富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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笑ってはいけない Ⅵ

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 「タカさん、ほんとにこれで大丈夫なの?」
 「そんなもん分かんねぇよ! とにかくやってみるしかねぇだろう!」
 「そうだけどさー」

 双子が文句を言いながらも準備を進めた。
 《キャッスル・ドラゴン》の広い鍛錬場。
 そこに色とりどりの花のなどの飾り付けと、電飾の広大なイルミネーション。
 大きな垂れ幕に「偉大なる《オロチ・ストーム》完成記念」の文字。
 あちこちに《ハスハ》の偉大さと優しさを讃える文言。
 俺が《ハスハ》の姿を彫刻した高さ8メートルのブロンズ像と巨大な祭壇と特別に作られた豪奢な玉座。
 その像の前に《オロチ・ストーム》のポーズの等身大の柳のブロンズ像。
 背後にはレーザーで彩られた巨大な噴水。
 豪華な食事。
 《ハスハ》像の前のステージ。 
 3週間をかけて建設した。
 俺は《ハスハ》像の製作で3日間完徹だ。
 柳の像は双子に作らせている。

 来客たちが集まって来た。

 聖、虎白さんたち石神家剣聖代表、亜紀ちゃん、双子、皇紀と風花、斬、千石、茜と葵、羽入と紅、蓮花、ターナー大将と参謀たち、一江と大森、馬込と葉佩兄妹、栞と士王、麗星と天狼と奈々、六花と吹雪、「紅六花」幹部たち、鷹、虎蘭と青月、竹流、磯良、それにローマ教皇とマクシミリアン。
 他にも桜大隊、御影大隊、ストライカー大隊、マクレガー大隊などの代表的な部隊の大隊長と幹部たちもいる。
 更にローマ教皇に頼んで特別な合唱隊とヨーロッパで有数の合奏団。
 料理は幾つかの有名なレストランから取り寄せ、俺や亜紀ちゃん、双子も一生懸命に作った。 
 鷹の渾身の日本料理もある。
 世界中からフルーツや酒を集めて巨大な祭壇に供えてもいる。
 準備に1ヶ月を要した。

 俺が柳と子どもたちを連れて演習場に入った。
 演習場はこの祭典のために使えなかったので、柳たちは《キャッスル・クリムジン》で暮らさせ、六花たちの演習場で毎日鍛錬していた。
 「紅六花」の連中に柳達をもてなせと命じていた。
 連中は上手くやってくれ、柳たちも毎日楽しんで過ごしていたようだ。
 準備期間の間、柳たちには何も見せなかった。
 大勢の中での生活に、流たちも楽しかったようだ。
 流たちは吹雪たちと一緒に遊んで大喜びだった。
 吹雪や銀世は何しろ優しいし、雪絵は流たちと同い年だ。
 男三人兄弟なので、美しい雪絵にみんな夢中だった。
 もちろん楽しませろと命じていた。

 「えぇ! こんなことになってたの!」
 「ああ、お前の《オロチ・ストーム》の完成を盛大に祝いたくってよ」
 「でも、みんなに笑われて……」

 柳が悲しそうな顔をしていく。

 「おい柳、何を言ってるんだ! あれは今後の「虎」の軍にとって掛け替えのない重要な技になる! お前はそんな偉大な功績を残したんだぞ!」
 「タカさん!」
 「柳、愛してる! お前の真面目さと頑張りは最高だ! 今日は是非祝わせてくれよ!」
 「うん!」

 柳は相変わらずチョロい。
 まあ、まずは柳に喜んでもらわねぇと。
 《ハスハ》がチラチラと姿を見せている。
 大掛かりな祝宴であることは分かってもらえたようだ。
 さり気ない風をよそおって、巨大な自分の像に微笑み、玉座に腰掛けてみる。
 たちまち笑顔になっていき、俺は安心した。
 もちろん、他の誰にも姿は見えない。

 柳と流、燦、界の登場に全員が立ち上がって盛大な拍手を送る。
 流たちも驚いていた。
 楽団が演奏を始め、合唱隊が美しい声で歌い出す。
 俺がこの日のために作曲した『深遠にして高貴なる美神《ハスハ》』だ。
 楽団と合唱団を特別に囲い込んで特訓させた。
 俺は柳の手を引いて祭壇前の特別席に座らせた。
 《ハスハ》の巨大な像と、その前に柳の像まであるので柳が恥ずかしがった。
 
 「こんなものまで!」
 「お前の偉大さと美しさを讃えたくてな。もちろん《ハスハ》は最高だ。俺の愛する柳のために、尽力してくれた」
 「うん! ありがとう、タカさん!」
 「こんなもんじゃ全然足りねぇけどな。まあ、今日は楽しんでくれ」

