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《ハイヴ》攻略 招待観戦 Ⅷ
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僕は《青い剣士》の攻撃で腹部に負傷を負った。
一瞬の油断でこの始末だ。
やっぱりまだまだ僕は甘い。
墜落しそうになる所を、皐月少佐が僕を抱えて飛んでくれた。
意識はあるが、全身の力が抜けたように重い。
内臓まで裂かれたことが分かる。
亜紀姉との戦闘訓練で何度か体験した。
痛みよりも、脱力感が強く感じるのだ。
「吹雪さん! しっかり!」
皐月少佐が必死に呼びかけてくれる。
「すみません、大丈夫です。皐月少佐はお怪我は?」
「何言ってんですか! 吹雪さんが自分を助けてくれたんでしょう! 怪我なんかあるわけない!」
「良かった……」
「何言ってんですか……」
すぐに地上に出て、みんなが集まっている中に降ろされた。
今は戦闘が士王兄さんだけになっているので心配だったが、皐月少佐は僕から離れなかった。
同時に士王兄さんの闘気が爆発するのを感じ、僕は大丈夫だと確信した。
士王兄さんは本当に強い。
「フブキ!」
「どうしたんだ!」
アンソニーとダグラスが心配して駆け寄って来る。
皐月少佐が言った。
「落ち着け! 応急処置の出来る奴はいるか!」
「私が!」
ソフィさんがすぐに手を挙げる。
「よし、任せる。デュールゲリエを手伝ってくれ」
「はい!」
「他の者は周辺を警戒! 必ず追加の攻撃が来るぞ!」
『はい!』
みんなが僕を囲んで警戒態勢に入った。
ここは皐月少佐がいるし、デュールゲリエたちも頼もしい。
アンソニーとダグラスも戦う気でいる。
ソフィさんが僕の傍に来て、デュールゲリエが服を切って腹部の負傷を見た。
他のデュールゲリエが「Ω」「オロチ」の粉末を僕の口に入れ、別なデュールゲリエが傷口を消毒をし、縫合を始める。
腸まで切れているのは分かっている。
やはり石神家の剣技は凄まじい。
ソフィさんは他の体中に出来た傷の縫合をしてくれる。
この方は本当に応急手当が得意なようだ。
相当練習したのだと分かった。
僕は「大闇月」と「螺旋鎧」「金剛花」で全身を護っていたが、それを通過してやられた。
身を捩り高速機動をしていたせいで、致命傷には至らなかったが。
まともに喰らっていれば、僕の身体は両断されていただろう。
「Ω」と「オロチ」の粉末のお陰ですぐに痛みは退いた。
負傷箇所が熱を帯び、修復が始まった実感がある。
しばらくは動けないが。
でもすぐに、新たなプレッシャーを感じた。
「ゲート」ではなかった。
多分、どこかに潜んでいたのだ。
僕たちを何としても殺すために準備されていた!
直後に「ゲート」が開いたとデュールゲリエが報告して来た。
妖魔の大群もすぐに襲って来るだろう。
「《青い剣士》、3体来ます!」
デュールゲリエが叫んだ。
《御幸衛星群》とリンクして「霊素観測レーダー」の解析情報だろう。
デュールゲリエたちが僕の処置を終え、離れて僕を護ろうと壁になった。
皐月少佐もその前に出て、アンソニーとダグラスまでがそれに並んだ。
《ハイヴ》の内部から大きな絶叫が聴こえた。
「吹雪ィィィーーーー!」
士王兄さんだ。
《青い剣士》の強烈なプレッシャーを感じたのだろう。
でも1体の《青い剣士》が速い移動で近づいて来る。
他の《青い剣士》は動かずにいる。
こちらの戦力を測るためだろう。
僕は薄れた視界の中で上半身を起こした。
みんなを護らなきゃ。
近付いた《青い剣士》が両腕の刃を振るった。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
状況は俺たちにも分かっていた。
《青い剣士》が3体と、「ゲート」が開いたので妖魔の軍団が来る。
俺と一緒にダグラスも前に出た。
自然とそうなった。
「君たちは下がれ!」
コウゲツ少佐が叫んだ。
「いいえ、フブキを護らなきゃ!」
「あいつは絶対に!」
「バカヤロウ!」
怒鳴られたが、もうどこにいても同じだ。
ならば、少しでも《青い剣士》の攻撃を防がなきゃ!
