言っていた。
美味しい食事のお礼を言い、聴きたいことがあると話した。
「おう」
「前にさ、虎白さんが「型崩し」って教えてくれたじゃないですか」
「あ?」
「先日、重慶に出た《青い剣士》が石神家の剣技を使ってた可能性があって」
「羽入さんが感じたの。確かに剣技の型はちがってたから、公式にはまだ認められてないんです」
「そうか」
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