 柳たちが席に着いたので、ローマ教皇が特別な祝福の儀礼を始めた。
 大きな錫杖で《ハスハ》の偉大さを讃え、柳の功績を褒め称えた。
 そして料理が運ばれ、柳たちの前に次々に置かれて行く。
 果物好きな柳のために、俺は特別なマンダリンを剥いたりフルーツの飾カットを振るまった。
 楽団は『とこしえに栄光の慈母《ハスハ》』の演奏を始める。
 もちろん俺の作曲だ。
 嬉しそうに飲み食いする柳たちのテーブルに、参列の人間が次々に来て褒め称える。
 ロボが柳の膝に乗って顔を舐める。
 流たちも舐める。
 ロボは付き合いが良い。

 「ロボー! ありがとう!」

 柳も大喜びだ。
 亜紀ちゃんと真夜と真昼、双子が「ギョロちゃん」たちと一緒に『《ハスハ》音頭』を踊る。
 まあ、『ギョロちゃん音頭』のリメイクだが。
 周囲が暗くなり、電飾が美しく煌めいて行く。
 そして幾つもの篝火が焚かれた。
 俺がギターで『麗しの美神《ハスハ》』を演奏して歌った。
 最後に全員で『遍く慈愛満つる《ハスハ》』を合唱した。

 「さて、では俺の愛する妻、柳に今回の偉大なる《オロチ・ストーム》を披露してもらいましょう!」

 全員が立ち上がり、大きな拍手と歓声を送った。

 「え、ここでやるの!」
 「頼むよ、柳。お前の偉大な技を見せてくれ」
 「でも……」

 柳が躊躇している。
 無理も無い、散々笑われて来たのだ。

 「柳、みんな期待している。見せてくれないか?」
 「う、うん」

 柳が立ち上がり、前に出た。
 緊張しているのが分かる。
 俺が右手を上げ、全員がサングラスを装着した。
 観覧席は暗くしているので、その動作は見えないはずだったが、鋭い柳が気付いた。

 「え、なに?」
 「お前の美しさが眩しいんだよ。まあ実を言えば最後の閃光が眩しいからな。目の保護のためだ」
 「そんな眩しくないのに……」
 「念のためだよ。さあ、見せてくれ」
 「うん!」

 俺もサングラスを掛けた。
 柳が右手の人差し指を伸ばし、頭に乗せた。
 みんな笑わない。
 というか、見えていない。
 サングラスは完全な遮光性だ。

 「《オロチ・ストーム》ぅ!」

 周囲が明るく光った。
 柳は見えずとも、巨大な光はサングラスの脇から挿し込んで分かる。
 全員がサングラスを外し、大歓声で柳の技を褒め称えた。
 声援がしばらく続く。
 俺が左手を挙げて、全員後ろを向いて目薬を点眼した。

 「柳! 素晴らしかった! ほら、みんな泣いているぞ!」
 「え、ほんとに!」
 「お前は美しく偉大だ! 《ハスハ》は最高に偉大だぁ!」

 俺が叫び、全員が大歓声で《ハスハ》と柳を賛美した。

 俺は玉座を見た。
 《ハスハ》が嬉しそうに笑っている。
 ふぅー。

 



 翌日から、柳の下に《オロチ・ストーム》を教わりにいろんな人間が来た。
 最初は千石だ。

 「もう一度、あの美しい技を教わりに来ました!」
 「はい!」

 千石がサングラスを掛けた。

 「あれ、それは?」
 「はい、《ディラック・クラウド》の中は視界が無いそうです。ですので暗闇の中でも技が撃てるようにと」
 「そうなんですか!」
 「柳が綺麗で眩しいしな!」
 「タカさん! 辞めて下さい!」
 「ワハハハハハハ!」

 まあ、動きは分かっている。
 千石が動いて両手を水平に開いた。
 眩しい光が拡がった!

 「千石さん! 出来ましたよ!」
 「はい! ありがとうございます!」
 「やったな」
 「はい、石神さん!」

 千石は「麗しの《ハスハ》に感謝を!」と叫んで帰って行った。
 それから主だった人間に《オロチ・ストーム》を習得させていった。
 亜紀ちゃんと双子は事前に練習したが、どうしても笑ってしまい困った。
 俺が思いついてタマに一時的に笑わなくする精神操作を掛けさせ、何とか習得した。
 その後の習得希望者にはタマの精神操作を施した。
 何だ、最初からこうすりゃよかった。
 タマが俺に言った。

 「主」
 「なんだ?」
 「あの技、面白いな」
 「柳には言うなよな」
 「分かった」

 妖魔も笑うかー。




 《ディラック・クラウド》はその後拡大し、ロシアの3割を覆うほどになった。
 《オロチ・ストーム》のお陰でその直下の状況も観測出来るようになった。
 いよいよ《オペレーション・ゴルディアス》の発動に向けて、幾つかの作戦に着手出来る。
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