吹雪は俺たちを護るためにあんなに傷ついてしまった。
とんでもなく強い敵なのは分かっている。
それに俺たちに何の力も無いことも分かってる。
でも、そんなことじゃないんだ!
最後までフブキを護って戦うんだ!
後ろで重傷のフブキが上半身を起こし、ソフィさんに怒られてまた横になった。
フブキはまだ俺たちのために戦おうとしている。
そして全員がフブキの周囲に集まって構えている。
そうか、みんなフブキを護ろうとしてくれているのか。
「来るぞ!」
コウゲツ少佐が叫んだ。
《青い剣士》の両腕は凶悪な刃になっている。
それが大きく動いた。
その瞬間、3体のデュールゲリエが物凄い速度で移動して《青い剣士》に迫り、そのまま破壊された。
「!」
なんということ!
一切の躊躇なく、誰の命令もなく、あの3体は自分を犠牲にして突っ込んで行ったのだ。
《青い剣士》に敵うはずもないのは絶対に分かっていたはずなのに!
俺はデュールゲリエが「機械」なんかじゃないことを良く知っている!
「心」があるんだ!
だからああやって身を擲ったのか!
もう俺たちしか残っていない。
《青い剣士》は少し停まっていた。
何かを警戒しているようだった。
最後のデュールゲリエがフブキたちの前に立っている。
《青い剣士》がまた動いた。
「来られました」
フブキの脇に残って処置を続けていたデュールゲリエが言った。
俺は何が来たのかを聞こうと振り返りかけた。
突然、上空から光の柱が降って来た。
一瞬の出来事で、目が見えなくなった。
俺は《青い剣士》の攻撃かと思った。
こんなものは防げない。
でも、まだ生きている。
負傷も無い。
続けてまた巨大な光の柱が立った。
地面が大きく振動している。
俺たちの前に迫っていた《青い剣士》が消え、続けて光の柱が後方で光った。
一体何が起きたんだ!
一瞬の油断でこの始末だ。
やっぱりまだまだ僕は甘い。
墜落しそうになる所を、皐月少佐が僕を抱えて飛んでくれた。
意識はあるが、全身の力が抜けたように重い。
内臓まで裂かれたことが分かる。
亜紀姉との戦闘訓練で何度か体験した。
痛みよりも、脱力感が強く感じるのだ。
「吹雪さん! しっかり!」
皐月少佐が必死に呼びかけてくれる。
「すみません、大丈夫です。皐月少佐はお怪我は?」
「何言ってんですか! 吹雪さんが自分を助けてくれたんでしょう! 怪我なんかあるわけない!」
「良かった……」
「何言ってんですか……」
すぐに地上に出て、みんなが集まっている中に降ろされた。
今は戦闘が士王兄さんだけになっているので心配だったが、皐月少佐は僕から離れなかった。
同時に士王兄さんの闘気が爆発するのを感じ、僕は大丈夫だと確信した。
士王兄さんは本当に強い。
「フブキ!」
「どうしたんだ!」
アンソニーとダグラスが心配して駆け寄って来る。
皐月少佐が言った。
「落ち着け! 応急処置の出来る奴はいるか!」
「私が!」
ソフィさんがすぐに手を挙げる。
「よし、任せる。デュールゲリエを手伝ってくれ」
「はい!」
「他の者は周辺を警戒! 必ず追加の攻撃が来るぞ!」
『はい!』
みんなが僕を囲んで警戒態勢に入った。
ここは皐月少佐がいるし、デュールゲリエたちも頼もしい。
アンソニーとダグラスも戦う気でいる。
ソフィさんが僕の傍に来て、デュールゲリエが服を切って腹部の負傷を見た。
他のデュールゲリエが「Ω」「オロチ」の粉末を僕の口に入れ、別なデュールゲリエが傷口を消毒をし、縫合を始める。
腸まで切れているのは分かっている。
やはり石神家の剣技は凄まじい。
ソフィさんは他の体中に出来た傷の縫合をしてくれる。
この方は本当に応急手当が得意なようだ。
相当練習したのだと分かった。
僕は「大闇月」と「螺旋鎧」「金剛花」で全身を護っていたが、それを通過してやられた。
身を捩り高速機動をしていたせいで、致命傷には至らなかったが。
まともに喰らっていれば、僕の身体は両断されていただろう。
「Ω」と「オロチ」の粉末のお陰ですぐに痛みは退いた。
負傷箇所が熱を帯び、修復が始まった実感がある。
しばらくは動けないが。
でもすぐに、新たなプレッシャーを感じた。
「ゲート」ではなかった。
多分、どこかに潜んでいたのだ。
僕たちを何としても殺すために準備されていた!
直後に「ゲート」が開いたとデュールゲリエが報告して来た。
妖魔の大群もすぐに襲って来るだろう。
「《青い剣士》、3体来ます!」
デュールゲリエが叫んだ。
《御幸衛星群》とリンクして「霊素観測レーダー」の解析情報だろう。
デュールゲリエたちが僕の処置を終え、離れて僕を護ろうと壁になった。
皐月少佐もその前に出て、アンソニーとダグラスまでがそれに並んだ。
《ハイヴ》の内部から大きな絶叫が聴こえた。
「吹雪ィィィーーーー!」
士王兄さんだ。
《青い剣士》の強烈なプレッシャーを感じたのだろう。
でも1体の《青い剣士》が速い移動で近づいて来る。
他の《青い剣士》は動かずにいる。
こちらの戦力を測るためだろう。
僕は薄れた視界の中で上半身を起こした。
みんなを護らなきゃ。
近付いた《青い剣士》が両腕の刃を振るった。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
状況は俺たちにも分かっていた。
《青い剣士》が3体と、「ゲート」が開いたので妖魔の軍団が来る。
俺と一緒にダグラスも前に出た。
自然とそうなった。
「君たちは下がれ!」
コウゲツ少佐が叫んだ。
「いいえ、フブキを護らなきゃ!」
「あいつは絶対に!」
「バカヤロウ!」
怒鳴られたが、もうどこにいても同じだ。
ならば、少しでも《青い剣士》の攻撃を防がなきゃ!
吹雪は俺たちを護るためにあんなに傷ついてしまった。
とんでもなく強い敵なのは分かっている。
それに俺たちに何の力も無いことも分かってる。
でも、そんなことじゃないんだ!
最後までフブキを護って戦うんだ!
後ろで重傷のフブキが上半身を起こし、ソフィさんに怒られてまた横になった。
フブキはまだ俺たちのために戦おうとしている。
そして全員がフブキの周囲に集まって構えている。
そうか、みんなフブキを護ろうとしてくれているのか。
「来るぞ!」
コウゲツ少佐が叫んだ。
《青い剣士》の両腕は凶悪な刃になっている。
それが大きく動いた。
その瞬間、3体のデュールゲリエが物凄い速度で移動して《青い剣士》に迫り、そのまま破壊された。
「!」
なんということ!
一切の躊躇なく、誰の命令もなく、あの3体は自分を犠牲にして突っ込んで行ったのだ。
《青い剣士》に敵うはずもないのは絶対に分かっていたはずなのに!
俺はデュールゲリエが「機械」なんかじゃないことを良く知っている!
「心」があるんだ!
だからああやって身を擲ったのか!
もう俺たちしか残っていない。
《青い剣士》は少し停まっていた。
何かを警戒しているようだった。
最後のデュールゲリエがフブキたちの前に立っている。
《青い剣士》がまた動いた。
「来られました」
フブキの脇に残って処置を続けていたデュールゲリエが言った。
俺は何が来たのかを聞こうと振り返りかけた。
突然、上空から光の柱が降って来た。
一瞬の出来事で、目が見えなくなった。
俺は《青い剣士》の攻撃かと思った。
こんなものは防げない。
でも、まだ生きている。
負傷も無い。
続けてまた巨大な光の柱が立った。
地面が大きく振動している。
俺たちの前に迫っていた《青い剣士》が消え、続けて光の柱が後方で光った。
一体何が起きたんだ!
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